あらゆるしがらみから解放され、一息ついてリラックスできる空間、トイレ。

世界各国の珍しいデザインの便器が集められた日本自動車博物館(石川・小松市)のトイレや、壁一面にピラミッドやスフィンクスが描かれたエジプトをモチーフにしたドン・キホーテ(東京・中野店)のトイレなど、ツイッター上では最近、なにかと「トイレ」が話題となっている。

そんな中、新たな“ビックリおもしろトイレ”が報告された。
今度は一般家庭のトイレだというが、先述のトイレたちに負けない、歴史を感じる内装だ。それがこちら!

継続が生み出した“異空間”

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便器の背面スペースとその左手の出窓部分を埋めるように高く積み上げられた筒状の物体…そう、「トイレットペーパーの芯」だ。
無数の空洞に出迎えられる様は若干の恐怖も感じるが、隙間なく配列された美しさは圧巻である。

インテリアとして絵画や小物を飾ったり、暇つぶし用に本を置いている人はいるが、ゴミとして捨ててしまうトイレットペーパーの芯を保管している光景は、なかなか見られるものではない。

こちらのトイレの所有者である戌一(@inu1dog1)さんによると、トイレットペーパーの芯の収集を始めてから、すでに10年以上が経過しているという。
そして、芯を置ける場所がなくなりそうになった2018年の晩夏、ある出会いがあった。

「エリエール」と書かれた古参の芯は、変色していて年月を感じる。

それは、今まで集めてきた芯よりも一回りサイズの小さい芯の発見!
別の銘柄の芯が、積み上げた芯の中にすっぽり収まることに気が付いた戌一さんは、「私の新たな10年が始まろうとしている」と意気込みを新たにしている。

ちなみに、工業製品の規格を統一しているJIS(日本工業規格)によると、トイレットペーパーの芯は「内径が38mm(許容差 ±1)」と規定されている。
戌一さんが今回購入したトイレットペーパーの芯は、これまでのものより1mm小さかったのかもしれない。



「蜂の巣の中にいるみたい!」「これこそ“芯に迫る”ですね」「芯(進)化系アート」など、投稿は大きな反響を呼び、24万を超える“いいね”がついた(9月4日現在)。

しかし、一体なぜトイレットペーパーの芯をトイレ内に飾っているのだろうか? 数えるのも疲れそうだが、何個あるのだろう?
美術家として、商品デザインやイベント企画運営をしている投稿者の戌一さんに、気になることを聞いてみた。

芯は「生きてきた証」

ーートイレットペーパーの芯を積み上げているのはなぜ?

インテリアに関して「あるべき場所にあるべき物を整然と配置する」というコンセプトがあり、それに従った結果です。
また「働く→稼ぐ→食べる→出す」という生命の営みにおいて、最後に残った結晶と捉えることもできるんじゃないかという思いもありました。
今まで生きてきた証というか。


ーー今回、別の銘柄を購入した理由は?

ガタガタになるのが嫌で、ずっと同じ銘柄のトイレットペーパーを使っていました。
ところが、たまたまいつも購入している店が閉まっていたので、泣く泣くコンビニで別の商品を購入したら、今回の出逢いに繋がったという流れです。

ーー新しい芯に出会わなければ、収集を断念するつもりだった?

いいえ。手前に棚を作って、二重構造にするつもりでおりました。
今は狭くならなくてよかったと心底安堵しております。集めた芯の数は、1000本近くあると思います。

集めて7~8年頃の様子。まだ出窓部分まで進出していない(2016年12月8日投稿)

家族はどう思ってる? 他にも収集しているモノが…

ーーたくさんの芯に囲まれることで生じる効果(防音・芳香など)やストレスはある?

特に何の効果も感じません。
マイナスな意見としてよく聞かれるのは「集合体恐怖症の私にはかなりきつい」というものですかね。今後は閲覧注意表記が必要かもしれません。
また「虫が住み着いてそう」とおっしゃる方もいますが、奥の壁が丸見えなので、隠れることは不可能だと思います。
実際この十年、家の中で不快害虫の被害はありません。ホコリが溜まることもありますが、簡単に取れます。


ーー家族はこのチャレンジを応援してくれた?

当初はかなり嫌がっておりましたが、次第に私の姿勢に理解を示すようになり、自分が紙を使い切った後なんかは、そっと芯をトイレタンクの上に置いてくれるようにすらなりました。


実は、戌一さんはトイレットペーパーの芯の他にも焼き鳥の串、アイスの棒、豆腐のパックなども収集しているという。
なぜ不要になったものを取っておくのだろうか?


ーー戌一さんにとって「集める」とは?

記録というか、記念というか、感謝というか。
もし我々が人間より強くて賢い生き物に捕食される場合、どうせなら残さず食べてもらって、その痕跡(最期に自分の肉が刺されていた串や、肉が乗っていた器)を祀ってもらいたいと思うので、私もそのようにしております。
そしてもちろん、衛生面には細心の注意を払っております。

左:焼き鳥の串とアイスの棒  右:豆腐のパック

また、接着剤を使用せず積み上げているトイレットペーパーの芯は崩れやすそうに見えるが、「震度5ぐらいでは全く問題ありませんでした。そもそも軽い物なので、崩れてきても危険性はありません。再建もただもう一度積み上げるだけですし」ということだった。

今後の目標については、10年後は「トイレットペーパーの芯を20年間集め続けたアラフィフ」、さらに10年後は「人生の半分を費やしトイレットペーパーの芯を集め続けた還暦」としている。
まずは、一回り小さい芯の「新たな10年」。家族の協力を得ながら、その収集癖にさらなる磨きをかけてほしい。