熊本市の慈恵病院が運用している、親が育てられない赤ちゃんを匿名でも預かる「こうのとりのゆりかご」について、2023年度の預け入れは前の年度と同じ9人だった。開設から17年間の預け入れは179人に上る。

「内密出産」導入されても孤立出産残る

「こうのとりのゆりかご」に2023年度預け入れられたのは、前の年度と同じ9人。開設から17年間の累計は179人となった。「こうのとりのゆりかご」を運営する慈恵病院の蓮田健理事長は「日本に1カ所しかなければ、もっと預け入れ数は多くあるべきだと思う」と話す。

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熊本市によると、子どもの父母などの居住地は、熊本県内が1人、中部と関東がそれぞれ2人、不明が4人。9人のうち1人は1歳から就学前の幼児で、2人は医療行為が必要な状態だった。出産の場所は自宅が9人中4人で、危険な孤立出産を防ぐための「内密出産」が導入され、2年以上たった現在も課題として残されている。

慈恵病院・蓮田健理事長:
ゆりかごも内密出産も、ほとんどが親御さんに知られたくないという理由です。家族が家に戻るまでの間に、仕事とかから帰ってくるまでの間に、家に戻らないといけない人はゆりかご・赤ちゃんポストになる

新たな課題「出自を知る権利」どう守る

ゆりかご開設から17年がたち、預けられた子どもたちの成長に伴い「出自を知る権利」をいかに守るかが大きな課題となっている。慈恵病院によると、預け入れられた子どもが自らのルーツを求めて問い合わせてくるケースがこの1年で10件ほどあったということだ。

慈恵病院・蓮田健理事長:
これまでお子さんたちのことを(行政から)知らせてもらえませんでした。守秘義務で。私たちも困っていて、出自を知る権利検討会では、赤ちゃんが預け入れられた時点からそれぞれが(真実告知の)準備をできる状態で臨めるような指針のようなものを作っていただきたい

一方、熊本市の大西市長は「こどもの出自を知る権利の保障について、慈恵病院と連携を図り、子どもたちの思いに丁寧に寄り添っていくことができるよう検討を進めていく」とコメントしている。

(テレビ熊本)

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