「フレイル」という言葉をよく聞く。これは「介護が必要となる」一歩手前の状態を指す。
「フレイル」であることに早めに気付くことで、要介護に陥らない対策を講じることができるという。広島市ではデジタル技術を活用して、「フレイル」予防に取り組んでいる。

3Dセンサーで歩く姿勢から「歩行年齢」を判定

広島市で健康づくりに取り組む人たちが、市が新たに導入した「歩行姿勢測定システム」を試しに集まった。

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これは、3Dセンサーに向かって、たった6メートル歩くだけで「歩く速さ」や「歩幅」、「足の上がる角度」など36項目を測定し、年齢と性別に応じて「歩行年齢」を判定するもの。

さらに、およそ30の簡単な質問に答えると、運動や栄養、口腔といった体の状態と、外出意欲や認知機能といった心の状態も判定。歩行年齢と心身の健康状態の判定を踏まえ、理学療法士などの専門家がひとりひとりにアドバイスをする。

参加者A:
背中が曲がっているから、まっすぐ歩けてないと思っていたけど、これで見たら軸はまっすぐだと分かりました

参加者B:
自分では元気だと思っていますが、歩いてみると揺れてることがわかります。

65歳の大ベテラン記者の判定は?

大切なのは「今の自分の状態」に気付くことだ。大ベテランの取材スタッフも体験させてもらった。40年以上、取材現場を走り回ってきた浜田英一郎記者 65歳。

果たして歩行年齢は?
浜田英一郎記者:
どんな感じなんですか?67歳だって。

歩行年齢は、総合評価でおおむね年相応の67歳。姿勢は良いものの、体幹の揺れなどで、バランス年齢は8歳オーバーの73歳という判定。

専門家:
いわゆるガニ股気味になっている。つま先が上がりにくいと、将来、引っ掛かって転んだりしやすいってことですね。そういうところを意識するともっと良くなります。

浜田記者(左) 専門家(右)
浜田記者(左) 専門家(右)

広島市はフレイル予防には、判定を本人にフィードバックするだけでは不十分だと考えた。さらに踏み込んだ対策として、理学療法士など様々な分野の専門家に集まってもらい、バランス力を高め、転びにくい体作りを目指す、ストレッチを中心とした新たな体操を考案。その名は「ひろしま☆しゃんしゃんバランス体操」

バランス力を高め、転びにくい体をつくる体操

体操の考案に関わった理学療法士・麻野佑樹さんにポイントを教えてもらった。
太田整形外科 理学療法士・麻野佑樹さん:
この体操は手を横に伸ばし易くなる体操。①片足を上げて②逆側の手を横に伸ばす。左右交互に足を入れ替えて手を横に伸ばす。

太田整形外科 理学療法士・麻野佑樹さん:
次は、横に足を踏み出す体操。足腰を強くする効果がある。背もたれを持って横に大きく踏み込んで膝を曲げていく。この時に深く沈み込んで、こけないように注意。

太田整形外科 理学療法士・麻野佑樹さん:
要介護等の前段階がフレイルなので、そこに陥らないようにすることが重要になってくると思います。寝たきりにならずに元気に食事ができて、楽しいことを、自分の好きなことができる、そういった生活をいつまでも長く続けていただきたい

加藤雅也アナウンサー:
このフレイル、要介護となる一歩手前で、早めに気づくことで、健康寿命も延びますし、そうすると、社会参加という意味でも、いろんな方がまだまだ活躍できるっていう安心感もありますよね

加藤雅也アナウンサー
加藤雅也アナウンサー

コメンテーター 叡啓大学・保井俊之教授(財務省・金融庁出身 地域活性化などが専門):
病気になる前に自分の体の状態を客観的に把握する。そこにテクノロジーを使えるということで、これを一生懸命やっていくと、皆さんも幸せになって、社会参加する道がどんどん広がっていくように思いますね

叡啓大学 保井俊之教授
叡啓大学 保井俊之教授

デジタル技術の発達で、自分では気づきにくい体の変調を予め知ることができるようになった。「転ばぬ先の杖」ではないが、ある程度の年齢になったら、このような技術で「フレイル」を予知し、要介護になることを防ぐ手立てがあるということを認識しておきたい。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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