2007年にミャンマーで銃撃され死亡した愛媛・今治市出身のジャーナリスト長井健司さんのビデオカメラが遺族に返還されてから、まもなく1年がたつ。
「兄の死の真相に少しでも近づきたい」映像データの解析を進める長井さんの妹に今の思いを聞いた。

亡くなる直前に撮影された映像

2007年9月、今治出身のジャーナリストの長井健司さんは、ミャンマーの最大都市ヤンゴンで、民主化を訴える現地の人々を取材中、ミャンマー軍の兵士に銃撃され死亡した。

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長井健司さんが亡くなる直前に撮影した映像には、仏塔の前に市民が集結している様子や、重装備した軍隊のトラックが到着する瞬間が記録されていた。

2007年9月長井健司さんの撮影映像
「仏塔の前には皆さんこうして市民が集結しています。重装備した軍隊のトラックが到着しました」

撮影から15年…妹の手にカメラが

長井さんは今治西高校を卒業後、東京の大学に進学。そして東京のテレビ局で報道ディレクター業務についた。

その後、フリージャーナリストに転身し、東京の映像プロダクションAPF通信社の契約記者として活動。イラク戦争など世界各国の紛争地で現地取材し、戦争のリアルな情勢を撮り続けた。

撮影から15年あまり。現場から持ち去られていたビデオカメラは、2023年4月にミャンマーのジャーナリストによって、妹の小川典子さんら遺族のもとに返された。

長井さんの妹・小川典子さん:
データについては詳細に調査して兄の伝えたかったこと、死んだ原因の真実を明らかにしたいと思います。

返還から1年 長井さんの遺志と思い

長井さんのカメラが返還されてから2024年4月で1年になる。妹の小川さんに今の心境などを聞いた。

長井さんの妹・小川典子さん:
一区切り、返ってきたということで新たに気持ちを入れ直して、兄のために活動していきたいという気持ちを入れ替えることができたような1年だったと思います。

小川さんは2023年5月、警視庁の科学捜査研究所などにカメラとビデオテープの解析を依頼した。しかし約8カ月に渡るデータ解析でも銃撃の犯人特定に結びつくような証拠は見つかなかった。

長井さんの妹・小川典子さん:
やはり遺族として、兄が残したものを見たかったです。残念極まりない。

ただ、長井さんが所属していたAPF通信社は、他に見つかっていないテープもあるとみていて、小川さんは引き続き兄の死の真相解明に努めたいと話している。

長井さんの妹・小川典子さん:
数々の惨劇、惨状を映しているものが入っているでしょうから、証言もありますし、(ミャンマー)軍の中の緩みとかが原因となってたまたま(カメラが)出てきた可能性もあるので。(現在)軍の中が乱れて、統率取れてない状態になりつつある」というのを聞きますから、そういうことでまた(新たな証拠が)発見されればと。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻。
ガザ地区で続くイスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘。
長井さんが亡くなったあとも世界各地で紛争は続いている。

「坊や、戻ろう」

カメラ返還から1年。
死の直前まで少年を助けようとしたとみられる長井さんの遺志を受け、遺族は「最後まであきらない」と語る。

長井さんの妹・小川典子さん:
(兄は)亡くなってしまいましたけれど、私が話すことで、ミャンマーに少しでも関心が向けられて、ミャンマーの人たちのためにも、民主化のお手伝いになれるかなと思っております。(兄は)「ずっと見離さずに、ミャンマーのことを関心を持って、目を向けてほしい」と言い続けていると思います。

小川さんは、現在、長井さんの仕事仲間を通じて、テープを製造した企業の研究機関に解析を進めてもらっているということだ。

(撮影:長井健司)
(提供:APFNEWS)
(テレビ愛媛)

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