能登半島地震から3カ月。被災地では自衛隊の“入浴支援”が続いている。2週間ぶりにお風呂に入ったという人も珍しくない。利用者から寄せられたメッセージからは、先が見えない避難生活の現状が伝わってくる。

いまも続く被災地の“入浴支援”

入浴施設のテントに入る被災者(提供:目達原駐屯地)
入浴施設のテントに入る被災者(提供:目達原駐屯地)
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佐賀・吉野ヶ里町の陸上自衛隊目達原駐屯地は、能登半島地震の被災地に車両と隊員を派遣し、1月9日から石川・能登町で入浴支援を始めた。

派遣されたのは、のべ約370人。現在、第6陣が支援を続けている(2024年3月31日時点)。

帰還した第4陣(2024年3月8日)
帰還した第4陣(2024年3月8日)

任務を終え3月8日に佐賀に戻ってきた第4陣。隊長をはじめ、第1陣から約2カ月間、被災地で活動を続けた隊員もいる。

実際に派遣された隊員に入浴支援の現状をきいた。

“川の水”を沸かして湯を張る

風呂の水はどこから調達するのか。
実は、近くの川からポンプでくみ上げて調達している。

川からくみ上げた水は濁っていて、そのままでは使えない。このため、自前の浄水器できれいな水にするのだ。

入浴施設1箇所あたり1日に約50トン。この水をボイラーで沸かして浴槽にお湯を張るという大変な作業だ。

入浴施設の受け付けは午後1時から9時。
被災地に設置した入浴施設にはシャワーが5本、浴槽が1つ。

入浴施設のテントに続々と人が入り、久しぶりの“お風呂”で疲れを癒やす姿が印象的だったと自衛隊員は語る。

荒嶋泰輔 3等陸曹:
お風呂から上がったときに『気持ちよかったよ、ありがとう』と言ってもらえて大変うれしかった

機材トラブルも…綱渡りの支援

機材の故障に対処する自衛隊員
機材の故障に対処する自衛隊員

しかし現地では想定外のトラブルもあったという。

久野英次 2等陸佐:
機材が故障する場面が結構あった。受付開始の1~2時間前にお湯を張る。お湯を張る時点で温度が上がりきらない。支援開始まで短時間の勝負だった

壊れた機材は部隊で直し、湯を沸かせない事態は何とか回避できたが、「支援は綱渡りのようだった」と隊員は語る。

「生きる力を与えてくれる」

入浴施設の利用者が書き込めるノート
入浴施設の利用者が書き込めるノート

入浴施設のテントには、利用した人が書きこめるノートが置いてある。
そこには次のようなメッセージがあった。

利用者のメッセージ:
14日ぶりのお風呂です。見通しの立たない日々ですが生きる力を与えてくれる入浴です。ありがとうございます

入浴施設には被災者の希望に応え、ドライヤーも設置した。

久野英次 2等陸佐:
みなさん本当に風呂を楽しみにしていて、帰るときに『ありがとう、また来るよ』と。しっかりとした支援をしないといけないなと感じた

小学生から花をプレゼントされた自衛隊員
小学生から花をプレゼントされた自衛隊員

支援活動中には、心温まる出来事もあったと自衛隊員は語る。

荒嶋泰輔 3等陸曹:
バレンタインの日に小学生が地元の花屋から花をもらったらしく、その花を『ありがとう』と持ってきてくれて一人一輪ずつ渡してくれたのがとてもうれしかった。もらった花をわざわざ僕たちにくれるという優しさに感激した

「復興は進んでいない」

陸上自衛隊目達原駐屯地が設置した“お風呂”を利用した被災者は約6万9000人にのぼる(3月31日時点)。
お風呂に毎日入ることができる“ふつうの生活”はまだ戻ってきていない。

久野英次 2等陸佐:
私の感覚では(復旧は)ちょっとまだ進んでいないんじゃないかという印象。被災者に少しでも入浴でリラックスしてもらうとともに復興が少しでも早く進むよう祈るしかないなと

地震発生から3カ月を過ぎても入浴支援は続いている。

(サガテレビ)

サガテレビ
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