「キーン」という高い音や「ジー」というセミが鳴いているような音などが聞こえる「耳鳴り」。完治させることは難しい症状だと言う。

なぜ耳鳴りは発生するのか、改善させるためにできることはあるのか、耳鼻咽喉科の医師に聞いた。

耳鳴りを正しく理解することが治療の上で大切

話を聞いたのは、新潟大学・耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野の山岸達矢助教。

「耳鳴りは圧倒的に高齢者に多い症状で、65歳以上の高齢者の3割は耳鳴りがあるというデータがある」と話す。

新潟大学 耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野 山岸達矢 助教
新潟大学 耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野 山岸達矢 助教
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高齢者に多い要因の一つとして「難聴と耳鳴りは非常に関連が深く密接な関係を持っていること」を挙げる。耳鳴りは80代で7割以上がなる「加齢性難聴」が原因であることが多いと言うのだ。

その加齢性難聴になる要因の中で最も重要な位置を占めるのが「内耳の障害」で、これが耳鳴りの発生源にも。

「内耳は伝わってきた音を電気信号に変えて神経から脳に伝える役割をしているため、内耳が障害を受けると脳に音の信号が伝わりにくくなる。脳は減った分の信号を高めようとして過剰に興奮すると言われていて、耳鳴りにつながっているという説がある」

耳鳴りの改善方法は補聴器のみ

では、耳鳴りがする場合、どう治療するのか。

「薬を求めて病院を受診する患者がものすごく多いが、今のところ、これという薬が残念ながらない。健康食品・鍼・おきゅうも明らかな効果があるとは言い難い治療」と指摘する。

唯一効果があると勧める改善方法は「補聴器」だ。

「補聴器を使うことで難聴がある方は今まで聞こえなかった音が耳に入ってくるようになるので、相対的に耳鳴りが小さく、楽に感じられるようになる効果がある」と話す。

補聴器をつけても耳鳴り自体がよくなったり消えたりするわけではないものの、患者の苦痛度が軽くなることが期待できると言う。

耳鳴りへの不安が悪化させる要因に

一方で、症状をさらに悪化させてしまう人は耳鳴りへの不安を強く感じたり、きょうも音が鳴っているかどうかなどと逐一確認したりしてしまう特徴があると指摘する。

「耳鳴りが命に関わるような病気であることは非常にまれ。悪い病気ではないか、頭がおかしくなったんじゃないかと考える患者が多いが、そういった不安はより耳鳴りを大きく感じさせてしまうので過度に不安になる必要はない」

耳鳴りによる不安から「不眠」や「うつ」などの症状をきたす恐れも。

「耳鳴りで受診される方の中には難聴の自覚がない方も多い。耳鳴りが聞こえたら一度、耳鼻科で聴力検査をすることをオススメする。時間が経つと難聴が治りにくくなる。まずは自分の聴力を把握して必要があれば、我々耳鼻咽喉科が補聴器を合わせるお手伝いをしたい」と伝え、耳鳴りへの正しい理解を呼びかける。

(NST新潟総合テレビ)