2026年度から導入される「子ども・子育て支援金」と75歳以上の医療保険料増で、高齢者の金銭負担が増加することに怒りや不安の声が上がっている。
年5400円以上負担となる現役世代からも、さまざまな意見が聞かれた。

負担増に「ちょっとやばいです」

高齢者への金銭面での負担が増えそうだ。
子育て支援金は350円、75歳以上の医療保険料が平均507円アップする。
このような相次ぐ負担の増額に、怒りの声が上がっている。

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2026年度からスタートする「子ども・子育て支援金」制度。
2028年度では後期高齢者の負担額が、月々350円・年間4200円となる。

入浴料金が520円の東京・大田区にある「天然温泉NU-LAND」でインタビューした。

87歳の女性は、「えー!月々払うの?350円!?年に1回ならいいけど、ちょっとやばいです」とコメント。

80代の別の女性は「政治家は自分たちが肥やして何千万という形で取ってますよね。年金が6万円くらいだったのが5万いくら、そこにまた取られるのはだめ」と話した。

89歳の男性に「350円何に使っているか?」と質問すると、「ビールだね」と答え、「1杯分を節約しなければならない?」と聞くと、「そういうことだよね。大変なことだよ」と返した。

また、81歳の男性は「子育て支援やる必要ない。子どもが不足しているからとか言っても、そんな政策じゃ子どもを作らない」と話していた。

「生活が厳しくなる」という声が多く聞かれた一方、74歳の男性は「少子化の問題を考えたら、ある程度仕方がない」とコメント。
「ジュース月々3本は我慢しないと?」と聞くと、「自分の身になってみると厳しい。銭湯1回は我慢しなくては」と答えた。

 

一方、月々平均で450円以上、年間で5400円以上の負担になることについて、現役世代にも聞いた。

20歳の男性は「昼飯をちょっと抑えれば払える額だと思うので、許容範囲だと思う。500円ぐらい。700円ぐらい」とコメント。

50代の男性は「高いとは思わない。たばこ我慢するぐらいの気持ちで」と話した。

30代の女性は「2人子どもいるんですけど、すごくありがたいなと、いつも思っています。低所得者の若者にも還元されるなら、そういうありかたもいいかと思います」と話している。

20代の男性は「ことし結婚する自分にとってはうれしい。負担した分、何かで返ってくるのであれば全然いい」とコメントしている。

また、反対意見もあった。

30代の男性は「子育てしている世代もしてない世代も『450円ちょうだいね』って回るのは筋が違う。替え玉1杯無料の店に行ってきたんですよ。替え玉1杯無料になるために1駅歩いたので、その労力っていうのを国会の方々が考えているのかってすごく思います」と話した。

医療保険料負担もジワジワ増加

さらに、75歳以上の後期高齢者が支払う医療保険料の負担もジワジワと増加している。
2024年度の上昇率の見込みは、2008年度以降で最も高い伸びとなったことが、厚生労働省の発表でわかった。

2024年度は、2023年度の6575円から507円増えて、7082円となる見込みだ。

2025年度には、さらに110円増えて7192円となる。

物価高の中、節約が難しい医療費の値上がりに、高齢者からは憤りの声が上がった。

83歳の女性は「歯医者さんに通ったり、ひざの整形に通ったり、いろいろしなきゃいけないんだけど」と話す。「今でもギリギリ?」と聞くと、「そうですね、なんとか病院に行く費用だけは残して」と答えた。

81歳の男性は「薬もらうって言っても薬だってタダじゃないから、高いでしょ。薬なんかもらうんだったら、早く死んだ方がいいよ」とコメントした。

後期高齢者の医療費の負担が増え続けている背景にあるのは、膨らみ続ける医療費に対し、現役世代の負担を減らすことだ。

その現役世代からは、さまざまな意見が聞かれた。

20代の男性は、「実際、今の若者の方が昔の人よりも、結構いろいろ税金とか払ってるので、それは致し方ないと思う」とコメント。

30代の女性は、「世帯によるとは思うんですけど、自分の両親だったり、祖父母って思うとそんなに負担を感じている様子は見受けられないので、そういうあり方もいいのかなと思います」と話した。

都道府県別に見ると、最も高いのは東京都の9180円。
一方、最も低いのは秋田県の4397円と、2倍もの開きがあった。

後期高齢者の医療保険料は収入が増えると負担率も上がるため、所得水準が高めの都市部では負担額も増える傾向にあるという。

定年後も働き続ける人が多くなっている中で、こうした所得制限に不満を持っている高齢者もいた。

76歳の男性は「3月まではね(仕事を)やってたんですよ。体の不調を来してね、4月から失職になりましたんで。年金13万だから、やっぱり10万近くは稼がないとやっていけないですね」と話した。

71歳の女性は「働けるうちは働いた方が良いんじゃない。自分が仕事できるうちは仕事して」とコメントした。

ただし、公的年金にも一定の所得がある人の給付を減らす制度がある。

2023年度の場合は、厚生年金を含む収入が月48万円を超えると支給額が半分に減ったり、全額カットされるケースもあった。

医療保険料が平均7.7%上がる

はたして、高齢者の負担はどこまで増えるのだろうか。

後期高齢者の方に、2つのお金の不安が押し寄せている形だ。

高齢者への負担増は、われわれのような下の世代・現役世代の負担緩和につながるということなのだが、困惑の声も聞かれる。

あらためて、後期高齢者の負担はどのくらい増えるのか。2つのお金の不安を見ていく。

不安の1つ目は、今回創設される「子ども・子育て支援金」だ。
国民1人あたりの平均負担額は月450円。75歳以上の後期高齢者の方は、平均的な所得の場合は月350円となる。
単純計算で、年間4200円負担が増える計算だ。

政府はこの制度によって、子育て支援の予算「1兆円」を確保するとしていて、「賃上げを考えると実質的な負担はない」としている。

不安の2つ目は、今の保険制度が始まって以来、最も高い伸び率の、75歳以上の後期高齢者の「医療保険料」。
これは都道府県によって異なるが、全国平均で7.7%上がる見込み。   

2024年度は月6575円、2024年度(見込み)は7082円と507円アップする。
1年で年間6000円を超える負担増となる見込みだ。

「子育て支援金制度」で約4000円、「保険料」で約6000円。
単純計算ではあるが、この2つで、後期高齢者の負担は「年間で約1万円上がる」計算になる。

“超高齢化社会”を迎え、さまざまな負担が増えるのは避けられない問題だが、負担増を求めるときに必要なのは国に対する信頼だ。

昨今の政治資金の問題などを見ていると、本当にお金を取るべきところ、支払わなくてもよい支出があるのではと思われる。

経済ジャーナリストの荻原博子さんは「金銭的な負担が増えるのであれば、国として『在宅介護』など高齢者が安心して暮らしていけるサービスを充実させていく必要がある」と指摘している。
(「イット!」 4月2日放送より)

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