3月3日、兵庫・尼崎市で、シンポジウム「高校生と考える保護犬の未来」が開かれた。

このイベントには、動物愛護の活動で知られるタレントの杉本 彩さんが登壇。「命を大量生産する社会」と題した講演で、不幸な動物が少なからず存在している社会について、時に悲痛な面持ちで語った。

■「命を大量生産」する事業者の存在

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「動物環境・福祉協会Eva」という団体の理事長を務める杉本さん。個人での猫の保護活動を始めて35年ほど、団体を立ち上げてからちょうど10年になる。

動物愛護活動の中で杉本さんが直面した、動物を取り巻く社会の現状について、切々と訴えた。

動物環境・福祉協会Eva 理事長 杉本 彩さん:この社会では残念なことに、動物の命を他の商品と同じように、大量生産・大量流通するビジネスが行われています。大量生産すると他のビジネスと同様、不良在庫や売れ残りといった問題が発生します。そんな動物たちが不幸な運命を辿ることは想像に難しくないと思います。

動物環境・福祉協会Eva 理事長 杉本 彩さん:いたるところにペットショップがあり、責任感がなくても簡単に動物を購入できます。お金がなければローンも利用できます。ペットショップは、表面上は温かい雰囲気を演出していても、店のバックヤードには劣悪な環境下に子犬や子猫がいます。中には、過酷な環境によって体力のない子猫などが命を落とすこともあるのです。

犬や猫を大量に繁殖して売る業者の存在。無責任な業者も目立つ。

そんな動物を利用したビジネスに関する話の中で、杉本さんがより語気を強めて語ったのが、ある業者による「動物虐待事件」についてだ。

動物環境・福祉協会Eva 理事長 杉本 彩さん:悪質な繁殖事業者が動物虐待で逮捕され、虐待事件が顕在化しました。動物が暮らすことに適していない場所で犬の繁殖を行っていたのです。施設では小さなケージに数頭の犬が一緒に入れられ、不衛生で非常に劣悪な環境でした。

動物環境・福祉協会Eva 理事長 杉本 彩さん:そこでは獣医師でもないオーナーが自ら、妊娠した犬をひもで縛り、麻酔もせずにお腹を切り開いて子犬を取り出していたのです。

この業者は無免許での帝王切開を行っていたとして立件され、裁判が行われているが、求刑は懲役1年・罰金10万円。杉本さんは「求刑が軽すぎる」「納得がいきません」と訴えた。

■動物を守れるように…法改正に向けて

次期法改正についても話が及んだ。そこで杉本さんは「2025年の動物愛護管理法改正に向けて、多くの要望がある」と話した。具体的な要望の内容は次の通り。

・子どもの動物の販売禁止…全ての動物の販売禁止は実現が容易ではないため、幼齢動物だけでも禁止する

・緊急一時保護制度の創設…早急に救助が必要な場合(例:真夏の車中閉じ込めや飼い主の入院などによる屋内放置)、飼い主の所有権にかかわらず緊急的に一時保護ができるよう制度化

・動物の飼育禁止…動物愛護管理法違反で逮捕・起訴された者に対し、その被害動物の飼育を禁止する(所有権を盾に動物の返還を求めることを防ぐ)

・将来の飼育禁止命令…動物愛護管理法違反の犯罪者に対し、虐待した種の動物の将来における飼養を禁止する

・動物取扱業への規制…一定頭数を超える場合、獣医師を常勤させる。第二種動物取扱業者に登録制を導入

動物環境・福祉協会Eva 理事長 杉本 彩さん:たとえ救助が必要な状況でも、動物を連れ去ると窃盗容疑になるリスクがあり、目の前に苦しんでいる動物がいても何もできません。緊急性がある場合は、一時保護して動物を守れるように法整備してほしいのです。

■「新しい観点からチャレンジしてほしい」と若者に期待

今回このイベントを企画したのは、高校3年生の中村華恋さん。不幸な犬たちの存在を知り、若者としてできることを考えたのが現在の活動を始めるきっかけだったという。

わん権プロジェクト実行委員会 中村華恋さん:動物を物のように扱ってほしくない、助けたい。何かできることはないかと思いました。殺処分などについての調査をしました。ペットショップについて調べたところ、悪質なブリーダーが多いことを知りました。2023年8月、尼崎市長に活動報告できる機会があり、そこで私の動物への思いを届けることができました。

保護犬などに関する調査を行い、動物を取り巻く現状を知っていったと話した中村さん。

わん権プロジェクト実行委員会 中村華恋さん:若者としてできることはSNSでの発信だと思い、インスタグラムを開設し、動物に関する発信をしています。

そしてイベントの後半では、中村さんと杉本さん、そして動物の法律問題について活動する弁護士・細川敦史さんが登壇した。その中で、中村さんのような若者に期待していることについて問われた杉本さんは…

動物環境・福祉協会Eva 理事長 杉本 彩さん:今の時代の人たちにしか分からない視点や感性って絶対にある。どんどん時代が変わっていっているので、ついていけないなと思います。(若者に)新しい観点から新しいものを取り入れて、チャレンジしていってほしい。若さって、失敗してもチャレンジすることに意味があるから、恐れずに。そこから得るものもすごくあるから、継続していただきたいと思います。

また、挑戦したいことについて問われた中村さんは、周囲にクラウドファンディングを活用した活動をしている人がいるので、自分も挑戦してみたいと話した。

わん権プロジェクト実行委員会 中村華恋さん:(集めたお金の)半分くらいは保護団体とかに寄付したい。あとは、自分でこうしたイベントを企画する時に使いたいです。

わん権プロジェクト実行委員会 中村華恋さん:(Qどういう層にアプローチしたい?)10代から20代の世代に広めたい。

杉本さんは「仲間、人は宝。一人では何もできないし、仲間作りをしないと挑めないです。(活動の中で)いろいろなことを教わっているし、いろいろなことに気づけています」と、一連の活動を通して日々感じていることにも言及した。

動物へのさまざまな思いが語られたイベント。終了後に取材に応じた杉本さんは、自らが理事長を務める団体として、今後取り組みたいことについて次のように話した。

動物環境・福祉協会Eva 理事長 杉本 彩さん:刑事告発している案件が多いのですが、被害を受けた動物の行き先というのが今はきちんと定まっていないんです。被害を受けた動物が守られるためには、一時的に守ってあげられるシェルターが必要だと思います。

動物環境・福祉協会Eva 理事長 杉本 彩さん:警察や行政とより深く連携しながら、新しい仕組み作りをしていく必要性を感じています。警察や行政の動きをサポートできるような民間の動きもしっかり構築していきたいなと思っていて、それが団体としては新しいチャレンジ。そのための基金も皆さんにお願いしています。

さらに、「2027年くらいには、一時保護シェルターが完成すればいいなと思っています」と、これからの目標について語った。

関西テレビ
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