トイレをスマホで予約できる実験がスタート
急にお腹の調子が悪くなり、走ってトイレに向かうが、全てのトイレが使用中。または「ちょっとお手洗いに」と相手を待たせて向かった先はトイレ待ちの行列。
「急いでいるのに」という時に限って、長いトイレ待ちに遭遇した覚えは誰にでもあるのではないだろうか?
「今から向かうトイレを予約できれば」と思ったことがある人もいるかもしれないが、そんなサービスを形にした技術の実証実験が7月30日から始まった。株式会社Duchamp(佐賀県)が開発した「予約制トイレQREA(クリア)」だ。

“誰も漏らさずに済む世界をつくる”をコンセプトに、トイレの確実な利用を保証するトイレ予約サービスで、後付け可能な専用のトイレの鍵とLINE公式アカウントを使って、トイレの利用状況の判別から予約・確保までをサポートしてくれる。
実証実験は横浜駅西口の商業施設「ジョイナス」の地下2階のトイレ(男女1台ずつ)で、8月30日までの14時~19時に利用することができる(休館日は除く)。なお、実験期間中はサービスの利用料はかからない。

利用方法は、LINEを使った5つのステップで行える。
<予約制トイレの利用方法>
(1)LINEでQREAを友達追加する。
利用前アンケートに回答すると、トイレの予約が可能になる。
(2)トイレの空きを調べる。
LINEのリッチメニュー(画面下)から、予約したいトイレの空きを調べる。
空いている場合は「1」、空きがない場合は「0」が表示される。
(3)トイレを予約する。
「予約する」ボタンを押すと予約が完了。選択したトイレの鍵が自動で施錠される。
(4)目的地まで移動する。
予約してから10分以内に利用がなければ、キャンセル扱いになるので注意。
(5)鍵をあける。
トイレの前に来たら、画面下の「鍵をあけるボタン」で解錠する。
なお、予約が入っていない場合は、通常通りのトイレとして使用できるとのことだ。

腹痛の際など、急いでいる時にトイレが確保できるのは安心感があることだろう。
しかし、そもそもなぜこの技術を開発したのだろうか? 実際の反響は? 株式会社Duchampの佐藤卓哉代表取締役CEOに話を聞いた。

CEOの体験を元に開発
ーー「予約制トイレQREA」の開発に至った経緯は?
私の『トイレを確実に利用できる保証がなく不安』という原体験をきっかけに開発されたサービスです。
私は過敏性腸症候群(IBS)という病気を患っており、突発的な下痢に悩まされてきました。患者会のオフ会で出会った参加者からも同じ悩みを聞き取り、全国には1200万人もの方が同じ病気で悩んでいることを知り、助けになりたいと思いサービス開発を決意しました。

ーーこだわりの部分は?
LINE公式アカウントを使用した点です。
これにより新たにアプリをインストールする手間がかからず、慣れ親しんだLINEの「友だち追加」から簡単にQREAを登録できます。また、予約する際もLINEの対話形式で進んでいきます。初めて利用する方にとって分かりやすい設計を心がけました。
ーー開発で苦労した点は?
デバイスの製造会社様が見つからなかった点です。スタートアップという事もあり、資金も潤沢になければ納期も短く、なかなか成約までたどり着けず10社ほど連絡した記憶があります。
結局、福岡・飯塚市にあるタカハ機工様に製造を担当していただき、今回の実証実験へとこぎつけることができました。

正式リリースでは“いたずら対策”も
ーー予約できる距離に制限があったりするの?
本実験においては、正直なところ、どれだけ離れていても予約ができます。
正式にリリースする際は、“ユーザーの位置情報を取得し、3~10キロ以内の方のみ予約可能”といったシステムを考えています。
ーーいたずらへの対策はある?
本実験においてはございません。正式にリリースする際は、予約時間に応じて料金が加算される仕組みを導入しますので、いたずらで予約すればするほど、お金のかかる設計となります。
ーー今回の実験の目的は?
日本初のトイレ予約サービスが、私のようなお腹の弱い方にとって最適なソリューションとして実際に受け入れられるのか、を中心に実験を行なっていきます。

実験では様々な人が利用
ーー現在の反響は?
とても盛況です。
過敏性腸症候群(IBS)患者以外にも、
・ジョイナス地下2階(予約制トイレがある階)で食事後、そのままトイレを予約して利用する方。
・お子さまのトイレ需要に合わせて予約してトイレへ直行された方。
・ジョイナス1階のトイレに行列が出来ていたので、地下2階トイレを予約し待つことなく利用された方。
など、様々な方にご利用頂けている状況です。

「予約制トイレQREA」は、開発者の佐藤CEOが自分の病気の体験から、同じ悩みを持つ人が少しでも外の世界を安心して過ごせるようにと作られた技術だった。
今後どうなるのかは「今のところ未定でございます」とのことで、実証実験の結果次第ということのようだ。
なお、現状では病気の人だけでなく、急なお子さんのトイレ対応にも使われているよう。またトイレ待ちの行列は密になりやすい。並ばずにトイレを利用できるこのサービスは、新型コロナウイルスの感染予防の観点からも需要がありそうだ。
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