三井住友銀行は東京・渋谷に、スターバックスを併設し、広いラウンジを提供する新店舗をオープンする。顧客の日常的な利用を促進するのが狙いで、専門家は、リアルとオンラインの両方で、顧客満足度を向上させる取り組みが重要だと指摘している。

「行く場所」から「いる場所」への変革

「行く場所」から「いる場所」へ、個人の顧客のニーズに応じ、銀行の店舗が今、大きく変化している。

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三井住友銀行が27日、東京・渋谷にオープンする新しい店舗は、銀行窓口の横にスターバックスが併設され、広いラウンジでくつろげることが特徴だ。

2階にはコワーキングスペースがあり、さらに――。

山下あす奈記者:
こちら地下1階の会議室なんですが、貸金庫をリノベした部屋になっています。

三井住友フィナンシャルグループ・中島達社長:
銀行の店舗を「行く場所:a place to go」から「いる場所:a place to be」へ変えていく。

日常的に銀行に訪れてもらう他、アプリで展開する個人向けの金融サービス「Olive(オリーブ)」に特化した実店舗を構えることで、ユーザー拡大を狙う。

銀行業界では、みずほ銀行が池袋に口座開設の専門店舗を作るなど、個人向けのサービスに特化した店舗への移行が加速している。

大切なのは「リアルの再定義」

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
今回の試み、どうご覧になりますか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
オリーブは銀行口座やクレジットカード、さらには資産の運用まで、スマホのアプリで管理できる総合金融サービスです。

ユーザーの2人に1人は20代以下と、若年層の取り込みに成功している点が特徴です。このオリーブが、渋谷にラウンジをオープンさせる。これは、リアルとオンラインの両方から顧客接点を持つことで、ユーザーの満足度を上げる狙いがあるかと思います。

堤キャスター:
その満足度アップのポイントは、どこにあるのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
リアルとオンラインの両方で顧客接点を持つ際に大切なのは「リアルの再定義」です。つまり、顧客が本当に求めているリアルなサービスはなんなのか、これを見つめ直す必要があります。

例えば、電気自動車で成功したテスラでは、新車の販売はリアル店舗であるディーラーが行なうという常識を破り、オンライン販売がメインです。

その代わりに、リアルでしかできないサービスとして、車の修理に駆けつけるサービス網や、急速充電器の設置を進めました。

今回、オリーブが渋谷にラウンジを持ちましたが、銀行にとっての「リアルの再定義」と向き合い続けているからだと思います。

結婚・子育て・住宅の購入・資産形成・“終活”に寄り添う

堤キャスター:
金融サービスにとって、リアルだからこそ価値があるものに、どんなものがあるのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
野村総研のデータによると、顧客が金融サービスに求めるニーズでもっとも増えているのは、「店舗とオンラインの使い分け」です。借り入れを含めて、お金の出し入れは、もうオンラインの方が便利ですよね。

いま、銀行などに求められているのは、結婚・子育て・住宅の購入・資産形成、さらには人生のエンディングなど、顧客の目標や悩みに寄り添うことです。

こうした相談はオンラインより、やはりリアルな対応が歓迎されます。オンラインとリアルの両方からアプローチを行い、顧客満足度が上がると、経済圏の囲い込みも強化されます。

堤キャスター:
金融サービスについて、自分にとって何がいいのか、分からないという方も多いかと思います。そんな時に、誰かに頼れるのは心強いですよね。オンラインで多くのことが出来る今の時代だからこそ、対面の強みを生かした取り組みがうれしく感じます。
(「Live News α」5月23日放送分より)

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