1月31日、沖縄県石垣市が尖閣諸島周辺の海洋環境調査を行う中、日本の海上保安庁に当たる中国海警局の船が日本の領海に侵入し、調査船に接近する事態が発生した。
BSフジLIVE「プライムニュース」では、調査に同行した東海大学の山田吉彦教授を迎え、佐藤正久自民党外交部会長とともに今回の対応と今後の課題について議論を深めた。また、佐渡金山の世界文化遺産登録をめぐる問題についても話をうかがった。
中国の意表を突いた尖閣の海洋環境調査
この記事の画像(15枚)新美有加キャスター:
日本の領海警備の現状について。今回の調査は日本固有の領土である尖閣諸島で行われました。目的は周辺海域の維持、保全及び利活用に向けた実態調査で、行政による調査は10年ぶり。計画はいつごろ始まったのでしょう。
山田吉彦 東海大学 海洋学部 教授:
中山義隆石垣市長と考え始めたのは5年以上前。2021年5月以降、具体的なプランを煮詰め、日程調整を始め、12月に石垣市議会を通して予算を確保した上で行いました。尖閣という言葉は使わず、黒潮海域の調査と。
反町理キャスター:
つまり尖閣に行くことは予算書を見てもわからない。政治的に、隙をついたタイミングでうまくやった?
佐藤正久 自民党 外交部会長:
海洋調査のためにも尖閣の名前を出さない方がいい。出せば妨害行動があるに決まっている。中国からも、また石垣の議会にも海洋調査に反対する議員がいる。住民にも。
山田吉彦 東海大学 海洋学部 教授:
確実に安全な状況で行くため、中国側の動きを確認できるまで、ギリギリまで外に情報が出ないよう注意しました。
佐藤正久 自民党 外交部会長:
北京冬季オリンピック前で、中国の海警船が大きく暴れることが難しい時期。非常に成功した例。いつも尖閣周辺には中国海警船が4隻いるが、今回は2隻しかいない時期だった。
反町理キャスター:
山田さん、それは知っていた?
山田吉彦 東海大学 海洋学部 教授:
旧正月の春節前は2隻になるという過去のデータがある。
圧倒的な技量差で中国海警から調査船を守った海上保安庁
新美有加キャスター:
海洋環境調査に向かっていたところ、中国の海警局の船2隻が、4時間に渡って日本の領海に侵入し調査船に接近してきた。石垣島を出港してからどれぐらいで?
山田吉彦 東海大学 海洋学部 教授:
接続水域の入り口のところで、朝の4時半ごろに、レーダーに2隻正体不明の船が映ったと報告を受けました。その段階で、もう海上保安庁の巡視船が我々とその不審な船の間に入っていました。5隻に守られる形で我々は動いていました。
反町理キャスター:
どういう気持ちでその場を見るものですか。
山田吉彦 東海大学 海洋学部 教授:
安心していた。海上保安庁も調査船にプレッシャーがかからないようにしてくれた。中国海警から調査船に多くメッセージが投げかけられたが、海上保安庁は「一切答えるな、相手にしなくていい」と。返答は全て海上保安庁から、「ここは日本の管轄海域であり正当な行為である。中国船は速やかに退去しなさい」と繰り返していました。
反町理キャスター:
その言葉の対立を聞いている調査船側の心境は。
山田吉彦 東海大学 海洋学部 教授:
中国側がほぼ影響を与えられる位置関係にないのが、レーダーと目視からわかった。中国側の投げかけに海保は明確に反論しており、船員が動揺することはありませんでした。
反町理キャスター:
山田さんの客観的なご感想では、中国の海警は明らかに数的にもオペレーション的にも劣勢にあったと。
山田吉彦 東海大学 海洋学部 教授:
はい。操船技術も比べものにならないレベルでした。海上保安庁の5隻が安定した関係で動いており、中国海警が調査船に寄ろうとしても速やかに挟みこんで対処してくれた。海上保安庁がしっかりと守る姿を見られたことに非常に感激しました。
佐藤正久 自民党 外交部会長:
尖閣の方にも海上保安庁の3隻が待ち構えていて、合計8隻。対して中国海警は2隻で、圧倒的だった。
反町理キャスター:
今回は石垣市の調査という公的なミッションであるため、海上保安庁もこれだけ手厚く防御したのか。
佐藤正久 自民党 外交部会長:
通常の漁船の場合はここまでやらない。今回は海上保安庁の飛行機も飛んでおり、後ろの方で自衛隊のP-3C哨戒機なども構えています。当然、那覇の航空自衛隊も。中国の海警船が領海侵入したときは通常、今回に限らず自衛隊も海上保安庁も態勢をとる。警察も含めた横の連携も全て行いながら対応しています。
島は先に取られたら負け。海上保安庁の強化が必要
新美有加キャスター:
日本の領海警備の課題について。2021年4月、自民党の国防部会などは、尖閣諸島をはじめとする我が国の領土領海を断固守り抜くための緊急提言を行い、日本と中国の警備力の差を指摘しています。1000トン級以上の中国海警船が130隻あるのに対し、海上保安庁の巡視船は66隻。装備を含め力の差があるという指摘だが、佐藤さんは危機感をどのように感じていらっしゃいますか。
佐藤正久 自民党 外交部会長:
無人機を導入するなど省人化も睨みながら、海上保安庁の力を上げる。巡視船は66隻から70隻まで増えたが、逐次増やしていくという段階。現在は南シナ海の方に中国海警の重点があり、この間に海上保安庁を含めた東シナ海の態勢を整備しなければ。
反町理キャスター:
なるほど。
佐藤正久 自民党 外交部会長:
また、中国海警はもう第2の海軍であり、日本の海上保安庁は実質的に警察。軍は主権を守るもので、警察は治安を守るもの。中国は海警法を改正し、中国の海警が主権を守るための武器使用をできるようにしたが、日本はあくまで警察権で国内法を守るために武器を使う。整合性が取れず、法改正の議論もある。島というのは先に取られたら負け。取り返すことは本当に大変。衛星も使い、先手先手で対応しないと。
石原慎太郎氏が遺した言葉から尖閣の課題を考える
新美有加キャスター:
ここからは、2月1日に亡くなられた石原慎太郎元東京都知事の、2012年5月16日の番組ご出演時の発言から、尖閣諸島をどう守るのか今後の課題を考えます。2012年4月、当時東京都知事だった石原さんは東京都による尖閣諸島の購入計画を発表し、資金となる寄付金の募集を開始。この動きを受け9月、当時の野田政権は尖閣諸島の国有化に踏み切りました。
石原慎太郎 東京都知事(当時):
とにかく国家のために、国がやらないなら東京都がやるしかないと思ってやった。東京都下の島である沖ノ鳥島で、新しい漁場を作り日本の漁船が行くようにしたら、他国の船は来なくなった。同様にさっさとやればいい。
憲法は変えたらいい。自国を守る軍事力には正当性があり、それを今の憲法が否定するなら滑稽千万だ。だいたい、占領軍が統治のために作った法が日本の独立後にも通用するなんて例は、歴史的にない。今の政治家には志がない、きちっとした国家観・世界観がない。
新美有加キャスター:
この時、山田さんは同席されていた。印象的なことは。
山田吉彦 東海大学 海洋学部 教授:
当時、私は石原都知事の下、東京都専門委員として尖閣諸島の購入・活用プランを作っていました。国際的な海洋環境の調査基地をつくる提案に、面白いと言われた。その志を踏襲し、今回も環境というキーワードで島を守っていこうと。当時集めた15億円のうち14億円は東京都が基金として持っている。これは島の活用にも使えるお金で、さらにしっかり調査ができるのではと考えている。
佐渡金山「強制労働はなかった」と毅然と主張していく
新美有加キャスター:
佐渡の金山を世界文化遺産に登録するため日本政府が推薦書を提出し、これに韓国が反発したことに対して、自民党外交部会などが韓国に反論する決議をまとめました。
佐藤正久 自民党 外交部会長:
一番の目的は世界遺産登録。今は日本政府からユネスコに推薦をしただけ。これからの過程の中で妨害行為が予想されるのがまさに韓国で、我々が推薦する前からいわれなき誹謗中傷といえる、根拠のない独自の主張を繰り返している。国際法違反となる強制労働はなかった。これから国際社会や韓国に対しても、冷静に毅然と主張していかないといけない。そのために政府とタッグを組むのが決議の趣旨。
新美有加キャスター:
政府からの反応は。
佐藤正久 自民党 外交部会長:
まさにこれからだと。みんな甘くないと認識している。実際、韓国が先にタスクフォースを組んで準備している。日本も2月1日、第1回のタスクフォースの会議を立ち上げたが、今後は民間の有識者とかいろんな人を入れながら。短期決戦だと官房長官も言われていた。
反町理キャスター:
佐渡金山に関する韓国側の批判では、朝鮮半島から連れてこられ強制労働をさせられていた人がいたのかどうかという部分がポイント。日本政府は、強制労働をさせられていた朝鮮人はいなかったと。
佐藤正久 自民党 外交部会長:
今回はそもそも江戸時代の登録だから昭和は関係ないのだが、韓国はフルヒストリーでやるべきだと。実際に朝鮮半島から来て働いていた人がいたことは間違いないが、それが本当に強制労働かというと全然違う。
反町理キャスター:
日本に来るまでのプロセスではなく、労働条件が強制労働だったのかどうか。厳密な線引きは可能か。苦しいのでは。
山田吉彦 東海大学 海洋学部 教授:
実際問題、今さら検証はできないと思う。佐渡金山の世界文化遺産としての意義という本質に戻らなければ。そこを置き去りにした点は韓国のミスだと思う。
BSフジLIVE「プライムニュース」2月2日放送