子どもたちの素朴なギモンに石川テレビの人気キャラ・石川さんが答える『教えて石川さん』。今回は夏の風物詩「セミ」にまつわるギモン「セミが死ぬときはどうして仰向けなの?」言われてみれば、セミはだいたいあおむけで死んでいるのような気がする…いったいどうしてなのか?調査した。

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セミが死ぬときはなぜ仰向けに?

夏を代表する虫、「セミ」。虫取り網を持って捕まえに行った人も多いのでは?そんなセミを 足元で見つけた時は、お腹を上にして空を見上げるように死んでいないか?と、言うよりも、地面を向いてうつ伏せで死んでいるセミはあまり見たことがない。

街の人たちに聞いてみたが、死んだセミは見たことあるが「ひっくり返ってそのまま転がっているって感じ」と言う人が多かった。理由については「重心が上の方にあってコロっとなっちゃうんじゃないかな?」と言う人もいれば、「単純に仰向けの方が楽なんじゃないですか?」と言う人も…。また、「上から落ちて来てそのままひっくり返ったまま死んじゃうんじゃないですか?」という予想をする人まで…

中には、「まあ、人間でも上を向いて死ぬ人もおれば下を向いて死ぬ人もおるからそれと同じじゃないかな」なんて言う人も!

そもそも“セミ”はどんな虫なのか?

そこで、答えを求めてやって来たのは…石川県で『虫』と言えば、白山市にある石川県ふれあい昆虫館。日本海側最大規模のチョウ園があり、生きた昆虫は約50種類、標本は3000点以上展示されている。

教えてくれたのは、県ふれあい昆虫館の学芸員の石川卓弥さんだ。こちらの石川さんが一番好きな虫は蜂だそう。

石川さんによると、セミはカメムシの仲間。カメムシの仲間は口が特徴で、針状の長い口を持っている。それを植物にチクンと刺して樹液を吸う虫なのだという。日本には約35種類のセミがいて、木の上で鳴いているセミをよく見てみると、確かに細いストローのような口で樹液を吸っている。

それでは、本題!セミが死ぬときはどうして仰向けなのか?石川さんは2つのポイントを教えてくれた。

県ふれあい昆虫館の石川さん:
理由は2点ほどありまして、まず一点目はセミの形です。背中が平らになっていて、お腹が膨らんでいます。物理的に裏返しになりやすい、裏返しの方が安定しているのが一つ。そして足があります。死の直前には足の動きが悪くなってしまってひっくり返ってしまう

セミは寿命が近づくと足の筋肉や神経が弱くなって足で体を支えられなくなる。木や電柱にいた場合はそのまま地面に落ちてしまうが、丸く膨らんだお腹よりも平たい背中が下になりやすいため仰向けで死んでいることが多いそうだ。石川さんは実際に、ふれあい昆虫館のそばで自然に死んだセミを取り出し、説明してくれた。

県ふれあい昆虫館の石川さん:
これアブラゼミなんですが、昆虫館の周りで数日前に捕まえたもので、自然に死んでいたもの。見てもらうと分かりますが、足が直立している。これをうつ伏せにしようと思っても…

県ふれあい昆虫館の石川さん:
クルンとひっくり返ってしまう。

地面に一度落ちてしまったセミはもう起き上がれないわけではなく、体力を残しているとすぐに羽を羽ばたかせて起き上がる。しかし体力が残ってない寿命間近の個体は、一回で起き上がれなかったら体力はどんどん消耗していくため、それから起き上がれることはないそうだ。さらに、セミが死んでいる場所にも特徴があると石川さんは言う。

県ふれあい昆虫館の石川さん:
コンクリートやアスファルトは人工的に作られているので平らになっている。そういったところでひっくり返ってしまうと、余計に起き上がりにくい。

森などの自然界は平らになっているところが少なく、地面に落ちても盛り上がった土などを使って起き上がることができる。しかし、人が住む社会は車道も歩道もコンクリートで平らな場所ばかりであるため、地面に落ちた場合、どうやっても体を起こすことができず、仰向けのまま死んでしまうのだ。

体を起こすことができず、仰向けで死んでしまうセミ
体を起こすことができず、仰向けで死んでしまうセミ

死んだセミの見分け方はあるのか?

ちなみに地面に落ちているセミを見つけてこんな経験をしたことはないだろうか?

「普通に歩いてたら急にバーッと鳴きだしてめっちゃ焦った」と語る女性
「普通に歩いてたら急にバーッと鳴きだしてめっちゃ焦った」と語る女性

SNSを見てみると同じような経験をした人が多くいた。中には「セミ死んでると思ってたら普通に生きててセミファイナルしててマジでびっくりした」「ひっくり返ったセミの横を通ったら、急に鳴くからビックリした。セミファイナル…恐るべし」

先ほどの女性はセミが生きているか死んでいるか、見分け方をテレビで見たそうだ。「足を開いていたらまだ生きていて、閉じていたら死んでいるのは知っているんですけど…」それは本当なのだろうか?

県ふれあい昆虫館の石川さん:
一概に不正解とは言えませんが、一つの要素としてはあるかもしれません。100%見極めるポイントかどうかは疑問が残ります。

足を閉じて死んでいるセミが多いのは事実だが、例外もあるとのこと。足を閉じているのに
生きているセミもいるそうだ。

石川さん流の見極め方は、ユニークだった。

県ふれあい昆虫館の石川さん:
セミが死んだあとは体が乾燥して軽くなります。生きているのかな死んでいるのかなと思ったら息をフッと吹きかけたり、フッ…

もしセミが生きていた時のことを考えると、なかなか勇気のいる確認の仕方だが…一見の価値はあるのかもしれない。石川さんは「セミは時期によって鳴く種類も違うし、時間帯も違ってきます。ただセミが鳴いているなという見方をするんじゃなくて、ミンミンて鳴いたりツクツクボーシツクツクボーシっていろんな声が聞こえるなと考えながら、セミの鳴き声に耳を傾けてもらうとおもしろいかもしれません」と話していた。

今回のギモンのおさらい「セミが死ぬときはどうして仰向けなの?」

ポイントは「足」と「体の形」だった。寿命が近づくとセミは足の筋肉や神経が弱くなって体を支えられなくなる。

木や電柱にいた場合はそのまま地面に落ちてしまい、丸く膨らんだお腹よりも平たい背中が下になりやすいため、仰向けで死んでいることが多いということだった。

さらに、豆知識。セミの寿命といえば”1週間”と短いイメージがないだろうか?県ふれあい昆虫館によると本当の寿命は1カ月くらいあるそうだ。種類によって違いはあるが、よく見かけるアブラゼミでいうと大人になってから2、3週間は生きていて、鳥などの天敵に見つからず平和に過ごすことができると1カ月ほど生きるらしい。

私たちの夏と切り離すことができないが、あまり知る機会がなかったセミの一生。今後はより興味深くその鳴き声を聞くことができるかもしれない。

(石川テレビ)

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