2000kmの旅をするチョウ「アサギマダラ」。透けたように見える水色の羽がどこまでも美しい。福岡県への飛来がピークを迎える中、1日に100匹以上が飛来し、“アサギマダラの楽園”のようになっている場所がある。
この場所を8歳のときから整備してきた少女の活動を取材した。
“旅するチョウ”に5歳で魅了された少女
アサギマダラは、秋になると日本列島から暖かい沖縄や台湾に大移動し、春になると逆に南から北上するチョウだ。
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夏に近づくにつれて、福岡を離れて涼しい場所で夏を越したあと、秋になると再び福岡に訪れる。その距離は、実に2000kmにも及ぶ。
この不思議なチョウに魅了されてしまったのが、福岡・遠賀町に住む中学3年生の新留かんなさん(14)だ。
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新留かんなさん:
ことしは飛来数が多い気がする。アサギマダラに惹(ひ)かれるところは、長い間、長い距離を旅するところ。そして飛び方がふわふわしていてかわいいところ。羽が透けてきれいだし、そういうところが好きです
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かんなさんがアサギマダラに出会ったのは、5歳のときに家族旅行で訪れた大分県の姫島でのことだった。アサギマダラの一大飛来地の光景に、すっかり心を奪われてしまったという。
奇跡の出会い 好物の花に秘密が
「福岡でもアサギマダラを見たい!」と7歳のときに何の当てもなく、自宅近くのサイクリングロードへアサギマダラを探しに出かけたかんなさんは、片道2時間の道のりを走りながら、アサギマダラを探し回った。
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行きは見つからなかったが、もう諦めかけていた帰り、かんなさんの横にアサギマダラが急に出てきたという。
その時の様子について、かんなさんは「感動っていうよりかは、驚きとか、うれしいっていう方が強かった」と語った。
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かんなさんが、アサギマダラを見つけることができたのは、花に理由があった。
アサギマダラのオスは2000kmの旅の途中、特定の花の蜜を吸う習性があるのだ。
かんなさんが見つけたアサギマダラを追いかけると、やはり好物の花が群生していた。
この奇跡的な発見をきっかけに、かんなさんの次なる挑戦が始まった。
アサギマダラの花園がホテルの一角に
「ここは、アサギマダラ花園。父と一緒に花を植えて育てた場所です」とかんなさんが紹介してくれた場所こそ、宗像市のホテルの一角にこしらえられた花園なのだ。
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花園に咲いていたのは、アサギマダラが好んで蜜を吸う花のひとつである「スイゼンジナ」で、繁殖行動の活性化に不可欠な成分が含まれているという。かんなさんは、「この花の中にフェロモンの成分というか材料が入ってて、それで子孫を増やせる」と教えてくれた。
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旅するチョウが立ち寄れる拠点を作れば多くの人に見てもらえるのでは、と考えたかんなさんは、なんと8歳のときからアサギマダラが好む花を大量に育て、花園を作り上げた。
10カ所以上の地権者に交渉した末に、熱意に打たれた宗像市のホテルが無償で敷地を貸し出してくれたのだ。
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春と秋の飛来シーズンに合わせて、かんなさんは、週末を中心に花の手入れに余念がない。
雨の中での作業も「見に来てくれるお客さんたちが喜んでくれるから」と作業の手を休めない。
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かんなさんの父・等さん:
正直言って、大人でも無理やないかなと思いますよね。早かったら朝5時半には、娘はこの場所にいますからね。いいことをやっていると思うので、全力で応援しない親っていうのはいないと思いますけどね
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訪れた見物客たちも「すごいですね。こんなにいっぱいいるって」「きれいですよね~、しかもめっちゃおる」と、乱舞するチョウに思わず見とれてしまうほどだった。
2024年の春は、育てたスイゼンジナの花付きも良く、天気のいい日は100匹以上が姿を見せる。
少女の活動が“アサギマダラロード”に
さらにかんなさんの活動は、宗像のホテルだけにとどまらない。
かんなさんが育てたスイゼンジナを手に訪れたのは、福岡・芦屋町の観光協会だ。花を設置して、アサギマダラが見られる場所を増やしている。
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芦屋町観光協会・前田勇人さん:
本当に頭が下がる思いで、小さいときからよく頑張ってるなと思います。子どもたちが蝶々を見てすごく喜ばれているので、うれしいことです
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今では、北九州市から宗像市までの広い範囲でアサギマダラが見られるようになり、「アサギマダラロード」として見る人を楽しませている。
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新留かんなさん:
「ありがとう」って言ってくれたり、「知ることができて良かった」っていうお客さんもいたりするから、やっぱりうれしい。できる限りは続けていこうと思う
1人の少女が始めた活動だが、最近では頑張るかんなさんを応援しようと、アサギマダラを見に来るだけだった人たちが作業を手伝うようになったという。
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2000kmに及ぶほどの移動をするアサギマダラは、まさに「旅するチョウ」だが、その生態はまだまだ分からないことも多い。
かんなさんのアサギマダラへの思いは今後、多くの謎を解き明かしてくれるに違いない。
(テレビ西日本)