野菜を買うときに、形や色など“見た目”を重視する人は多いのではないだろうか。
そこでアスパラガスでは、見た目の美しさを保つために廃棄する部分がある。そんな廃棄部分が“もったいない”と、香川・小豆島町の調味料メーカー「タケサン株式会社」が新しい商品を開発した。長さを揃えるためにカットした、アスパラガスの根元部分を活用したドレッシングだ。
商品名は「小豆島づくり もったいないアスパラドレッシング」。食感が残るように工夫したフレンチ風ドレッシングで、食材に“のっかる”感覚を重視した。使っているアスパラガスは香川県オリジナル品種の「さぬきのめざめ」で、甘みが強くやわらかいのが特徴。
小豆島では、農家が栽培・収穫したアスパラガスはJA香川県池田集荷場で選別され、各市場へ出荷している。その選別過程で出た廃棄予定部分を集荷場から譲り受けたという。
ちなみにアスパラドレッシングは、フードロス削減の一助となればとの思いから誕生した「もったいないシリーズ」の第1弾。「ご家庭で手軽にSDGsを実践でき、さらにブランドアスパラガスのおいしさも味わえる」としている。
メーカーとして何かに利用できないか
アスパラガスの“根元”を活用したとのことだが、一体どのようにして思いついたのだろうか?タケサン株式会の野村純一さんに聞いた。
ーードレッシング開発のきっかけは?
弊社では、農産物を利用した様々な味のドレッシングを製造販売しております。そのため工夫すれば、アスパラガスを利用したドレッシングが出来るではないかと考えました。
ーーなぜアスパラガス?
食品業界全体がSDGsやフードロスを考えた取り組みが増えており、弊社でも出来る取り組みは無いのかを検討しておりました。
その中で2024年3月頃に、香川県農業協同組合(JA香川県)の東讃営農センター、小豆島農業振興センター駐在の方に、「地元の小豆島産で食べられるのに廃棄されるような農産物があるか」を聞いたところ、柑橘とアスパラガスの規格外部分があると伺いました。
ーーどれくらいの量が廃棄されている?
小豆島のJA池田集荷場では、13件の農家で1月下旬~10月にかけて栽培されたアスパラガスが、平均で平日150kg前後、集荷されます。詳細は調べておりませんが、収穫量全体の2割程度が規格外部分として処理されていると思われます。
ーーそのことを知った時、どう思ったの?
香川県の品種「さぬきのめざめ」は、甘みも強く柔らかいアスパラガスで、穂先を揃えるためにカットされて規格外となった根元部分も変わりはありません。そのため、味も栄養価も変わらないのに廃棄するのはもったいなく、調味料メーカーとして何かに利用できないかと思いました。
食感と繊細な風味を残すことに苦労
ーー開発にあたり、どんな部分に苦労した?
アスパラガスは風味が弱いため、特有のしゃきしゃきとした食感と繊細な風味を残すことに苦労しました。食感と風味のために、フードカッターで3~4mmになるように工夫しました。
ーーこだわりの部分を教えて。
アスパラガスをイメージした繊細な味わいと爽やかさ、色合いを残すためにレモン果汁と抹茶を使用し、フレンチ風ドレッシングに仕上げました。また、食材にかけた時に「のっかる」ことで風味を大切にしています。
ーー現在の反響は?
香川県内の量販店様がSDGsとフードロスを意識した商品として積極的に販売いただいており、9月中には完売予定となります。SDGsやフードロスを考えた取り組みは初めてでしたが、販売をいただく得意先様についても、取り組みにご理解をいただいたうえで取り扱っていただき、感謝しております。
ーーどんな料理に使うのがオススメ?
魚介のマリネや白身魚のフライ、焼き野菜がお勧めの食べ方です。爽やかな味わいがマッチします。
ーー「もったいないシリーズ」の第1弾とのことだが、今後の予定は?
第2弾も、小豆島内で収穫された柑橘を利用した調味料を考えております。今後は産地を香川県や西日本に広げて、味わいは高品質なのに規格外となっている農産物や水産物の活用を進めて行きたいと考えています。
「小豆島づくり もったいないアスパラドレッシング」の希望小売価格450円(税別)。なお今回は5000本限定で、中四国・関西圏のスーパーマーケットなどで購入できる。
今後は顧客の反応を見ながら、アスパラガスの栽培状況に合わせて2025年春頃に再び販売を予定しているという。