地名の裏に歴史あり。今回取り上げるのは静岡・函南町にある地名「新幹線」だ。読み方もそのまま「しんかんせん」。確かに函南町には東海道新幹線が通っているが、少し離れている。なぜ乗り物の名前がそのまま地名になったのだろうか。
この記事の画像(12枚)「新幹線」を探すも見つからず
にわかには信じがたい珍地名「新幹線」。情報によると東海道新幹線と並行して走るJR東海道線の函南駅から車で5分ほど離れた場所ということで、さっそく向かってみた。
ところが、新幹線という住所をなかなか見つけることができない。
にむらあつとリポーター:
新幹線の「し」の字もございません。住所は「上沢(かみさわ)」で新幹線ではありません
続いて県道141号線沿いにあったバス停を見てみると「幹線下(かんせんしも)」と書かれてた。新幹線につながりそうなバス停名の発見だ。
もしかすると、バス通りが幹線道路なので、新しく幹線ができたという意味の新幹線という名前なのだろうか。
道路が地名の由来なのか。しかし電柱や郵便ポストを確認してみると住所の表記は上沢。どこを探しても新幹線の文字は見当たらない。
新幹線を発見!
さらなる情報を求め住宅街へ向かう。そこで、それは突然目の前に現れた。
防災倉庫に書かれた「新幹線区」の文字だ。
さらに歩いていくと、今度は公民館があった。
にむらリポーター:
新幹線公民館。出ました嘘じゃなかった、実在しましたよ。新幹線という呼び名が存在することがわかりましたね
突如現れた公民館、そこには探し求めていた新幹線の文字が。
新幹線区と書かれていることから、この場所が「新幹線」と呼ばれていることは間違いなさそうだ。
地元の人に聞き取り調査
地元の人はどう呼んでいるのか、新幹線公民館の裏にある函南町立二葉こども園の園長に聞いてみることにした。
まずは、こども園の住所を確認。
函南町立 二葉こども園・田村美和子 園長:
こども園の住所は函南町の上沢になります。ここの地区が新幹線区ということは知っております。バスの停留所があるんですけど、幹線上・幹線下と言って、新幹線から来ているんですよね
新幹線という地名から、バス停名が「幹線上・幹線下」になったそうだ。
しかし、住所はやはり上沢。そして実際の新幹線の線路からは遠い場所なのになぜ?
こども園はもともと国鉄官舎だった
思いがけず田村美和子園長から有力なヒントを聞くことができた。
田村園長:
こども園は、もともとは国鉄の官舎があった場所を借りて、二葉保育園として開園したようです
にむらリポーター:
だいぶゴールに近づいた気がします!
園の資料によると、元々この場所は国鉄、現在のJRの私有地で官舎が存在したそうだ。
だんだん新幹線に近づいてきたのか!?
さらなる情報をもとめ、函南町役場へ向かう。そこで新幹線の驚きの歴史が明らかになった。
役場でさらに詳しく調べると
対応してくれたのは、函南町役場・企画財政課の仲田菜津美さんだ。
函南町役場 企画財政課・仲田菜津美さん:
新幹線の地名はもちろん知っております。新幹線というのは珍しい名前の地域ということで、役場の方にもお問い合わせをいただくことが多いんですね
にむらリポーター:
ずばり、あの地域の住所は新幹線ですか
函南町役場・仲田さん:
新幹線が住所ではないんです。実は新幹線は地名ではなくて、自治会・地区の名称ですので実際に住所上では存在しません
なんと住所名ではなく、ニックネーム的な呼び名だった。地元の人たちは、あの地域を新幹線と呼ぶそうだ。
建設従事者に由来か
あくまでも住所上は上沢、新幹線は自治会の名前でしたが、なぜそんな名前がついたのだろうか。
仲田さんによると諸説あるそうだが、まずは戦前に新幹線の前身である弾丸列車用のトンネルの建設従事者の官舎があって、新幹線と呼ばれるようになったという説。
そして、そのトンネルの建設従事者がこの地域に多く住んでいたからいう説があるそうだ。
地元の人たちは愛着をもって「新幹線」という呼び名を使っているそうだ。新幹線という名称は、住所でも地名でもなく、自治会の名称だった。
(テレビ静岡)