高度経済成長期に続々と誕生し、日本人の“憧れ”となった団地。団地の誕生とともに、その歴史を見守ってきたひとつの設備が、新たな時代の訪れとともに役目を終えようとしている。

マンモス団地には欠かせない給水設備

福岡市早良区の「星の原団地」は、高度経済成長期の1972年に誕生した、いわゆる“マンモス団地”。

この記事の画像(7枚)

建てられた当初から団地の中心部にそびえ立ち、住民の生活を見守り、支えてきたのが「給水塔」だ。

給水塔は、建物より高い位置に水を貯め、高低差を利用した水圧で各家庭に水を届ける仕組みになっていて、昭和の大規模な団地には欠かせない設備だった。

「星の原団地」の給水塔は特徴的なデザイン
「星の原団地」の給水塔は特徴的なデザイン

「星の原団地」の給水塔は、高さ約41メートル、カラフルな色に塗られ、特徴的なデザインが目を引く。

団地に住んで45年の女性:
給水塔に時計があって、子どもは時計を見て帰ってくる。夏休みなんか「門限5時よ」って言って「あれを見て帰ってきなさいよ」って、いつも言ってた

水道管工事が完了 給水塔は不要に

住民の思い出とともにある給水塔。しかし、水道管から各家庭に直接水を供給できる仕組みが整ったことで、役目を終えた給水塔は解体されることになったのだ。

UR都市機構九州支社 環境整備課・中津彰太さん:
水道の「直結増圧化」と言いまして、星の原団地でもその工事が完了した。給水塔はもう使われなくなった施設ということで、維持管理と土地の有効活用という観点から、今回、解体という運びになっております

解体を聞いた団地の人からは「そうなんだ…さみしいですね」「これがあるから“団地”って感じよね」との声があったが、「しょうがない。高くて地震があったときに危ないから」と理解を示す声も聞かれた。

多世代が利用しやすい施設に

水を供給するという本来の役割だけでなく、団地のシンボルとして、実に半世紀にわたり地域を見守ってきた給水塔。

解体作業は5月から本格的に始まる予定で、団地を管理するUR都市機構によると、跡地一帯はさまざまな世代の住人が交流できる広場として整備するという。

高齢化が進んでいる現状。高齢者が使いやすい団地というのはもちろん、若い世代にも団地を使ってもらうために、UR都市機構九州支社・環境整備課の中津さんは「多世代が利用しやすい施設をこれから作っていけたら」と話す。

特徴的な形やデザインで団地の象徴のような存在でもある給水塔。高度成長期の名残をしのばせる“雄姿”だが、近年ではポンプの性能が上がったこともあり、全国各地でその姿を消しつつある。昭和がまた遠くなる。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。