イノシシやシカなどの野生動物の農業被害対策に女性のネットワークやコミュニケーション力を生かそうという研修会が広島県三次市で開かれた。その背景には、男性だけだと話が広まらないという事情がある。
「女性がやればずんずん進む鳥獣対策研修会」
広島県の山間部、三次市で開かれたのは野生動物の被害を防ぐための”女性向け”研修会。

その名も「女性がやればずんずん進む鳥獣対策研修会」。開催の背景を広島県の担当者は「これまで研修会の出席者は男性中心で、男性は家に帰っても研修の内容を周りに話さないので、野生動物対策が広がらなかった」と説明する。

今回の研修会の講師に招かれたのは、イノシシの肉と革製品による町おこしで全国から注目されている島根県美郷町の担当者。地域の主体性と女性の力を強調する。

島根県美郷町・安田亮さん:
自分たちの主体性が一番大事だ。これがないと行政に頼っても仕方がない。お母さんたちは行動力がすごい。いま言ったら明日じゃない、今なんです。それぞれの個性が小さくても、“行動力”が一番の強みなんです。ここをどんどん大きく育てていく。
地域が一体となって活動できるかどうかがカギ
三次市の2023年度の野生動物による被害額は、イノシシが1900万円、シカが450万円。コメを食べたりイネを踏み倒したりする深刻な被害が拡大している。

地元では専門家の協力のもと、高校生が野生のシカにGPSを取り付け生態調査をするなど対策に乗り出しているが、なかなか効果的な一手は打てていない。

また、猟友会の会員は広島県全体で2023年度は3118人。女性はそのうちの約3%。男性に大きく偏っており、年齢層も60代以上が約7割と高齢化が進んでいる。

研修に参加した人(70代):
私たちは世間話でいろいろ情報が集まるが、男の人はそれがないんじゃないかと思うので、こういう会が必要だと思う。

野生動物被害で実際に課題となるのは、餌付けを防ぐ「環境改善」や効果的な柵を設置・管理する「侵入防止」、そして「捕獲」を集落ぐるみでいかに推進できるかだ。

研修会では専門家の講演のあとに、初心者の女性でも1人で取り付けられる電気柵など、手軽に取り組める対策方法のレクチャーもあった。

Q:きょう学んだことを誰に話したい?
参加者:
それはやっぱり主人でしょ。

今回研修会で披露されたノウハウは、各家庭の田んぼや畑で活用されることになるが、主催した広島県や三次市は、野生動物対策がこれを機に、地域が一つとなって広がる大きなキッカケになればと期待している。
(テレビ新広島)