「NPB球団で使っている『トラックマン』は、各球団の本拠地球場に設置しています。設置費用は別途かかりますが、設置しても機械そのものはTRACKMAN社のもので、球団は年間使用料を払ってレンタルします。
ずっとランニングコストがかかるんですね。2023年時点では10球団が『トラックマン』と契約しています。これで12球団のすべての選手のデータが取れます」
試合用に球場に設置されるタイプの「トラックマン」は、契約している球団にデータを提供するが、その球団の選手のデータだけを提供するわけではない。
自分たちの選手のデータも含め試合のデータをすべて把握されるが、自分たちは自球団の選手のデータでさえ見ることができない、ブラインドがかかったような状態になる。
もちろん「トラックマン」を導入しているだけでは、アドバンテージはない。契約している他球団と同じデータを取得して、どんな分析をするか、どんな分野に役立てるか、が問われているのだ。
「トラックマン」を導入した時期から弾道測定器などの最先端の「武器」を十分に活用できるエキスパートを各球団が必要とし始め、星川太輔などを通じてアナリストを雇用するようになった。
「ラプソード」は個人、学校で導入進む
「ラプソード」は、2010年、シンガポールで設立されたRapsodo社が開発した、「トラックマン」と同じ弾道測定器だ。野球、ソフトボール、ゴルフなどの分野で投球、打球をカメラとレーダーで計測する。
トラッキングデータを取得した直後に専用アプリケーション上でのデータ確認や、タブレットでの映像録画・再生ができる。
「ラプソード」には、ピッチングのデータが録れるもの、バッティングのデータが録れるもの、両方同時に録れるもの、試合のデータも録れる「スタジアム」などがある。
レーダーとカメラの両方でデータを録って、分析するツールまでが一セットになる。
同様の機器・システムには「トラックマン」や「ホークアイ」があるが“持ち運び可能”が一番の強みで、プロ野球12球団だけでなく大学100校、高校140校でも導入されている。
日本で「ラプソード」を最初に導入したのは、2017年、プロ野球チームではなく慶應義塾体育会野球部だった。