中国山地の山あいを縫うように走るローカル線で人気を集めた観光列車「奥出雲おろち号」が、2023年11月に運行を終了した。惜しまれながらの引退となったが、実は列車をけん引した機関車はまだまだ現役。山陰の鉄道を支える“裏方”として働き続けている。

メディア初公開の“動く旧おろち号”

2023年11月、車両の老朽化に伴い26年の歴史に幕を下したJR木次線のトロッコ列車「奥出雲おろち号」。2024年4月7日からは、山陰本線を中心に運行する観光列車「あめつち」が木次線に新たに乗り入れる。

2023年運行を終了した「奥出雲おろち号」
2023年運行を終了した「奥出雲おろち号」
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木次線の観光列車として役目を終えた「おろち号」だが、実は新たな任務を与えられ、ある場所で働き続けていた。

TSKさんいん中央テレビの安部大地記者が訪れたのは、鳥取・米子市のJR米子駅構内に隣接する後藤総合車両所の運用検修センター。引退した「奥出雲おろち号」の機関車がここで働いているということで、いざ潜入。

ラストランから4カ月余りたったが、JR西日本の担当者によると、運行終了後に機関車が動く姿をテレビ局が撮影するのは初めてだということで、安部記者も興奮気味だ。今回は点検などのため、車両所の構内を移動する姿を撮影できることになった。

待つこと10分余り、ついにその時が来た!

“運行当時のまま”の姿を見せた「おろち号」
“運行当時のまま”の姿を見せた「おろち号」

ヘッドライトを光らせ、青と白を基調にした「おろち号」カラーの機関車が姿を見せてくれた。ヘッドマークこそ取り外されたものの、カラーリングなどの外観はほぼ運行当時のままだ。

「おろち号」を何度か取材した安部記者、当時のままの姿の機関車と再会を果たし、「力強い走行音を響かせながら間近で走る姿を久々に見ることができて感激です」と声を上げた。

約四半世紀を経て“元の職場”に

連結されていた2両の客車は運行終了後に廃車になったそうだが、青い機関車は今も健在でバリバリの現役だった。ただ、客を乗せることはなく、今は別の任務に就いているそうだ。

JR西日本後藤総合車両所運用検修センター・下田泰樹さん:
構内での車両入れ替えや、回送車両の作業に使用しています。

DE10形と呼ばれるこの機関車は、国鉄時代の1972年に製造。1998年に改装され、「奥出雲おろち号」の機関車としてデビューしたが、それ以前は、実は回送列車のけん引などを担う事業用車両として使われていた。約四半世紀を経て、元の職場に戻ったともいえる。

JR西日本の下田さんは「今までも、『おろち号』のけん引機関車として活躍してきたが、これからも安全・安定輸送に貢献できるように、引き続きメンテナンスをして車両を維持したい」と話し、もうしばらく、活躍の場が与えられることになりそうだ。

木次線の「主役」として、26年にわたって脚光を浴びてきた「おろち号」の機関車。現役さながらの姿を保ちながら、“縁の下の力持ち”として山陰の鉄道を支え続ける。

(TSKさんいん中央テレビ)

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TSKさんいん中央テレビ
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