2019年、大阪府の学校法人の土地取引を巡り、21億円にも及ぶ巨額横領事件で、不動産会社「プレサンスコーポレーション」の社員や、当時プレサンス社の社長だった山岸忍さん(61)らが逮捕された。

特捜部に対しある“問題”を主張した山岸忍さん(61)
特捜部に対しある“問題”を主張した山岸忍さん(61)
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しかし、その後無罪となった山岸さんが特捜部に対し、ある“問題”を主張し、11日、法廷で史上初めて大阪地検特捜部による取り調べ映像が公開された。

なぜ、特捜検事の取り調べ映像が法廷で公開されるという異例の事態に至ったのか。
FNNは、その実際の映像を独自に入手した。

「悪い顔になってきている」…異例の取り調べ映像公開

大阪地検特捜部(当時)・田渕大輔検事:
そんな話して大丈夫?だからあなたの顔が穏やかになりきっていないって見えるんですよ。見えるんですよ、見てわかるんですよ。

供述に納得がいかないのか、相手に「顔が穏やかではない」と迫る人物。
2019年当時、大阪地検特捜部の検事だった田渕大輔氏(52)。現在は東京高検で検事を務めている。

大阪地検特捜部(当時)・田渕大輔検事:
だんだん悪い顔になってきているよ。

取り調べを受けるK氏:
いや、悪い顔じゃないです…。

特捜検事の取り調べ映像が法廷で公開されるという異例の事態の発端は、この取り調べが行われていた当時、大阪地検特捜部が捜査していたのは、21億円にも及ぶ巨額横領事件にさかのぼる。

2019年、大阪府の学校法人の土地取引を巡り、特捜部は、法人の元理事長や不動産会社「プレサンスコーポレーション」の社員らを逮捕し、更に、当時プレサンス社の社長だった山岸忍さん(61)についても、関与していたとして逮捕・起訴したが、後に裁判で山岸さんは無罪が確定した。

その後、山岸さんは国を訴えた損害賠償訴訟の中で、元部下のK氏に対する特捜部の取り調べに問題があったと主張したのだ。

そこで、実際の取り調べを記録した映像が、11日の法廷で証拠として流された。

山岸さんの元部・K氏:
正直に全部ちゃんと話そうという姿勢で臨んでいます。

大阪地検特捜部(当時)・田渕大輔検事:
だとしたら私がほしい話ではなく、私が“なるほど”って思える話が出てこないとおかしいですよね。でも今の少なくとも山岸さんに関する話って、全然なるほどじゃないよ。本当に真実の話をしたら、なるほどって思う話になるはずなんです。

「社長の山岸さんは事件に関わっていない」とするK氏の話に納得せず、更に追い詰めていくかのようなやり取りが記録されていた。

大阪地検特捜部(当時)・田渕大輔検事:
はなからあなたは、社長をだましにかかっていったってことになるんだけど、そんなことする?普通。

山岸さんの元部下・K氏:
しないですよね、普通は。

大阪地検特捜部(当時)・田渕大輔検事:
なんでそんなことしたの?それ何か理由がありますか?それはもう、自分の手柄がほしいあまりですか。そうだとしたらあなたは、プレサンスの評判をおとしめた大罪人ですよ。

田渕検事は、その後も「会社への損害を自分1人で背負えるのか」と問い詰める。

大阪地検特捜部(当時)・田渕大輔検事:
あなたはその損害を賠償できます?10億、20億じゃすまないですよね。それを背負う覚悟で今話をしてますか?

山岸さんの元部下・K氏:
まあ背負えないですよね、それは。

大阪地検特捜部(当時)・田渕大輔検事:
背負えっこないよね。

加えて別の日の取り調べでは、机をたたいたり大声で怒鳴るなどの場面もあったという。

「不穏当な言葉はありました」担当検事“問題”認める

11日の法廷で、尋問のために出廷した当の田渕検事。

取り調べに反省すべき点があったか問われると、「使った言葉に不穏当な言葉はありました」と話した。

田渕検事は、今後、同じような取り調べは「まずしない」と述べ、当時の取り調べに一定の問題はあったことを認めた。

その一方で、取り調べの供述が信用できないとして、山岸さんが無罪となったことは「残念な判決だ」と述べている。
(「イット!」6月11日放送より)

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