「自治体ライドシェア」をご存知だろうか?自治体ライドシェアは一般のドライバーが乗用車で客を目的地まで送り届けるサービスを自治体が主導で行うもの。もともとは移動の足がない過疎地などに限られていたが、規制緩和で、タクシーが不足しているなどの条件を満たせば、観光地などでも運行ができるようになった。石川県内では北陸新幹線の金沢敦賀間がオープンした今年3月から加賀市と小松市が、ライドシェアを始めている。まもなく半年、実際にどこまで浸透しているのか、そして利便性や安全面はどうなのか、調べてみた。

加賀と小松が始めた自治体ライドシェア

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今年3月、自治体版ライドシェアを始めた小松市。宮橋市長は「1人でも多くの皆さんに気軽に使っていただいて、この取り組みをさらに広げていけるよう取り組んで参りたい」と意気込む。

タクシーの台数が不足する木曜、金曜、土曜の午後5時から午前0時まで、登録した19人の一般ドライバーが市と契約を結び、客を乗せている。

ドライバーの1人、山崎一也さんは「新しいお客様、新しい方とお話もできるし、いろいろな情報も入ってきますし世間話もできるし、運転するのも好きなので非常に楽しい仕事だと思っています」と楽しそうだ。

山崎さんは、講習を受け、3月からライドシェアのドライバーをはじめた。繊維関係の会社をリタイア後、日中はこども園のバス、そして夜間はライドシェアでドライバーをしているそうだ。

山崎さんに予約が入った。8時16分に小松市の清水町に移動するようとのことだ。スマホに依頼が来ると、お客さんのいる場所まで迎えに行き、目的地まで送り届ける。決済もすべてスマホで済むので目的地に到着するとお金のやり取りはない。そんな手軽さもライドシェアの魅力の一つだ。

次に乗せたのは、会社の飲み会を終えた客。車で10分ほどの自宅まで送り届ける。利用者に聞いてみると、ライドシェアを使うのは今回が初めてだという。利用客は「代行もなかなか捕まらないので、スマホ一つでできるのですごく楽だった」と話していた。

山崎さんは、客が話しかけてきた場合は会話も楽しむようにしているそうだ。この日の客も「普通車っていうのがいいですよね。なんか、気を使わなくていいというか。なんとなくですけどいいですわ。」と満足の様子で、無事に自宅に到着。約4.5キロ走って料金は1600円。市が運営しているため、運賃はタクシーの8割程度だ。

乗客から交通手段の選択肢が増えたことを歓迎する声がある一方、ドライバーからは「まだまだこれで稼げるというようなものではないですね」と言う声もある。報酬は歩合制で、客を乗せた分に応じて支払われるため、山崎さんの場合、月に10回程度出勤して給料は2万円程度だ。山崎さんは、もう少し、ライドシェアが広がってほしいと話していた。

加賀市はウーバーアプリで外国人観光客狙い

一方、加賀市も北陸新幹線開業を機に今年3月からライドシェアを始めている。車の予約には外国人観光客の需要も見据え、海外でも人気のスマホアプリウーバーを使っている。利用は朝7時から夜11時まで。この日は温泉旅館を訪れたニューヨークからの観光客が利用した。

ニューヨークからの客に聞くと、アメリカではみなウーバーを使っているという。運転にも満足したようだ。日本ではウーバーをどこでも使えるわけではないと伝えると、他のエリアにも広がるともっと便利になると思うと話していた。

ドライバーは、「海外の方はアメリカでもアジアでもどこでも今はウーバー使えるのでそのまま同じアプリで、決済できるので楽だし特に喋らなくても目的地がアプリで出てくるので楽ですよね」と利便性を強調する。

小松市と違って加賀市の利用者は半分以上が観光客。今後は地元の人にどの程度浸透させることができるかが課題だ。加賀市の平田圭範企画課長は話す。「少しずつ観光客、市民の方に認知はされてきているのかなという印象は受けています。ただまだまだそれで十分ということではなくてこれから周知は図っていかないといけないと思っています。」

小松市は利用客が地元の人中心、加賀市は観光客中心。ただいずれも1日の利用は7件ほど、利用者の拡大が今後の課題だ。

ドライバーが旅客自動車用の2種免許を持っていないという点を心配している人もいるが、ライドシェアでは座学、実技での講習を受けることが義務となっている。これまで小松市でも加賀市でも事故などは起きていないそうだ。

(石川テレビ)

石川テレビ
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