プロ野球パ・リーグ、首位快走中の福岡ソフトバンクホークスは8月に入ってもブースト全開だ。96試合を終え(2024年8月5日現在)、62勝31敗3引き分け、勝率6割6分7厘に及ぶ強さをみせている。今のチーム状況をどうみているのか。誰もが気になる山川穂高選手(32)は? 小久保裕紀監督に現役時代からの盟友・元ホークスコーチの鳥越裕介さんが直撃した。
首位を独走も「想定してない」
まず、「シーズン開幕前にここまでの勝率を想定していたか?」と聞く鳥越さん。

小久保監督は「そうね、もちろん(してしません)」と笑顔で応えたあと、「どんな戦術で戦おうかという積み重ねで、気づいたらここまでの貯金につながった。全く星勘定などせず、積み重ねで来たかな」と応えた。

独走状態のホークスに対し包囲網を敷く他球団は、徹底して左投手を当ててきている。オールスター戦以降、8試合左投手が続いた。
確かにホークス打線は、右打者も左打者も関係なく、一様に左投手を苦手としている。

そのことを聞くと小久保監督は、「確かに右と左で、打率が3分から4分の間ぐらい違う。特に4番を打つ山川(穂高 右打ち)は元々、左投手が大好きなのに、今シーズンは左投手を打っていない。急に変わったのでビックリですよね。だって右投手からは途中まで3割を打っていたのに、左投手は大体1割ちょっと。また5番打者の近藤(健介 30歳 左打ち)も、打率は右投手がかなり高いので、相手は左投手を当ててくるんでしょう。あと言えるのは、パ・リーグは左の先発投手が増えたってことじゃないですか。チームの(投手)ローテーションで実力が下なのに、わざわざ投げさせようとは思わない」と分析した。
山川"復調"「一番練習した形が基本」
4番を打つ山川穂高選手は、6月はホームラン0と不振に苦しんだ。しかし7月後半に入ると、6試合で4ホーマー、8打点と完全復調。

2本塁打を放った日(7月30日・対東北楽天ゴールデンイーグルス戦)、山川選手は「今年、1番よかったと思います。オールスター明けてからはいい感じで打てていると思いますので、引き続き頑張りたいと思います」とインタビューに応えていた。
オールスターを堺に手応えあるバッティングができていると話す山川選手は、復調の大きな理由として小久保監督と話をしたことを明かしている。

小久保監督は何を話したのか?鳥越さんが尋ねると、「ホークスからのオールスター選出選手みんなを(札幌市で)食事に連れて行ったんですよ。(それまで山川選手に)技術の話をほとんどしていなかったんですが初めて技術の話をして、そのときに言ったのは、(山川選手はスイングを)“回って打ちたい”と考えていると思うんですけれど、『練習のときは、もうちょっと“回らない”ように、どちらかというと残すような感じの方がいいんじゃないのか』みたいな話をしました。次の日、(山川選手は)オールスター戦のスタメンじゃなかったので、エスコンフィールドのちょっと半地下になった場所に打つ場所があるんですけれど、そこで1時間ぐらい、こもって打っていました。トレーナーの鈴木淳士(1軍チーフトレーナー)が、永遠(かと思えるくらい)に、ずっとトスを上げていましたよ(笑)」と、そのときの様子を手真似しながら話した。
山川を変えた小久保監督の経験談
オールスターの試合前、ベンチ裏で長い時間バットを振っていたという山川選手。現役時代、不振に苦しんだ経験のある4番打者の言葉は、大きなヒントになったのは間違いない。

そして小久保監督は、「山川と技術的な話をしました。ちょっと技術的なことが入ると、大体3試合ぐらい良くて、その後、何となく良いのが5試合。1週間弱持つんですよ。するとまたぐちゃぐちゃになって、結局、『あれは合わなかったね』ってなる。じゃあ大きな舞台とか、切羽詰まった打席のときに、どのかたちに戻っているかといったら、一番たくさん練習したかたちに戻る。僕はそれが基本だと思っているので、最後はその基本に落ち着くと思うんです」と語った。

さらに「(山川選手は)ホームラン6月は0で、ずっと4番を打たせているんですけれど、自分が1999年のときの成績と比べたら山川の方が全然上なので、それも話したんですよ。『今の僕より打ってないんですか』って山川から言われて…、今の山川より打ってなかった」と続けた。そんな小久保監督に「確かに打っていなかったですね(笑)」と、鳥越さんは当時を思い出しながら返した。

1999年はホークスが福岡移転後、初優勝した年だ。前年のけがの影響もあり、シーズン序盤、不振に苦しんだ小久保監督は当時27歳の4番打者だった。6月中旬から2カ月近くホームランが出ない状態が続いていた。

「夏のオールスターまで打率1割台だったんですが、それを4番から外さなかった王さん(当時の王貞治監督)って、やっぱりすごいなと。あのとき、貯金もなく初優勝がかかっているのに『4番を変えない』って、すごい監督やなって、同じ立場になって思います。あの年、オールスターまで1割台でした。そのときの思いなんかがありますね。僕の中に」と、当時を振り返りながら山川選手に声をかけたという。

そして「山川選手の4番は?」と鳥越さんが聞くと、「変えないです、変えないって言いましたもん、この前。正直、“逃がさん”って言った」と笑いながらもキッパリとした口調だった小久保監督。「その前後の打順変更も可能性もないです。チームは生き物なので、結構、我慢していたらまた落ち着くとこに落ち着いてきているので、あまりバタバタしたくない」と語った。
夏場に入り佳境を迎えているプロ野球ペナントレース。パ・リーグを独走するホークスの4番打者から目が離せない。
(テレビ西日本)