3月16日、北陸新幹線の金沢―敦賀間が延伸開業。長野から福井までは最短1時間30分ほどで結ばれる。注目するのは、福井県民が愛するソースかつ丼。ソースかつ丼は長野や群馬、福島でも、地域の名物になっている。味や歴史を掘り下げてみた。
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福井の「ソースかつ丼」の特徴は
福井県民におすすめのご当地グルメを聞くと、多くの県民が「ソースかつ丼」を挙げた。
そこで、評判の「ヨーロッパ軒」に行ってみることに。
向かったのは日本海に面した敦賀市。

駅は当面、北陸新幹線の終着駅となる。
市街地に建つ、ちょっとレトロなビル。
「敦賀ヨーロッパ軒本店」。

ソースかつ丼は3枚のカツが乗っていてかなりのボリューム。
県内外から客が訪れていた。
東京在住で地元出身の客は、「この味が懐かしくて。東京だと卵が入ったりとかするでしょ。だからあれはトンカツではないかと思った、最初はね」と、満足げに頬ばっていた。

地元では豚カツではなくミンチカツを乗せた「パリ丼」も人気。
地元市民は、「うちはこれ一番やと思っとるし、銀座に出しても負けんくらいやと思っとるよ」と、誇らしげにお国自慢。
3代目の赤坂敬造社長が作っている様子を見せてくれた。
肉はやや薄目にカットした豚ロース。小麦粉、卵、きめ細かいパン粉をつけてラードを溶かした油へ。

味の決め手は長く継ぎ足しで使われてきたソース。ご飯にもかけておく。
赤坂社長は、「ウスターソースにいろいろ調味料を入れて、それを継ぎ足しで、創業84年たつが、ずっと継ぎ足し継ぎ足しでやっている」と、説明してくれた。

揚がった「かつ」をくぐらせ、ご飯に乗せたら完成。
赤坂社長は、「県外に出たお客さんは懐かしいといって食べてくれるし、たまに会う客にも『1週間に1回ぐらい食べないと』と言われる時もあるので、うれしい。歴史があるので100年目指して頑張っていきたい」と話す。

ヨーロッパ軒 ソースかつ丼の歴史
敦賀ヨーロッパ軒。店のルーツは1913(大正2)年までさかのぼる。
福井出身の高畠増太郎さんが東京でヨーロッパ軒を創業。
ソースかつ丼を出すようになったとされている。

その後、店は関東大震災を機に福井に移転した。
赤坂社長は、「初代の高畠増太郎さんが、ドイツとかに船に乗っていって、そこでいろんなことを学んで、カツレツが向こうでは主流でそれを日本風にアレンジしてかつ丼にした」と、経緯を語る。

1939年・昭和14年、弟子の赤坂耕二さんが「のれん分け」を許され、敦賀に「分店」を開き後に「敦賀ヨーロッパ軒本店」と称するまで発展。
現在、福井県内には総本店を含め19店舗のヨーロッパ軒がある。
赤坂社長は、「東京の客とか、長野とかすごく近くなったので、来てもらったら一番いいですし、かつ丼以外にもパリ丼というのがあって、ミンチカツですけど、地元ではすごい人気があるので、それもできれば食べてほしい」と、新幹線延伸により、多くの客が訪れることを期待している。

信州のソースかつ丼の特徴は
一方、ソースかつ丼は信州にもー。
駒ヶ根市に本店を置く「明治亭」。
厚い肉とご飯の上のキャベツが特徴。
ロース肉を180度の油で7分近く揚げてー。
トマトや果物を使った特製ソースに浸す。ご飯の上にたっぷりと千切りキャベツを盛り、肉を乗せれば完成。

客は、「月に1度は来る。キャベツも山盛りだし、これがいい、肉も柔らかい」、「すごく肉厚でキャベツもシャキシャキしていてソースも相まってすごくおいしい」と、地元で長く愛されている。

明治亭 ソースかつ丼の歴史
駒ヶ根で名物になったソースかつ丼。
その始まりについて、明治亭の片田秀昭社長は、「昭和の初期というふうには聞いているが誰がというとわからない。カツレツをひとつの料理としてキャベツと合わせて提供したのは東京の『煉瓦亭』が一番最初。そこから影響を受けたものが、駒ヶ根に来たらどんぶりの上に乗ってしまったと思う」と、都内の洋食店で提供された料理に着想を得たのではないかという。

1993年には地元の飲食店が「駒ヶ根ソースかつ丼会」を結成。PRにも力を入れてきた。
新幹線延伸による交流人口の増加に期待が高まる。
片田社長は、「長野県に来ることが便利になった、近くなったことは間違いないので、もう一歩足を延ばせば駒ヶ根もいけるぞということは、きっとあるかと思うので楽しみにしている」と、駒ヶ根のソースかつ丼を多くの人に知ってもらい、食べてもらいたいとしている。
ソースかつ丼は福井、長野の他に群馬県桐生市、福島県会津若松市でも名物になっている。発祥はさまざまだが、洋食の影響を受けたものと考えられ、今回の取材では福井のヨーロッパ軒が最も長い歴史があった。

“自信とプライド”
ところで、敦賀ヨーロッパ軒の赤坂社長も、明治亭の片田社長もやはり気になるようでそれぞれのソースかつ丼を食べたことがあるそう。
敦賀ヨーロッパ軒の赤坂社長は、「おいしかったですよ。こっちと違った味ですし、キャベツのっていて。ちょっとキャベツが食べづらいなと思って、自分的にはね」。
一方、明治亭の片田社長は、「当然、気になりますので私も何回か。ちょっと僕らの思ったソースかつ丼は違う。ヨーロッパ軒は和風なあっさり系でどちらかと言えばわれわれの方が洋風かな」と話す。
にじみ出る、それぞれのソースかつ丼に対する自信とプライド。
新幹線延伸を機に自慢のソースかつ丼を食べ比べてみてはいかがだろうか。

(長野放送)