子育て中に増えてくる、サイズが合わなくなった子ども服や遊ばなくなったおもちゃなどの“まだ使えるモノ”。フリマアプリ全盛の今、“モノ”を通じて人と人の出会いにつなげようというプロジェクトが鹿児島県内で活動している。
8年前から続く取り組み
カラフルな夏物の子ども服や雑貨。全て鹿児島県内の家庭で使われなくなったモノたちだ。
この記事の画像(11枚)「モノモノコウカンプロジェクト」と名付けられ、2016年から続くこの取り組みでは、着られなくなった子ども服や、遊ばなくなったおもちゃを出品して、その数だけ他のモノに交換できる仕組みだ。
これまで不定期に鹿児島県内各地でイベントを開いて活動してきたが、今回、鹿児島市紫原に初めて常設の拠点を作った。運営する原田桃子さんは「お子さんたちもキラキラしておもちゃを見ていて、こんなに楽しいんだなと思って活動しています」と語る。
「もったいない」を「誰かの宝物に」をモットーに、志布志市で始まったこのプロジェクト。前任者の仕事の都合もあり、次の担い手を探していた時に手を挙げたのが原田さんだった。
活動に関わることになったきっかけについて、原田さんは「前職で勤めていたケーブルテレビの取材対象として、『ぜひ取材させてください』と声を掛けさせてもらったのがきっかけ。自分たちが大事にしたモノを次の人が使ってくれるなら、ぜひ使ってほしいと思っている人がこれだけいるのだなと知ることができた」と話した。
“モノモノコウカン”で会話生まれる
夫の創さんは休日に桃子さんを手伝っている。生後3カ月になる湊くんも一緒だ。取材した7月9日も、お店には親子連れのお客さんがやってきた。
創さんに抱っこされる湊くんを見て「かわいい~、ちょっと(首が)しっかりしてる」と、お客さんとの会話も笑顔で始まる。
親子が持ってきたのは、もう着られなくなった夏物の服だ。
原田さん:全部で15点なので15点分(交換できる)
利用者:このラッシュガードは?大好きなキティーちゃんだよ
原田さん:はーい、ありがとう。キティーちゃんのキラキラだねー
利用者:かげちゃん(お子さん)のお洋服がこれになったよ。やったね!
モノとモノを交換することで親子の間にも会話が生まれていた。利用した母親は「捨てるのももったいない服って結構あるので、こういうところで他の子に使ってもらえたらうれしい」と話す。
子育て世代以外も立ち寄る場所に
原田さんは、この場所が単に物々交換を行うだけではなく、地域の交流を生む場になることを願っているという。
今度は「草むしりをしてきたよ」と話しながら、ご近所さんがやってきた。近くで不動産を営む男性だ。
男性は原田さんたちの出店を歓迎していて、2人の姿を見て「優しそうでいいですよね」と話した。また、「テナントの電気がつけたままになってるよ」といった、ありがたい連絡をもらうこともあるそうだ。
拠点を作ったことで、子育て世代でない人も立ち寄る場所になった。
今はフリマアプリを活用し、様々な場所でモノの売り買いができる時代になった。しかし、原田さんは「直接のつながりというのが、意外と意味があるものなのかなと思っている」という。さらに「ただモノの交換をする場所だけじゃなくて、お母さん同士が交流できたり、子ども同士が遊んだりとかそういうことがこの場で生まれるっていうのが意味のあることなんじゃないかなと思います」と、あえて街中に拠点を置く意味を強調した。
誰もが気軽に立ち寄ることができる場所を目指し、9年目を迎えて新たな拠点を見つけたプロジェクトは、モノだけでなく多くの人をつなぎ始めている。
(鹿児島テレビ)