沖縄を訪れた観光客に関するビッグデータを分析・可視化することで、マーケティング戦略に活かす取り組みが始まっている。

システムを開発したのは沖縄観光コンベンションビューロー。データを共通言語とした観光地経営の取り組みを取材した。

観光客の人流データをDXで解明

沖縄県が発表した2023年度の入域観光客数は国内・国外合わせて853万人あまり。
このうち、国内客は新型コロナ前の2018年度を上回る、過去最多の726万9100人となっている。

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コロナ禍を経て、回復の兆しが見えている沖縄観光。

いっぽうで、好調な沖縄観光が経済活動にどう作用しているか把握は難しく、専門家からは観光経済の実態についてあいまいさを指摘する声もある。

沖縄観光コンベンションビューロー 企画・施設事業部 坂本麻美マネージャー:
沖縄県全体の入域観光客数は県が発表しているんですが、市町村のどこに行ったのか、どことどこを周遊している人が、どれくらいいるかがブラックボックスになっています

これまで把握が難しかった観光客の人流データ。これをDX(デジタルトランスフォーメーション)で解明する動きが始まっている。

最大の強みは可視化

沖縄観光コンベンションビューローが、産・官・学連携で開発したのが「おきなわ観光地域カルテ」。

膨大なデータを分析し、マーケティング戦略に活かすことを目的としていて、開発を担当した坂本さんは最大の強みを「ぱっと見てわかる」と説明する。

沖縄観光地域カルテは観光客の数だけでなく、県内のどの市町村を訪れたのか、周遊ルートなどをグラフや数値で分かりやすく可視化しているのが最大の特徴だ。

2024年のゴールデンウィークを分析すると、4月27日から5月5日までに那覇市を訪れた県外からの観光客は、およそ48万人と推計している。

このうち福岡県福岡市博多区からはおよそ7000人、東京都大田区から5700人、熊本県熊本市中央区から5500人など、どの地域から訪れたかも知ることができる。

ここまで詳細に把握できることについて、カルテを開発した坂本さんによると、2022年ごろに官公庁が人流データを、入域者数のバックデータとして使用することが可能になったことが大きいと話す。

私たちが普段何気なく使っているスマートフォンのアプリケーションには、本人の許可を得て位置情報を提供しているものがある。

蓄積されたビッグデータを人口統計に基づいて推計する事で、沖縄を訪れた観光客の詳細な分析が可能となっている。

地域が知りたいのはどれくらいの人が来たか

さらに、沖縄県内全域1684地点を碁盤目のように区分けし、周遊ルートを細かく分析し、市町村ごとに来訪者の延べ滞在日数を知ることもできる。

坂本さんによると、「地域が知りたいのは、沖縄県全体に来ている人のうち、どのぐらいの人が自分の地域に滞在してくれたかで、それを可視化されたほうが具体的な施策の打ち手に繋がりやすい」とおきなわ観光地域カルテのメリットについて説明する。

一般的に宿泊施設などは、閑散期や繁忙期にあわせて価格が変動するオープン価格となっていて、観光カルテが蓄積したデータから需要を予測し、価格を上げるべきか、下げるべきかの判断材料としても活用できる。

カルテの使い方をレクチャー コンサルティングにも

沖縄観光コンベンションビューローでは、市町村の観光協会などに出向き、カルテの使い方のレクチャーやコンサルティングにも取り組んでいる。

2024年4月に行われた沖縄市でのミーティングでは、スポーツツーリズムがテーマとなった。

沖縄市観光物産振興協会 金城諭 事務局長:
一番大きな部分は、スポーツツーリズムです。沖縄市は、サッカーもバスケもホームタウンというところもありますので

沖縄市観光物産振興協会では、市内を本拠地とする琉球ゴールデンキングスやFC琉球のアウェー戦に出向き、沖縄市で開催される観戦チケット付きのホテルパックを案内している。

相手チームのブースターやサポーターに対し、沖縄で開催される試合への誘客につなげるのがねらいでこれまで成果が見えにくかったが、観光地域カルテを活用することで、今後プロモーションの成果を分析するのが狙いだ。

沖縄市観光物産振興協会 金城諭 事務局長:
やっていることに対して成果が出ているのかということも判断できるし、それが成果として表れていなければ、どう変えていくかという分析のツールになります。データが見られるようになったというのは大きいです

いっぽう、名護市観光協会では市の観光課と連携し、人流データを2025年度からスタートする第三次観光基本計画にも反映させたい考えだ。

名護市観光協会 比嘉重史 常務理事:
我々北部はやんばる全体でお客様がどう楽しんでいただけるか、受け入れ態勢をどう強化していくかが最重要課題ですので、それを含めての分析というのは必須です

沖縄観光コンベンションビューロー 国内事業部受入推進課 渡辺翔 主任:
皆さんでいいものにしていく活用事例を作っていくというようなことをやっていきたいです。具体的には、「プロ野球キャンプのときを分析したら、こういう示唆が得られましたよ」とか、「課題にされている『素通り観光』というものを実際に数値化して見てみたら、ここの部分は人は来ているんだけど、ここに関しては素通りかもしれないと示唆が得られました」とか

名護市観光協会の比嘉専務理事は、課題となっている「素通り観光」の解決に向け、データに基づいた施策を打ち出せる意義は大きいと感じている。

データを共通言語にした観光地経営

デジタルトランスフォーメーションにより観光産業にもたらされる変革。観光カルテを開発した坂本さんは、データを共通言語にした観光地経営を目指したいと話す。

沖縄観光コンベンションビューロー 企画・施設事業部 坂本麻美マネージャー:
人流データは、その現状を知るための手段だと思っています。そこに地域の現状だったり、ありたい状況だったりと、そこから導きだされた課題があって、そこを埋めるためにどんな知見と施策を打ってみたらどうだったか、みたいなことが答えとして出てくると思います

また、データの分析からマーケティングに繋げる好循環を生み出し「地域の稼ぐ力」に繋げていきたいとしている。

あとがき

地域観光カルテでは、沖縄県外からの観光客だけなく県内の人の動きも把握できる。

県内の人流のデータも分析できるため、観光客や地元客などそれぞれのターゲットに向けた施策を打ち出すことができる。

また、各自治体の観光協会から要望しているのがインバウンドの人流データ。沖縄観光コンベンションビューロでは、どの国籍のデータをとることが地域の有益な情報につながるか検証していきたいとしている。

(沖縄テレビ)

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