相次いだ日米の基地でのドローン撮影。安全保障上の課題を映像から読み解く。

米空母「ロナルド・レーガン」をドローンで撮影か

アメリカ海軍横須賀基地を離れる空母「ロナルド・レーガン」。16日、アメリカ本国へ出発した。

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甲板上には「ではまた」と人文字がつくられた。改修に向かったロナルド・レーガンが、早ければ2030年代後半にも横須賀に戻ってくることを示唆しているようだ。

一方、ロナルド・レーガンをめぐっては、日本を離れる直前、SNS上に注目の動画が投稿された。

能勢伸之上席解説委員:
艦橋に76という数字があります。フェイクではなく本物の映像だとすれば、横須賀基地に停泊中の空母ロナルド・レーガンをドローンで撮影したということになります。
 

能勢伸之上席解説委員:
また、細かく見てみますと、戦闘機などを打ち出すカタパルトという装置の中核となる部品が、整備のため甲板上に並べられているようです。

この映像は、「世界首席無人機盗撮芸術家」を名乗るXのアカウントから配信されたものだ。このアカウントからは、4月にも停泊中の海上自衛隊の護衛艦「いずも」を上から撮影した映像が配信されていた。

防衛省は「実際に撮影された可能性が高い」としたうえで、木原防衛相は「ドローンにより危害が加えられた場合、我が国の防衛に重大な支障を生じさせかねない」と懸念を示した。

なかでも、ウクライナの戦いで注目された「FPVドローン」は、操縦者がドローンのカメラ映像をリアルタイムで見ながら操縦し、標的の隙間に飛び込み自爆攻撃を仕掛けることができる。

能勢伸之上席解説委員:
アメリカの空母でも、FPVドローンをはじめとするドローン攻撃は危惧されるのでないでしょうか。カタパルトが壊れれば、戦闘機を発進させる空母の能力は大きく減ってしまいかねません。また、空母の左右には戦闘機などの航空機を上げ下ろしする巨大なエレベーターがあり、接岸中は防護壁が開いていることもあります。空母にドローンが入り込むことで安全保障に揺らぎが生じかねません。

心理戦、情報戦の一環か?

在日アメリカ海軍は、FNNの取材に対し投稿された映像について「ソーシャルメディアの投稿は認識している。NCIS(海軍犯罪捜査局)が捜査を行っている。現在進行中の捜査においてコメントするのは不適切」と回答した。

能勢伸之上席解説委員:
横須賀を母港とするアメリカ海軍には、ドローンを探知し行動不能にするレーザー砲を搭載したイージス艦もあります。今回アメリカ軍はロナルド・レーガンがドローンに撮影されていたことに気づかなかったのか。それとも、撮影されて困る状況でもなかったので、意図的に放置したのか。アメリカ海軍がコメントしないのは、心理戦、情報戦の一環なのかもしれません。
(「イット!」5月19日放送より)

能勢伸之
能勢伸之

情報は、広く集める。映像から情報を絞り出す。
フジテレビ報道局特別解説委員。1958年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。報道局勤務、防衛問題担当が長く、1999年のコソボ紛争をベオグラードとNATO本部の双方で取材。著書は「ミサイル防衛」(新潮新書)、「東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか」(PHP新書)、「検証 日本着弾」(共著)など。

イット!
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