7年前、当時2歳の娘に暴行を加えて死亡させた罪などで、一審で懲役12年の実刑判決を受け、5年半以上勾留が続く父親について、大阪高裁が保釈を認めた。 一審で実刑判決を受けた被告が二審判決を前に保釈されるのは極めて異例です。

大阪拘置所を出た今西被告と迎えた弁護団
大阪拘置所を出た今西被告と迎えた弁護団
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上田大輔記者リポート:5年半の勾留期間を終え、今西被告が今、拘置所を出ます。タオルで目元を拭っています。弁護団が迎えています。

■否認し続け5年半以上拘置所生活が続いた

7年前の夜、今西貴大被告(35)が当時2歳の義理の娘、希愛ちゃんと大阪市東淀川区の自宅で遊んでいた時のこと。希愛ちゃんが突然苦しみだし、呼吸が停止。

今西被告は119番通報で、こう説明した。

「『うっ』となって!息してないです!早く来てください!」

病院に運ばれた希愛ちゃんは、意識が戻ることはなく、7日後に死亡した。体に目立ったけがはなかったが、脳内に出血が確認されたことなどから、病院は虐待を疑い通報。

今西被告は、希愛ちゃんに対する傷害致死罪などで逮捕・起訴され、否認し続けた今西被告は、5年半以上拘置所生活が続くことになった。

■一審の裁判員裁判では

一審の裁判員裁判では、13人の医師が法廷に立ち、希愛ちゃんの死因が揺さぶりなどによる暴行か、病死かが争われた。

大阪地裁は、「損傷は脳の深い部分にある脳幹を含んでおり、強い外力がないと生じない」などとして懲役12年の判決を言い渡し、今西被告は控訴した。

去年5月に始まった二審でも、新たに8人の医師への証人尋問が行われ、弁護側は「脳幹の損傷を示す証拠はなく、心臓突然死の可能性が高い」とあらためて無罪を主張。 二審の判決言い渡しは11月となり、あとは判決を待つばかりだった。

大阪拘置所を出た今西被告
大阪拘置所を出た今西被告

そして、大阪高裁は26日、今西被告の保釈を認めた。5年半以上続いた身体拘束が解かれることになった今西被告。 注目の判決は、11月28日に言い渡される。

■取材を続ける司法記者が保釈の背景を解説

一審から取材を続けている上田記者が大阪拘置所前から報告する。

上田大輔記者:26日午後5時前ごろ、今西被告はゆっくりとした足取りで出てきました。頬はかなりこけていて、かなり痩せているなという印象でした。今回の保釈決定は、私も非常に驚きました。これまで弁護団は10回も保釈を請求してきたが、認められていませんでした。一審で懲役12年の実刑判決が出ており、判決直前で認められることはないだろうと思われていました。

裁判所が異例の保釈決定を判断した理由はどこにあるのか?

上田大輔記者:ことし5月に二審での審理が終了し、その直前に裁判長を除く2人の裁判官が変わりました。審理終了後、改めて裁判官3人で合議が行われた結果、これ以上、身体拘束を続けるべきではないとの判断があったのではないかと思います。

二審判決は11月28日となっているが、判決結果にも影響があるのだろうか。

上田大輔記者:逆転無罪の可能性が高いと思われます。二審の法廷では、検察側の医師が画像では確認できなくても出血はあると証言するなど、根拠を示さずに虐待の可能性があるという結論だけを繰り返す場面も目立ちました。こうした審理経過を踏まえて、今回の保釈判断に至っているわけですから、逆転無罪の心証にたどり着いているとみられます。

■異例の判断になった理由とは

ジャーナリスト 浜田敬子さん:日本ではいったん逮捕されると、特に否認をしたりすると、自白するまで勾留されるということが非常に批判されています。これは『人質司法』というふうに言われています。海外からは、人道的にも人権無視だということで、非常に強く非難をされていて、弁護士の方たちも8割ぐらいが反対されてるそうです。
 今回の場合も、否認されたということで、5年にわたって非常に長いですよね。勾留を延長するには、それなりの理由が必要です。やむを得ない事情といって、例えば、証拠隠滅すると逃亡の恐れがあると検察側は主張するんですけども、最終的に勾留延長を決定する裁判所です。裁判は、独自の調査をする時間も、人もないので、警察の証拠は情報として多いわけですよね。今回問われているのは、もちろんその冤罪の可能性もあったと思いますし、日本の司法とか捜査のあり方も、問われてくると思います。

関西テレビ 神崎博報道デスク:今回の場合、裁判所の人事異動があって担当の裁判官が替わったというのが非常に大きくて、裁判官が高裁の審理の記録を全部読み直すんですよね。これ大丈夫かな、検察庁ちゃんとやってんのかなというところが引っ掛かったと思われます。ずっと身柄拘束していいのかどうかで、今回異例の判断になったというところで、裁判官が替わったことは非常に大きと思います」

(関西テレビ「newsランナー」2024年7月26日放送)

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