一枚の写真から街を再発見する「兵動大樹の今昔さんぽ」。

今回の舞台は大阪市住之江区。阪堺電車・我孫子道駅からスタートです。

阪堺電車は大阪で唯一残っている路面電車で、大阪と堺を結ぶ2本の路線があり、「チンチン電車」の愛称で親しまれています。

■「屋根の低い謎の建物」と少女の写真

兵動さんが受け取ったのは、1960年(昭和35年)頃に大阪市で撮影された1枚の古い写真。写真には小さな女の子と、屋根の低い建物が写っています。

【兵動大樹さん】「えー…ヒントがなさすぎる」

建物に特徴はあるものの、どこで撮られたものかすぐには判別できません。

【スタッフ】「想定で、この子の名前は?」

【兵動大樹さん】「うちのリスと一緒で『あけみちゃん』でええんちゃうかな」

■「安立商店街」で手がかり探し 激安グルメにも感動

駅周辺で写真を見せて回ると、街の人が「安立(あんりゅう)商店街」を紹介してくれました。

商店街では、自転車に乗ったまま買い物ができるパン屋さんに立ち寄った兵動さん。

店主から「デニッシュくりっかー」というワッフルのようなクロワッサンの人気商品を勧められました。

【兵動大樹さん】「美味しい!バターのいい香り」

素敵なパンには出会えましたが、残念ながら、写真の手掛かりは得られず…。

歩いていると、何やら気になるものが。

【兵動大樹さん】「『一寸法師ゆかりの街』って書いてある」

さらに商店街を進むと、「あけみちゃん」…ではなく「えいちゃん」という老舗のお好み焼き店に到着しました。

なんと、大阪の昔ながらの名物「ひやしあめ」は50円。

暑い夏の日にはぴったりのひやしあめを飲みながら話を聞きます。

■安立商店街は「一寸法師」ゆかりの街?

まずは、「一寸法師ゆかりの街」の由来が分かりました。

紀州街道でもある安立商店街は、住吉大社の参詣道としても賑わっていました。

その住吉大社の申し子と言われているのが、一寸法師なんです。

さらに、一寸法師が鬼退治に使った針も、安立と関係があるそうです。

【地元の方】「江戸時代にこの辺に針屋さんがあったらしいですよ。『一寸法師が使った針がうちの針や~』って行商に回ってたらしくて」

【兵動大樹さん】「今で言うたら、あの芸能人が使った〇〇はうちのとこの商品やみたいなもんや」

■兵動さん大ピンチ!「ここで知りませんだったら終わり」

貴重な話は聞けましたが、またしても写真の手掛かりは得られず…。

しかも、街は20年前くらいにガラっと変わってしまったそうで、歴戦の兵動さんも「これは大ピンチやぞ~この写真は無理やで」と頭を抱えます。

商店街ももう抜けてしまう…最後の望みで訪れた雑貨店で「どっかで見た気がする…変なお家やなって思ったことがある」という証言が。

【店主】「敷津浦という地域があるんです。確かそちらの方にあったような気するんですよ」

やっとのことでヒントを手に入れた兵動さん。

店主はここ7~8年前に見たそうで、兵動さんは目印の高崎神社を目指します。

【兵動大樹さん】「ここで知りませんだったら終わりやからな。もうゲームオーバーやで」

■終戦2日前に完成の“防空壕”

高崎神社に到着した兵動さん。緊張しながら、宮司の堀井さんに写真を見せると…

【堀井賢二さん】「分かります、分かります」
【兵動大樹さん】「ちょっと待って!え、マジですか?」
【堀井賢二さん】「これはね、倉庫みたいなんですけど、“防空壕”なんです」

堀井さんによると、この“防空壕”は終戦の2日前に完成したそうです。

太平洋戦争中、大阪市が受けた空襲は50回以上。

そのうちB29爆撃機が100機以上で襲来した「大空襲」は8回あり、甚大な被害をもたらしました。焼夷弾による攻撃は、大阪の街並みを大きく変え、人々の生活に深い傷跡を残したのです。

この“防空壕”を建てたのは「加賀谷さん」という方だそうで、兵動さんは急いでその場所へ向かいました。

■「あけみちゃん」との感動の再会?私財を投げうった”防空壕”

住宅街の中に“防空壕”は姿をそのままに残されていました。

そして、向かいの「加賀谷」さんの家を訪ねると…女性が対応してくれました。

【兵動大樹さん】「これ…」
【女性】「ワタシ」

なんと、女性が写真に写った女の子でした。

【女性】「小学校3年(のころ)」
【兵動大樹さん】「勝手にあけみちゃんって呼んでたんすよ」
【女性】「しげこ」

女性の名前は大河内繁子さん。

この”防空壕”は彼女の祖父が建てたものでした。

祖父は工務店を営んでおり、近所の人々を空襲から守るために私財を投げうって“防空壕”を建設したのです。

【大河内繁子さん】「近所のお年寄り入れてあげようと思って」

質の良い川の砂を使い、太い鉄筋を入れて頑丈な作りになっていますが、完成したのは終戦の2日前だったため、使用されることはなかったそうです。

■近所の人のために…「じいちゃんカッコよすぎる」

“防空壕”の中を見せてもらうことになった兵動さん。

1年ぶりに繁子さんが重い鉄扉を開けると、驚くほど広い空間が現れました。

【兵動大樹さん】「わあ、広い。めちゃくちゃ広い」

中には井戸があり、電気も引かれていました。

【兵動大樹さん】「思ったよりしっかり作ってある」

“防空壕”内には小部屋もあり、20人くらいは入れる広さです。

【兵動大樹さん】「感動した。じいちゃんカッコよすぎる」

■“防空壕”は地域のシンボルに

戦争の記憶を伝える貴重な遺構であると同時に、人々の思いやりと結束の象徴として、この“防空壕”はいまもひっそりと住宅街にたたずんでいます。

【大河内繁子さん】「当分の間このまんまやっぱりシンボルとして置いて欲しいっていう人もいてはるしね」

【兵動大樹さん】「おじいちゃんが周りの人を空襲から守ろうと思って作った“防空壕”。これがいまだにある。ほんで、こんなしっかり作ってるというのは、おじいちゃんのかっこよさというのも触れ合いましたね」

(関西テレビ「newsランナー兵動大樹の今昔さんぽ」2025年8月15日放送)

関西テレビ
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