沖縄県石垣市の尖閣諸島調査に国会議員が初めて同行し、これに対し、中国海警が威嚇行動をとった。

「BSフジLIVEプライムニュース」では、調査を行った山田吉彦氏、同行した稲田朋美元防衛相に実際の調査について伺うとともに、中国海警の現状や日本がとるべき備えの姿勢について考えた。

上陸しての環境調査は国際機関と共同で行うことも視野に

竹俣紅キャスター:
今回の尖閣諸島調査は、4月26〜27日の2日間行われた。前回は、魚釣島南側のドローン撮影を行ったが、今回は北側の撮影を行い、ピーク時には約1000頭にも増えたとされるヤギの生息状況、プランクトンや魚群などを調査した。尖閣諸島周辺では近年、中国の海上保安機関・海警局の船による接続水域の航行、領海侵入が頻発し、日中間で緊張が高まっている。今回、国会議員が同行した背景は。

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稲田朋美 元防衛相:
令和2年に「尖閣諸島の調査・開発を進める会」という勉強会を立ち上げた。開発・調査を推進する議員立法と、会として視察に行くことが目的。今回、条件が整って、ようやく現地を視察することができた。

竹俣紅キャスター:
具体的な調査の内容について。まず、魚釣島北側でドローンによる撮影が行われた。

山田吉彦 東海大学海洋学部教授:
今回初めて魚釣島の内陸までドローンが入った。海岸の状態は、植生がなく緑がどんどん減り、崩れている。また漂着ゴミがたくさんあり、環境がどんどん悪化している。前回調査した南側斜面の切り立った部分に比べれば、それでもまだ緑が多いが。

山田吉彦 東海大学海洋学部教授
山田吉彦 東海大学海洋学部教授

反町理キャスター:
今後の上陸調査の必要性については、どう感じているか。

山田吉彦 東海大学海洋学部教授:
基礎データは取ってきたが、上陸しないと本質が全くわからないと改めて感じた。ヤギの食害でだいぶ緑が減っていると言われており、今回上空から赤外線熱源センサーで撮ってみた。確かにヤギの群れがいるのはわかるが、上陸しなければなかなか目視できない。

反町理キャスター:
上陸調査は日本が単独で行うのか。環境調査をするのなら、国際機関と連携して、国際共同調査のような形で尖閣に上陸する方法もあるのでは。

山田吉彦 東海大学海洋学部教授:
今回はアホウドリらしい姿も確認した。センカクモグラのような希少種もいる。世界の英知で調査し、この島を世界の財産として管理していければ理想。

稲田朋美 元防衛相:
環境問題は今、世界的に一番大きな課題。環境という観点から国際機関と共同調査することは、十分考えられるのでは。

フィリピン・ベトナム・台湾…余裕のない中国海警の実態

反町理キャスター:
調査船が魚釣島に向かう時、どのようにアプローチしたか。

山田吉彦 東海大学海洋学部教授:
まず南側で海水を採り、水の状況を確認した。その後西側から回る形で、島の北側に向かった。北側を往復し、ドローンによる調査、あるいはプランクトンを採る調査等を行った。また戦時中の1945年に、疎開船が遭難し流れ着いた事件があったが、その犠牲者の方の慰霊祭を洋上で行った。

反町理キャスター:
中国海警の船は、どういう動きを見せた?

山田吉彦 東海大学海洋学部教授:
海警は今回、非常に早い段階から現れた。まだ魚釣島まで50kmぐらい離れている段階で、4隻現れてきた。この段階では海上保安庁の船が近くても、海保の船と大体4〜5kmほどの距離を維持し、航路を塞ぐ形で調査船に近づけない体制をとった。島の近くになったところで、海保の2隻が海警の2隻を外側に追い出し、視界から消してしまう。

反町理キャスター:
完全に操船技術の話だ。

山田吉彦 東海大学海洋学部教授:
調査を進めていく中で、1隻の海警船が1kmほどの距離に近づき、調査を阻止するような行動を見せたが、その時には海保がもう完全に近づけないようにした。その段階では、1隻はかなり他の船と引き離した形で、この1隻を相手に海保の6隻で取り囲んでしまう形。

反町理キャスター:
無線でのやり取りは?

山田吉彦 東海大学海洋学部教授:
中国海警は常に無線で「ここは中国の領海である」と言ってくるが、囲まれた時は「危険だから近づかないように」に変わった。ぶつかった場合は、海保のせいだよということ。その段階で、かなり勝負あった(海保の勝ち)に近い状態。

稲田朋美 元防衛相:
大変緊迫した状況で、しかも海保の方が量も質も上回っている状況だとわかった。

竹俣紅キャスター:
今回の調査は3回目だが、海警船の数や対応に2回目までとの違いは。

山田吉彦 東海大学海洋学部教授:
今、中国海警局は手いっぱい。南シナ海ではフィリピンのコーストガード(沿岸警備隊)を相手にかなり体力を使っており、またベトナムも中国に対し、かなり積極的に対応している。そして、台湾との間で金門島をめぐる確執が明確になっている。余裕のある段階ではなく、日本側から圧倒的に抑え込まれてしまう。それでも出ていかなければいけない状態。

反町理キャスター:
在日中国大使館の報道官が「釣魚島と付属島しょは中国固有の領土で、領土主権と海洋権益を守る中国の決意と意思は揺るがない。(中略)中国は日本に対し、一切の政治的挑発、現場での騒動、世論のあおり立てをやめ、情勢の更なるエスカレートを回避するよう強く促す」とコメント。だがこれは、北京からではない。北京の外交部の報道官会見では「外交ルートを通じて日本の侵害と挑発に対し、日本に対し厳正な申し入れをした」という具体性のない発言だけ。「抑えている」と見える。

山田吉彦 東海大学海洋学部教授:
中国本土では、現状を報道することができない。中国の領土だと言っているのに、実際には日本の海上保安庁に守られ、調査が行われている。中国側としては、苦肉の策のコメント。

稲田朋美 元防衛相:
おっしゃる通りと思う。ただ一方、領海の中に当然のように海警の船が入る状況が作られていることも現実。日本側としては、今回のように施政下にあることをしっかりと見せていく必要性を感じた。

「警察権の行使でしか武器を使えない」日本の弱み

竹俣紅キャスター:
中国の海洋進出に対し、日本はどう備えるべきか。1000トン級以上の船の数は、中国が2022年時点で海上保安庁の2倍以上。装備も新型艦はヘリコプター設備、大容量放水銃、20ミリから76ミリ砲などが充実。また、2021年2月に施行された中国海警法22条には「国家主権等が海上において、外国の組織、個人から不法侵害を受けた場合、武器の使用を含む一切の必要な措置を取る権利を有する」とあり、武器使用を辞さない構え。この中国海警に対して、日本の海上保安庁の現状は。

稲田朋美 元防衛相:
この海警法施行後の状況を見ることも今回の目的だったが、現時点では、しっかり海保が管理している。だが中国が本気になってやってきたら、数では負ける。日本も粛々と海保の態勢を強めていくこと。また、日本は警察権の行使でしか武器を使えない。主権を守るための法律なども必要だと思う。やはり隙を見せないこと。国際社会に、日本の正当性や尖閣が施政下にあることも含め、しっかり認識してもらう。

山田吉彦 東海大学海洋学部教授:
中国は国際法よりも国内法を優先している。国際法では、公船は公船に法執行できない。日本はそれを守るが、中国が必ずしも守るとは言えず、十分に備えなければいけない。中国海警はさらに攻撃的な法律を作ってくると思う。根本を考えれば、領海内に他国の警備船が入っていること自体がおかしい。海上保安庁のみならず国として、外務省も含めて対応していかなければいけない。

竹俣紅キャスター:
視聴者からの「私の声」。「中国に対してフィリピンが頑張っているのに、なぜ日本は及び腰なのか。断固たる行動をとるべきでは。強く出れば日本は何もできないと既に思われてしまっていて悔しい」というご意見。

山田吉彦 東海大学海洋学部教授:
実は、日本の海上保安庁とフィリピンコーストガードはかなり密接な関係で、連携しながら動いている。その中で、今はフィリピンが非常に積極的に動いている。一方で、日本が外交的に中国の立場を気にしすぎているのでは、というところは我々も感じる。ただ現場の海上保安庁は、今日の話通り、かなり力を割いて守っている。このことを世界に訴えていかなければいけない。

稲田朋美 元防衛相
稲田朋美 元防衛相

稲田朋美 元防衛相:
私は日本が及び腰とは思わない。数でも質でも、今は勝っている状況なので、冷静に隙を見せずに、それを続けていくこと。日々守っていく、隙を埋めていく努力が必要。

反町理キャスター:
もう一つ視聴者からのメール。「例えば中国が尖閣海域に調査と表明した上でドローンを飛ばし、領海内に多数の海警船を配置した場合、どう対応するか」。

山田吉彦 東海大学海洋学部教授:
まず魚釣島に管理体制を作ること。作れればそういうことは起こり得ない。船が近づいてきても、もっと事前に海上保安庁がいくらでも対応できる。安全保障上国民が危害を与えられるということであれば、自衛隊も含めて守る体制を取れる。基本は、島をしっかり管理していると言える体制を作ること。
(「BSフジLIVEプライムニュース」4月29日放送より)