能登半島地震による風評被害払拭(ふっしょく)を目的に、3月16日の北陸新幹線延伸の日から、北陸4県で行われる旅行支援「いしかわ応援旅行割」の予約が3月12日からスタートした。宿泊施設などからは喜びの声が上がる一方、複雑な思いを抱えるところもある。
「北陸にいい追い風に」
12日から予約が始まった「いしかわ応援旅行割」。

宿泊料金などの半額、1人あたり一泊、最大2万円が割り引かれることから、予約開始前から話題となっていた。
金沢市内のホテル「金沢 彩の庭ホテル」では、これまでに約1000件の予約が入り、スタッフが対応に追われていた。普段の10倍を超える予約状況だという。「電話がなかなか通じないため、直接来た」という利用者もいたほどだ。

「金沢 彩の庭ホテル」菊田正治マネージャー:
コロナの時も我慢しましたし、地震も起こってしまいましたので、特に北陸新幹線の延伸というタイミングもありますので、北陸にいい追い風になってくれるのではないかと思っています
応援割・新幹線延伸に合わせプラン追加
加賀市・山代温泉では、星野リゾートが展開する「界 加賀」が北陸新幹線延伸に彩を加えるため、“べんがらラウンジ”が13日にオープン。

加賀の伝統工芸「九谷焼」や「山中塗」など約100種類の器の中から自分好みのものを選び、落ち着いた雰囲気のラウンジで、北陸の酒とつまみを楽しむことができる。
さらに応援割に合わせた、金継ぎなどが体験できる宿泊プランも用意した。

「界 加賀」森下亜椰総支配人:
北陸応援割や新幹線の延伸は、「界 加賀」だけでなく、山代温泉街、加賀温泉街にとって、とても影響の高いものであると思います。継続的にお越しいただいて、この伝統工芸あふれる華やかな温泉旅館を楽しんでいただきたい
この旅館では、準備が整い次第、応援割の予約受付を始める。
二時避難所であるホテルでも応援割開始
二次避難してきた約230人を受け入れている山代温泉の「加賀百万石」でも、北陸応援割の予約が始まった。さらに、北陸新幹線の延伸開業観光も同時に受け入れをしていかなければいけないため、「被災者と観光客が共存できるような案内をしている」と吉田久彦社長は話す。
加賀百万石では、約220部屋あるうち半分を二次避難所として利用し、残り半分の部屋で観光客を受け入れる。

当初、石川だけ開始時期を遅らせる予定だったが、二次避難者を受け入れている施設には予算を手厚く配分することにし、4県同時のスタートとした。

「加賀百万石」吉田久彦社長:
石川県の復興のためには、金沢より南がしっかりと石川県の経済を回していくことが必要となってきますので、観光の方にはぜひ来ていただいて、石川県を応援していただくというような協力をいただきたいと思っています
「宿が取れない」旅行代理店は複雑…
一方、金沢市内の旅行代理店「ヴァケーション」では、いしかわ応援旅行割の問い合わせの電話に対応するため、通常よりも人数を増やして対応していた。地震の影響でキャンセルが相次ぎ、売り上げは1億円以上落ち込んだという。
待ち望んでいた応援割だが、手放しには喜べないようだ。

「ヴァケーション」濱順次社長:
宿が取れないという状態。元々の予約が入っていたというのと、1・2月の予約が全部スライドされて集中してしまって予約が取れるか非常に不安
受付開始直後から続々と問い合わせの電話が入るが…
電話対応中のスタッフ:
きのうの段階で土曜日がいっぱいの状態だったので、予約が取れる可能性としては難しいかもしれない。ほかのところも割引始まる前の段階から土曜日はほとんど取れない状況で、お電話をいろんな宿にかけることはできるんですけど、ただ、ほぼつながらないんです…

実は、二次避難所になっていたり、復旧工事にあたる人の宿泊場所になっていたりと、応援割の開始前から県内の宿泊施設は空きが少ないのが現状。地震で旅行の予定をずらした人もいて、なかなか予約ができない。

「ヴァケーション」濱順次社長:
約1カ月、40日しかないのでちょっと期間が短いなと。能登の旅館の復活が年単位でかかるんじゃないかという話もありますので、われわれのできるサポートは、お客さまを送ることが最大の支援だと思っていますので、受け入れ態勢が整えば、すぐにでもお客さまを能登にお連れしたい

県は、ゴールデンウイーク以降も予算が残っている施設については、第2弾として応援割を続ける予定。また、能登の宿泊施設については、復興した段階でスタートし、国は割引率を70%に引き上げることを検討している。
(石川テレビ)