高校球児の熱い戦いが行われている夏の高校野球県大会。熱中症が心配される炎天下での試合が続いているが、選手たちを陰ながらサポートをしようと動く青年がいる。
“当時やってほしかった”氷の提供
7月23日、熱中症警戒アラートが発表される中、福井市のセーレンドリームスタジアムでは、甲子園の切符を掛けた熱戦が繰り広げられていた。
35度を超える暑さに、選手たちは熱中症対策としてベンチに戻る度に、氷の入った冷たい飲み物を飲んだり、氷のうを首元に当てたりして体を冷やそうとしていた。

この氷を球児たちに届けているのは、福井市高木中央の氷店「さくら氷」代表の吉田師士さん29歳だ。
午前6時半、さくら氷の加工場では、氷を車に積み込んでいる吉田さんの姿があった。さくら氷では、冬場に飲料用などに使われる「かち割り氷」を製造する際、規格外の大きさとなった破片をためておき、熱中症対策として球児たちに無償で提供している。

自身も高校球児だったという吉田さんは「自分が野球をしていた頃から、35、36度の炎天下、猛暑日の中で試合をするようになって、足がつったり、ぶっ倒れたりすることが実際にあった。氷は製氷機で各学校から持ってくるが、試合が始まる前に溶けてしまい、試合中には常温の飲み物を飲むので全然クールダウンができなかった」と当時を振り返る。

氷の提供は「やってほしかったことを今の選手に返す、という思いでやっている」と話す。
約240kgの氷を無償提供
氷の提供は2023年から始め、福井の会場だけで行っていたが、県内の全高校球児へ届けたいという思いから、2024年からは敦賀会場への提供も始めた。

大会期間中に提供するのは、2つの会場であわせて約240kg。氷を入れる冷凍庫も各会場に2台ずつ無償で貸し出し、試合前の早朝か、試合が終わった夕方ごろに補充しているという。

県高等学校野球連盟の中川秀樹理事長は「非常にありがたく思っている。氷のブロックを首筋や脇にあてたり、飲み物に入れたりして、体を冷やすのに利用している。選手たちは、いろんなところで支えてもらっている事を感じて、感謝の気持ちを忘れずに全力でプレーしてほしい」と話す。
高校球児にエールと氷を送る
吉田さんは、高校球児だった当時の自身の思いも重ねて「ちょっとでもベストパフォーマンスできるように。3年間いろんなことを我慢して頑張ってきているので、それを発揮してほしい。余分なところに気を使わずにプレーに集中して、甲子園は小さいころからの夢だと思うので、そこを目指して無事に頑張ってもらえたら」とエールをおくる。

「周りの大人のサポートを感じてもらい、福井に残るきっかけになってほしいし、大人になったときにサポートする側にもなってくれれば」という希望も語ってくれた。

元高校球児から、炎天下で必死に戦う高校球児への熱い思いが、冷たい氷とともに届けられている。
(福井テレビ)