北陸新幹線の福井・敦賀間が延伸した。新幹線がもたらす経済効果はこれから実感を伴ってくるであろう。一方で、50年以上たっても進展がない新幹線計画が九州にある。福岡から大分、宮崎を通って鹿児島に至る「東九州新幹線」だ。なぜ50年進展がないのか。そして、いつか実現する日は来るのか。みやざき鉄道PR大使で鉄道ジャーナリストの田代剛さんに聞いた。

東九州新幹線の想定ルートは?

鉄道ジャーナリスト 田代剛さん:
東九州新幹線は、福岡県北九州市の小倉から大分県、宮崎県を通って鹿児島中央までというルートが構想の一つとなっている。現在のJRの特急では「宮崎~大分約3時間」「宮崎~鹿児島約2時間」かかる。東九州新幹線が実現すれば「宮崎~大分48分」「宮崎~鹿児島29分」となり、全線の「小倉~鹿児島間」も2時間で結ばれることになっている。

日帰り旅行もしやすくなる時間で、観光宮崎としては重要だ。福岡に入って九州をめぐる観光客が、大分、鹿児島に加えて“宮崎にも行ってみよう”と、選択肢の一つになる可能性があるからだ。

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「東九州新幹線」議論はいつから?

宮崎県は2024年度、東九州新幹線の所要時間や整備費用などを調査することを決めた。これを受けて地元では、新幹線への注目や関心が高まっている。

そもそも「東九州新幹線」は、いつから議論されてきた事なのか。

鉄道ジャーナリスト 田代剛さん:
約50年前の1973年(昭和48年)に当時の運輸省が、鉄道建設を開始すべき新幹線・鉄道の路線を定める「基本計画路線」12路線を打ち出したのが始まり。九州新幹線などは、その後整備計画路線となって38年の時を経て2011年に開業した。しかし、東九州新幹線は1972年に基本計画路線に位置付けられたが、その後50年、進展していないというのが現状だ。

なぜ50年も進展がなかった?

当時の宮崎は高速道路がまだ整備されておらず、これから始めるという段階であった。また、航空便の充実に力を注いだ時代でもあった。かつての国鉄もオイルショックなど課題が多く、なかなか日本の末端にある南九州に新幹線を、というところまでいかなかったというのが現実だった。

こうした時代背景以外に、田代さんは、「住民の熱意」を指摘する。

鉄道ジャーナリスト 田代剛さん:
福岡から鹿児島を結ぶ九州新幹線は2011年に開業したが、熊本と鹿児島の住民レベルからの「新幹線を!!」という熱い思い、“熱量”があった。これが一番であったと思う。民意があれば政治が動く。政治が動くと国を動かす力になる。住んでいる人たちの「新幹線が欲しい」という“気持ち”が大事だったりする。

“熱量”という意味では、九州以外にも、今現在すでに形を示しているエリアがある。東九州新幹線と同じく1973年に基本計画路線に決定した「四国新幹線」だ。岡山県から四国にわたって、高松、松山、高知、徳島につなぐという新幹線構想。地元ではずっと“熱量”をもって誘致活動をしている。

瀬戸大橋、在来線の線路の隣に新幹線が通ることを想定したスペースがすでに確保されているほか、香川県宇多津町には、新幹線の駅のための場所も確保されているという。

また、若い世代や子供たちにも「新幹線が四国にあったらいいね!!」という考えを広めるため、新幹線をイメージした応援キャラクターも誕生している。その名も「つなぐん」。初代、「0系新幹線」になんとなく似ている?アリクイをベースにしたキャラクターだ。

大分県は独自に“新ルート”を提示

東九州新幹線については、去年、大分県が独自に新たなルートを提示して整備費用などの調査結果を公表した。独自の新ルートを示して「本気度」を示した形だ。新ルートは北部九州の交通の要所・佐賀県の新鳥栖と大分を結ぶ「久大本線ルート」と呼ばれる。日田や湯布院など大分を代表する観光地もルート上に入っている。福岡空港に降りた人たちに、“大分に観光に来てほしい”という思いを形にした新ルートと言える。

宮崎県は“新八代ルート”を提示

大分県に遅れを取ってはならないと、宮崎県もようやく動き出している。熊本の新八代から宮崎まで「B&S」という高速バスでつないでいるルートを、新幹線の「新八代ルート」として可能性を提示している。宮崎県の河野俊嗣知事は「東九州新幹線鉄道建設促進期成会」の会長でもある。大分の“熱量”を受けて、会長の宮崎としても可能性を見出そうじゃないかということで動き始めた。

「新幹線は必要?」宮崎県民の考えは?

・宮崎市 40代女性 さきさん
 必ず必要!とは言えないが、繋がってくれたら嬉しい。出かけるのにも新幹線があると便利。でも宮崎に新幹線が出来るとしたら50年後と話されていたので、期待は出来ない。
・宮崎市 30代女性 シエナさん
 いらない。新幹線を作るより、有料道路や近辺の道路整備をしてほしい。
・宮崎市・50代女性 さるさるさん
 線路が単線一本の日豊本線側に新幹線は無理筋では?熊本、鹿児島からの延伸ならアリかも。

宮崎県が調査対象にしているルートには「日豊本線ルート」のほかに、宮崎と鹿児島中央を結ぶ「鹿児島中央先行ルート」と宮崎と新八代を結ぶ「新八代ルート」がある。鉄道ジャーナリストの田代さんは、どのルートが実現性が高いと考えているのか。

鉄道ジャーナリスト 田代剛さん:
明言はできないが、建設費用や手間を考えると、「新八代ルート」がひとつの手ではないかと思う。将来の事を考える上でも、新幹線の議論は必要だ。九州新幹線も38年かかった。東九州新幹線を通すとすれば50年は想定される。そうなると、宮崎の30年、50年先の魅力づくりをしておかないと、新幹線ができてしまったら宮崎県民はどんどん色々なところに出て行ってしまう。“宮崎を愛する”という意味でも、この東九州新幹線というものを考えてほしい。

東九州新幹線が実現するかどうかも気になるが、将来の宮崎がどうありたいかを考えるきっかけにもして、議論を進めるべきであろう。

■田代剛さん
宮崎市出身・鉄道ジャーナリスト・みやざき鉄道PR大使・JR吉都線日南線応援大使・元mrt宮崎放送アナウンサー 今回は6番線から3番線に入線し解説

(テレビ宮崎)

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