国会では17日午後、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応に関する全体会議」が初めて開催され、与野党各党の代表者が、皇族数の確保策や皇位継承の安定化策について約1時間にわたり意見を表明した。会議は今後、週1回のペースで議論を行い成案を目指す方針で、額賀衆院議長は「可能な限り今国会中に取りまとめたい」と述べた。
会議は衆参両院の正副議長が主催し、自民党からは麻生副総裁や茂木幹事長、立憲民主党からは野田元首相ら、日本維新の会からは馬場代表など、各党のトップや幹部が出席し、政府からは林官房長官が同席した。
会議で各党は、政府有識者会議が2021年末の報告書で皇族数の確保策として示した「女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する」案と、「皇統に属する男系男子を養子縁組で皇族とする」案についての意見を中心に意表明した。
自民党は、皇族確保策については「内親王・女王に婚姻後も皇族の身分を保持していただくことは皇族数の確保のために必要だ」とし、その場合には女性皇族の夫や子は皇族の身分を持たない考え方を示した。また、皇統に属する男系男子を養子縁組して皇族とする案についても「皇族数確保、安定的皇位継承のため必要な方策だ」との考え方を表明し、政府有識者会議の案に賛同した。現在の皇位継承の仕組みを変えることには極めて慎重な姿勢を示した。
立憲民主党は、有識者会議の報告書が「安定的な皇位継承確保の課題」と「女性宮家の創設」についての要請に十分応えていないと指摘し、この視点に関する本格的な検討が必要だとの立場を示した。
その上で、女性皇族が結婚した後も皇族の身分を保持する方策については賛成の姿勢を示した上で、夫や子も皇族の身分とすることも検討すべきだとの考えを表明した。
また、男系男子の養子縁組案については「現実的に養子の対象となり得る方がいるのかを、その方の意思とともに慎重に確認した上で、制度設計の議論に移らなければならない」と慎重に進める必要性を強調し、養子縁組が可能な資格を11の旧宮家に限ることは、憲法の平等原則に反する疑いがあることを指摘した。その上で「議論の経過を国民にしっかりと提示していくべきであり、国民世論の動向も踏まえるべきだ」との考えを強調した。
公明党や日本維新の会、国民民主党は、政府有識者会議の報告書の皇族確保策に賛同する姿勢を示した。その上で公明党は「当事者である皇族の方々の思いを踏まえる」との観点を指摘した。
一方、共産党は天皇を男性に限定する理由はないとして女性天皇・女系天皇を認めるべきだとした上で、男系男子の養子縁組案には反対を表明。れいわ新選組は、政府に幅広く国民の意見を聞くよう要請し、参院会派「沖縄の風」も女性・女系天皇容認論を唱えた。
会議終了後、額賀衆院議長は、今後毎週1回木曜日に会議を開き、各党の意見を整理した上で、とりまとめに向けて誠意を持って議論していく方針を強調した。ただ、立憲の野田元首相は、議論を急ぐ必要性に言及しつつ、今国会での成案について「このペースではとても無理じゃないか」と疑問を呈していて、とりまとめの行方は不透明となっている。