9月7日(土)、栃木県・モビリティリゾートもてぎで行われた、スーパー耐久第4戦。
どこかで見たことがあるような、親しみのある“黄色い車”がサーキットを疾走していた。
チームスタッフ:
“公団ちゃん”どうでしょう?“公団ちゃん”です。
黄色いボディカラーにシマシマ紅白バンパーのこのマシン。
旧日本道路公団(※現在は民営化)の「道路パトロールカー」そのままのデザインから、ファンの間では親しみを込めて“公団ちゃん”と呼ばれ、話題沸騰中なのだ。
サーキットに訪れたファンに話を聞くと。
男性ファンA:
去年の24時間レースに参加されて、それでバズって。今はスーパー耐久のアイドル。
男性ファンB:
なじみのあるカラーリングがサーキットでレースをするところが興味を引きました。
そのチームの拠点があるのは北海道。
札幌の東、岩見沢市の栄建設という小さな会社で、“公団ちゃん”は誕生した。
栄建設スタッフ:
周囲の安全確認ヨシ!
道路の維持管理などを行う建設会社が、レース活動を始めたのには、ある理由があった。
栄建設社長で「D.R.C EZO」チーム共同代表の沸田尚史(53)は語る。
「建設業はいわゆる“3K職場”。きつい・汚い…みたいなイメージがあるのですが、モータースポーツを通してもっと“格好いい”と思っていただければ」
この栄建設で働きながら、“公団ちゃん”のドライバーを務めるのが、大島良平(41)。
普段は「本物」の黄色い道路パトロールカーに乗り込み、勤務に当たっている。
「レースに行ってもこの黄色、仕事をしていてもこの黄色というような感じで。僕にとっては、“なじみ深い色”なんですけどね(笑)」
大島がレースを始めたのは2017年。
2022年前には、北海道クラブマンカップシリーズのチャンピオンに輝き、去年、現在のチーム「D.R.C EZO」としてスーパー耐久への参戦を果たした。
仕事の合間、大島は栄建設の事務所でこんな“練習”も。
「今から、次のもてぎサーキットの練習をします」
チーム名「D(道産子).R(レーシング).C(クラブ) EZO(蝦夷)」の名前の通り、ドライバー・メカニック・スタッフ全員が北海道の出身。北海道を拠点とするため、いつもレーシングシミュレーターを使用してバーチャルな練習を行っている。
「練習に行く日数もかかるし、予算もかかるし。他のサーキットの経験はほぼゼロ、次のもてぎで4つ目。一流の選手もいる中で、すごく難しいですけど、まずは最初は表彰台、3位でも。乗ったことがないから」
そしてモビリティリゾートもてぎで行われた、9月7日のレース当日。
チームスタッフはこの日のために、“公団ちゃん”グッズを作成。多くのファンがチームのピット前に詰めかけた。
ファンに囲まれた大島が手に持っていたのは。
「ショウワノートさんとコラボした学習帳。“公団ちゃん”の写真も付いている自由帳です」
さらに、ドライバーの写真を求める人だかりもできた。これには大島本人もビックリ。
「信じられないですよ。普通に北海道の田舎でノホホンとやっていたんですよ。ビックリした」
そして、いよいよ5時間に及ぶ耐久レースの決勝が始まった。
栄建設チームが争うのは、14台で争う激戦のクラス「ST5」。予選7番手から表彰台を狙うチーム。開始から1時間15分。
大島が第2ドライバーとして、愛車“公団ちゃん”に乗り込んだ。
初めてのサーキット。他のドライバーに比べ圧倒的に経験値のない中、それでも大島は踏ん張る。
「誰もが出られるレースではないから、出させてもらえるというのは、本当に貴重なことだし、『公団ちゃんが上位の順位でゴールしたよ』って言いたい」
応援してくれるファンのため、そして、仲間のため、“公団ちゃん”のステアリングを握る。
大島は2つ順位を上げる力走を見せると。その後、“公団ちゃん”は激しい5位争い。
後ろのマシンから猛追を受けるも、順位を守りきり、チェッカーフラッグ。
チームにとって過去最高の成績、5位でのフィニッシュとなった。
大島も安堵の笑みを浮かべた。
「これだからやめられないんだよな。まだ表彰台には乗れていないけど、仲間とこんな嬉しい思いができて。このクラスでチャンピオンを取るまでは続けていきたいです」
北海道の「夢と希望」を乗せて。
“公団ちゃん”はこれからもサーキットを走り、表彰台を目指す。
(映像提供:STMO)
「MONDAY MOTOR SPORT」
フジテレビ系「FNN Live News α」内で放送
毎週月曜23時40分~
スーパー耐久2024
9月28日(土)~29日(日)
第5戦 鈴鹿サーキット
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