「国際女性デー」が制定されている3月にあわせ、フジテレビのアナウンサーが自分の視点でテーマを設定し取材し、「自分ごと」として発信します。
2024年3回目の担当は遠藤玲子アナウンサーです。
私は今、不安に駆られている。私なりに保ってきた“家庭”と“仕事”のバランスが、息子の中学受験によって揺らぎそうだからだ。
児童のいる世帯の中で、母親が仕事をしている世帯の割合が75%を超えている中、私も二児の母として“家事”は思い切って手を抜き、“仕事”も働き方を工夫しながら、綱渡りの毎日をやりくりしているつもりだ。そんな中、塾の説明会で言われた言葉に動揺している。
「中学受験には保護者の伴走が必要不可欠です」
溜まってしまった洗濯物に目をつぶることはできても、いざ我が子のこととなると、なかなか割り切れない。もしかしたら「私が働くせい」で息子の合否が決まってしまうかもしれない…。
「悩める母」の一人として、中学受験コーチングを専門とし“予約の取れない”講師としてメディアにも取り上げられている齊藤美琴さんに話を聞いた。
この記事の画像(7枚)親の「伴走」=「二人三脚」の危険性
先日、まもなく小学6年生になる息子が通う塾で、先生から「保護者の伴走が必要不可欠」と力説された。確かに、塾のお弁当作り、送迎、プリントの整理…既に5年生の時点で親がすべきことは山ほどあった。先輩ママたちから「6年生はさらに親の力が必要」とも聞いている。
こうしたサポートについて、齊藤さんは「あくまで主役は子供であることを忘れてはいけない」と強調する。
「『保護者の伴走が必要』と言われると、横に並んで一緒に走るイメージですよね。私がコーチングした中には『二人三脚』になっていた家庭もありました。でもそれだと、どちらかが転ぶと二人して起き上がれなくなってしまい、中学受験でもっとも危惧される事態に陥ります。『伴走』とはいえ、あくまで主役は子供であるべきです」(以下、齊藤さん)
齊藤さんが勧めるのは、親子で「チーム」となることだ。子が「選手」で親は「コーチ」。コーチは選手を導くために、時には手を取り、背中を押し、ストップをかけることもあるが、自らゴールテープを切ることはない。中学受験も、親が一緒にゴールする勢いで臨んではいけないそうだ。
一方で、私は自分が働いていることでそのコーチ役も十分に果たせていない気がしている。「私が働くせいで」チームとしての“戦闘能力”も下がってしまうのではないか・・・。
「私が働くせいで…」の罪悪感を“言語化”する
働いていることへの「罪悪感」について、齊藤さんは「まずは、その『罪悪感』の所在を言語化してみてください」と語る。
つまり「思うように子供との時間を割けないから?」「他の家庭と比べて?」など「原因をはっきりさせることで、その罪悪感を手放すための次のアプローチが見つかる」のだという。
私の場合は「他のお母さんはもっと見てあげられている」という罪悪感だ。すると“その次のアプローチ”として「子供に聞いてみる」ことをアドバイスされた。
「『お母さんにもっと勉強を見て欲しい?』『周りのお友達がしてもらっていることで、お母さんにもして欲しいことはある?』と聞いてみると、意外と子供は求めていないことが多いです。そうであれば、そもそも罪悪感を抱く必要が全くありません。子供からの要望があって、はじめて応えればいいのです」
実際に息子に聞いたところ「お母さんにこれ以上勉強を見てもらいたいと思っていない」と言われた。なんだ、私が感じていた“罪の意識”は無駄だったのか。
強化するばかりでなく、弱さを吐き出させる意識
さらに私が先に使った「戦闘能力」という言葉も、意識ひとつで変わるそうだ。
齊藤さんは、戦闘というと「我が子を強くするぞ!」と親が意気込んでしまうという。特に、時間に追われ、効率を重視する傾向にあるワーママ(働く母親)は、「できる子にするには?」「受験に向く子にするには?」と手っ取り早く、我が子を強くする方法を求めがちだが、その時は「強化ばかりではなく、弱さを吐き出させることにも意識を向けて」と伝えているそうだ。
確かに、私も我が子を強化する方法ばかりを求めていた。受験関連本に「早起きする子は成績があがる」と書かれてあれば、翌日から目覚ましを1時間早く設定し、(おそらく私と同じ夜型の息子を)無理やり叩き起こしていた。見聞きした情報を、とりあえず手あたり次第、我が子に当てはめていた。世の中には情報があふれている。
こうした状況について齊藤さんは「そもそも『なぜ中学受験するのか』の明確な目的を持っていないと、必要な情報に絞れません。小学校受験は親が願書を書き、親が面接を受けます。『志望理由』『我が子にどう育ってほしいか』など、軸となるビジョンを親が考えさせられます。一方、中学受験にそうした場面はなく、下手をするとフワッとした考えだけで、偏差値という『数字』に踊らされてしまいます」と注意を促した。
齊藤さんが指摘する「軸をしっかり持つ」ことは、先述の「罪悪感を言語化」にも通ずるかもしれない。漠然としていることが不安の根幹なのだ。軸を持った上で、限られた時間をまず我が子との対話に使うべきなのだと気付かされた。
中学受験は「チームとして最後のイベント」
今回の取材の中で齊藤さんは「全ては理想論」としつつも、中学受験への向き合い方のヒントをくれました。幼児期に育児書通りに行かないのと同じで、「中学受験も家庭ごとに違うことが前提」です。
それでも、専業主婦・ワーママなど親の状況に関係なく、全ての家庭に共通して言えることは、「中学受験は親子でチームとして取り組むことができる最後のイベント」だということでした。その後の受験は本人次第になるからです。
期限付きの「最後のイベント」
そんなマインドで中学受験に臨めば、楽しむまではいかなくても、前向きになれる気がしてきました。
(取材・文/フジテレビアナウンサー 遠藤玲子)
「ジェンダーについて、自分ごとを語る」
2023年に続き、フジテレビアナウンス室では、アナウンサーが自主的に企画を立ち上げ、取材し、発信します。
「私のモヤモヤ、もしかしたら社会課題かも…」まずは言葉にしてみることから始める。
#国際女性デーだから
性別にとらわれず、私にとっての「自分ごと」、話し合ってみる機会にしてみませんか。