2024年1月、日本の無人探査機「SLIM(スリム)」が世界で5カ国目となる月面着陸を成功させた。この偉業にプロジェクトに協力してきた静岡大学の教授や学生も大きな刺激を受けたようだ。教授の夢は「学生が作った超小型衛星の月面着陸」だ。

世界で5カ国目 月面への着陸成功

成功したH3ロケットの打上げ(JAXA提供)
成功したH3ロケットの打上げ(JAXA提供)
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2月17日に成功したH3ロケットの打ち上げ。

月面着陸に成功した「SLIM」(JAXA提供)
月面着陸に成功した「SLIM」(JAXA提供)

その1カ月ほど前に日本が歴史的な快挙をなしとげたのが、無人探査機「SLIM」の月面着陸成功だ。旧ソ連、アメリカ、中国、インドに続く5カ国目の快挙となった。その後、月面の岩石の撮影に成功するなど、宇宙の解明に向けた研究の前進に期待がかかっている。

静岡大学工学部の能見研究室
静岡大学工学部の能見研究室

静岡県浜松市にある静岡大学工学部の研究室。静岡大学はSLIMの月面着陸の研究に協力していた。研究室では宇宙ゴミの除去や宇宙と地球をつなぐエレベーターの実現に向けた、人工衛星の開発などの研究が行われている。

研究室の学生
研究室の学生

研究室の学生が「モノを測るひも状のメジャーを小型衛星に搭載して、それを宇宙空間で伸展させ、どのような動きをするのか検証する」と研究課題を教えてくれた。

能見公博 教授
能見公博 教授

学生を指導しているのは 能見公博教授。能見教授は研究室での指導について「若い発想でまずやってみたいということもあるので、実験室で実験してうまくいったら次のステップへということが多いですね」と話してくれた。若い世代ならではのアイデアを大切にしているのだ。

小型の人工衛星
小型の人工衛星

能見教授自身も「STARSプロジェクト」として超小型衛星を宇宙空間に打ち上げてきた。また、JAXAの前身である航空宇宙技術研究所の研究員として活動した経験もあり、約20年にわたって携わった月面計画には期待も大きかったと言う。

着陸は大成功だが「逆立ちは失敗」

月面着陸する「SLIM」(JAXA提供)
月面着陸する「SLIM」(JAXA提供)

能見公博教授:
長く付き合っているので、非常にワクワクして楽しみにしていた感じです。日本の得意技を生かしてピンポイント着陸、スリムって結構小型なんです。それで狙ったところにいけたというのは世界最先端技術なので大成功だったと思っています

能見教授
能見教授

今回 静岡大学はSLIMの月面へ着陸についての研究にも協力してきたため、着陸については気になった点があったようだ。

逆立ち着陸した「SLIM」(JAXA提供)
逆立ち着陸した「SLIM」(JAXA提供)

能見教授は「安定した着陸という意味ではうまくいっていない。逆立ちしていましたから」と指摘し「大学はそういう失敗から学んでいくところは得意とするところなので、今回の着地をしっかり解析して、次につなげることもできる」と続けた。

「SLIM」が撮影した月面写真(JAXA提供)
「SLIM」が撮影した月面写真(JAXA提供)

逆立ちのような姿勢で着陸したものの、月面の岩石を撮影することにも成功し、月の地質などの解明に役立てられることになる。そして、能見教授はJAXAが実験を進める月面基地建設に向けて重要なステップになったと話す。

夢は学生が作る超小型衛星の月面着陸

「SLIM」(JAXA提供)
「SLIM」(JAXA提供)

能見公博教授:
今まではとりあえず月に行きたいというだけだったのですが、これからは基地をつくる。家を建てる時は当然 地質調査するじゃないですか。そこも含めて日本は国際的に活躍できていけるのかな

国際的な研究にも大きな意義を持つ今回の着陸だが、大学での超小型衛星にも生かせる部分はあるそうだ。そして研究の成果をやがては月面へと夢は広がっている。

能見教授
能見教授

能見公博教授:
超小型衛星も(最初の打ち上げから)もう14年ほどたっているが、地球の周りでやって習熟した技術を月や火星にもっていきたいと思っています。学生がつくったものが着陸するというのは一つの大きな夢として挑戦したい

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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