本格的な利用が始まった放射光施設、ナノテラスは、食の分野でも活躍が期待されている。太陽の10億倍の明るい放射光で「おいしさ」を可視化しようと、企業が期待を寄せている。
最新施設をパックご飯に活用
この記事の画像(6枚)角田市にある、アイリスオーヤマの「角田インダストリアルテクノパーク」
研究開発部門や製造物流工場が集約された複合施設だ。
ナノテラスのコアリションメンバーに名を連ねるアイリスオーヤマは現在、パックご飯や炊飯器をはじめとした「コメ事業」を拡大している。研究によりさらなる進化への期待を寄せているのが「パックご飯」。
アイリスオーヤマ応用研究部 藤村洋さん
「ナノテラスのX線で、おいしさを可視化しようと考えていて、ご飯をよりおいしく消費者に届けられるように放射光を使って研究できたらと考えている」
放射光で物質の機能を可視化
ナノテラスは、太陽光の10億倍明るい放射光を生み出すことで、原子や分子の大きさ、ナノレベルの観察を可能にする施設。このような放射光施設は「巨大な顕微鏡」とも言われている。
国内の別の施設で撮影されたサクランボを見てみると、放射光を当てることで中が透けて、栄養の通り道がくっきりとわかる。
物質の機能が見えることで、医療や薬品・材料の開発など、さまざまな分野の研究が加速することが期待されている。
コメのおいしさ引き出す…カギは「食感」
コメのおいしさを引き出す中で「食感」が最も大事と話す、藤村さん。
電子レンジで温めたパックご飯に、かまどで炊いたときの食感を生み出すには、どれぐらいの硬さでお米を炊くべきか。これまでも全国の放射光施設で、コメの食感に関わる研究を続けてきた。
「放射光でご飯粒を撮っていくと細胞やデンプンの構造までしっかり見えてきて、細胞の間の亀裂やひび割れも確認されまして、それが食感に効いているのだろうと推察しています。」(アイリスオーヤマ 応用研究部 藤村洋さん)
研究対象が多すぎてワクワクする
これまでより鮮明に、細部まで観察ができるナノテラス。アイリスオーヤマは食感の「秘密」に迫るだけでなく、さまざまな製品開発につながることを期待している。
「幸いなことに、生活用品メーカーとして、いろいろ製品を扱っている会社なので正直言うとどれを放射光で撮ろうか、多すぎて絞れていないのが現状。逆に言うと、それだけ研究対象があって、ワクワクする。消費者のみなさんも、ワクワクして待っていていただければ。」(アイリスオーヤマ応用研究部藤村洋さん)
アイリスオーヤマは4月19日に1回目の研究利用を予定している。
(仙台放送)