政治とカネの問題が議論される中、改憲論議はどうなっているのか。「BSフジLIVEプライムニュース」では、現状と各党の立ち位置について与野党の論客を迎えて議論した。

災害等で選挙実施が困難な場合の任期延長は必要か

長野美郷キャスター:
現在、衆議院と参議院の憲法審査会では、自民党が掲げた改憲4項目に基づいて議論が進められている。そのうち「緊急事態条項」で議論されているのは、自然災害、テロ、内乱、感染症のまん延などの緊急事態時に、衆議院議員選挙の実施が困難な事態が想定される場合の任期延長について。

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中谷元 自民党衆院議員 衆議院憲法審査会幹事:
近年も大地震、コロナ、テロがあり、国の緊急事態に対する備えに絞って2年間議論してきた。一番の問題は、全ての根幹である衆議院と参議院、二院制の国会の機能が失われれば国のコントロールができないこと。参議院の緊急集会も70日しか想定しておらず、それを超える事態について議論した。論点整理をすると自民、公明、維新、国民、有志の会は全て一致している。

反町理キャスター:
任期延長の問題点は。

階猛 立憲民主党衆院議員 衆議院憲法審査会委員:
「選挙が困難な事態」は政権与党が決めることになる。「3分の2以上」の議決要件はあるが、与党が多数を握っており、また与党に与する野党がいる場合には、必ずしも国民の意に沿う形での任期延長はされないと思う。任期が来れば民意の審判を経るのが民主主義の大原則。例えば全国の5分の1が被災した場合、残りの5分の4は選挙できるのにしない。ここをどう考えるか。

中谷元 自民党衆院議員 衆議院憲法審査会幹事:
比例代表の全国区もブロックもあり、特定の地域だけの問題ではない。同じ日に同じ条件で選挙しなければ正しい結果が出ない。

小池晃 日本共産党書記局長:
災害時こそ選挙権をきちんと保障するのが大事。災害対策がどうなっているのか国民に信を問う形で。

反町理キャスター:
いや、だからできないときにどうするのか。

小池晃 日本共産党書記局長:
繰延投票とか手段がある。(参議院の)緊急集会もある。

音喜多駿 日本維新の会政調会長:
大前提として、任期延長は議員が身分を守りたいということではない。どんなときでも国民の代表者を確保し、国民の権利、自由、財産を守るために必要だということ。緊急集会も短期間しか想定されていない。外国と条約を結んだり本予算を組むことは、緊急集会だけではできないし不適当。任期は憲法に書いてあり、憲法を変えないと不可能。

危機管理について起草委員会での議論の見通しは

長野美郷キャスター:
憲法論議の次の段階について。日本維新の会の岩谷良平氏から「賛成の党派だけで条文案の起草委員会は実務的に進めるべき」、国民民主党の玉木雄一郎氏から「緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正の条文案づくりを改めて提案する。審査会で要綱形式で議論するべき」、立憲民主党の逢坂誠二氏からは「立法府の機能維持は極めて大事で、現行憲法下でどうやって最大限維持できるのか手を尽くして方策を検討すべき」という意見が出た。次のステージに向けた動きは。

中谷元 自民党衆院議員 衆議院憲法審査会幹事:
かなり論点も明らかになってきており、条文をもとに議論すべき時期。幹事懇談会や起草委員会で実際の条文作りをしようと、共産党や立憲民主党にも呼びかけている。出てこられないなら、審査会の場で具体的な条項や要綱をもとに議論ができたらいい。

階猛 立憲民主党衆院議員 衆議院憲法審査会委員:
決して煮詰まってはいない。その上で逢坂さんが言うように、現行憲法下でどうやって最大限維持できるのかが重要。災害時の法制はだいぶ整ってきた。感染症時の法案も整備されてきた。憲法の前にそちらの議論を優先すべき。

小池晃 日本共産党書記局長:
煮詰まっていない。国民の合意もないのに進めていくのは間違っている。起草委員会を作って条文作りをする必要はない。国会がやるべきことは他にある。

音喜多駿 日本維新の会政調会長:
一刻も早くやるべきことは大前提。憲法改正議論と災害対策の法律を別々のところで同時に議論することは全くおかしくない。参議院側の議論が遅れていることは事実だが、衆議院で足を止める理由にはならない。相当深いところまで論点は出そろって整理されており、起草委員会を立ち上げて具体的な議論に入っていくべき。

裏金議員に憲法改正議論の資格はあるのか

長野美郷キャスター:
憲法改正に反対の姿勢を明確にしている立憲民主党の主張。辻元清美氏は「現在の政治は自民党の裏金事件によって信頼が大きく毀損している。国民から権力の行使をあずかる議員が守らなければならない規範を変える資格があるのか」、逢坂議員は衆議院の憲法審査会で「裏金議員は政治資金規正法違反の恐れがある。その議員が自分たちを縛る憲法を議論することは、主権者である国民にとって理解しがたい」としている。政治とカネの問題が解決しない中、今のメンバーでは憲法改正の議論すらするべきではないのではないか。

階猛 立憲民主党衆院議員 衆議院憲法審査会委員:
他のテーマはともかく、任期延長については今の状態で議論すべきではないというのが私の立場で、憲法改正全体について議論すべきでないということではない。

小池晃 日本共産党書記局長:
裏金議員は裏金によって当選している可能性がある。正当に選挙された国民の代表と言えるのか。辻元さんや逢坂さんが言うことはわかる。

中谷元 自民党衆院議員 衆議院憲法審査会幹事:
政治資金の問題について、党として深く反省して必要な処分を行い、改革に取り組んでいる。しかし、そのことと憲法審査会を開くかどうかは別の問題。そもそも憲法審査会では、政局を絡めずに落ち着いた環境で議論すべきだとして、特に与党は広い度量を、野党は良識をもって議論するということで常に話し合いをしている。

音喜多駿 日本維新の会政調会長:
自民党にも反省が足りないと思うが、正直水掛け論だと思う。安倍政権のときに共産党さんや赤旗さんは、モリカケ問題とか公文書の問題があり安倍政権下で憲法改正を議論すべきでないと言っていたはず。それではいつまでたっても議論ができない。起草委員会は起草委員会でやり、裏金問題は別のステージで徹底的に追及する。切り分けていく必要がある。数の力で押し切るというのではないが、改憲勢力と改憲に肯定的な方が3分の2以上である中で、起草すらできないことには非常に違和感がある。

“自衛隊明記”9条改正 中谷氏「緊急的な課題」

長野美郷キャスター:
憲法9条について。共同通信の調査では、改正の必要があると答えた人が51%、必要ないと答えた人が46%。前者の理由は「安保環境の変化」、次に「自衛隊は憲法違反だから」。後者の理由は「平和主義が崩れる」、次に「戦争に巻き込まれる」。自民党としては、緊急事態条項の次は、9条に着手したい考えか。

中谷元 自民党衆院議員 衆議院憲法審査会幹事:
次とは言わないが緊急的な課題。自衛隊は違憲だと小池さんは言うが、憲法への自衛隊の明記は大事なこと。多くの会派でほぼ合意がされつつある。残る論点は戦争放棄、戦力不保持を定める9条の付近に規定をするのか、それともシビリアンコントロールの観点から73条に規定するのか。

小池晃 日本共産党書記局長:
憲法の条文に照らせば自衛隊は反すると我々は言っている。今までも立憲主義を破壊して安保法制あるいは敵基地攻撃だということで大軍拡しているが、最後の歯止めとして9条がある。それを外して普通に戦争ができる国になってしまっていいのか。

階猛 立憲民主党衆院議員 衆議院憲法審査会委員:
国民の皆さんは、今までは9条があることで日本の平和が守られてきたと考えている反面、これからも9条でいけるのかということなのだと思う。真摯に耳を傾ける必要がある。ただ、我々は違憲法案だと思っているが、安保法制に基づいて日本の安全保障が行われている以上、9条を変えることにどんな実益があるのか。現時点では憲法9条を変える必要は全くない。

音喜多駿 日本維新の会政調会長:
日本維新の会は、9条に自衛隊を明記すべきという立場。解釈によって憲法が伸び縮みすることは明らかに危険度も高いし、国民も納得できない。自衛隊の方々は入隊するときにも誓約書を書いて命をかけると言っているのに、憲法にその存在が何も明記されてないのは明らかにおかしい。

反町理キャスター:
日本が侵略を受けたときに戦うのは自衛隊だが、共産党としてはそれは違憲の存在で、将来的には消滅してもらわねばならず、日本を守る組織として憲法上に明記することにも反対か。

小池晃 日本共産党書記局長:
そう。憲法上認めてしまえば、平気で海外で武力行使ができるようになってしまい、アメリカから要請されたら全く断れない状況になる。

中谷元 自民党衆院議員 衆議院憲法審査会幹事:
すると誰が国を守るのか。国の基本法に定められてないのは、どこの国から見てもおかしい。これは常識。

階猛 立憲民主党衆院議員 衆議院憲法審査会委員:
日本がもし本当の独立国家だったら、当然国を守るための自衛隊のような組織が必要。今の日本は国を守るためだけではなく、アメリカのためにも活動しなくちゃいけない。

反町理キャスター:
同盟ってそういうものなのでは。

階猛 立憲民主党衆院議員 衆議院憲法審査会委員:
同盟には巻き込まれるリスクと見捨てられるリスクが両方ある。今、日本はこれを恐れている。そういう中で9条を改正し、自衛隊が大きくなりすぎたら非常に危険だと思う。
(「BSフジLIVEプライムニュース」5月18日放送より)