2024年3月8日、東京電力・福島第一原発3号機の燃料デブリ取り出しの工法が示された。燃料デブリを取り出すにあたり、デブリの性質を知っておく必要がある。これまでに分かっているのは、放射線量が高いことと粒状のデブリはロボットで持ち上げられることくらい。いままさに、デブリはどんな性質をしているのか、"敵"を知る研究が進められている。

模擬デブリが解明のカギに

茨城県東海村にあるJAEA・日本原子力研究開発機構の研究施設では「模擬燃料デブリ」を使った研究が行われている。

JAEAでは「模擬燃料デブリ」を使った研究を行う
JAEAでは「模擬燃料デブリ」を使った研究を行う
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核燃料の主な成分のウランに、原子炉内にある様々な金属を混ぜ、さらにコンクリートを混ぜて数千度の高温で熱する。福島第一原発事故と同じような状況を再現して作り出したのが「模擬燃料デブリ」これを使い、デブリの特性を解き明かそうとしている。

提供:JAEA 再現して作った模擬燃料デブリ
提供:JAEA 再現して作った模擬燃料デブリ

福島もスリーマイルも同じ傾向

この研究所では、1979年3月にアメリカ・スリーマイル島の原発事故で発生した燃料デブリの研究も行っている。

スリーマイル島原発事故で発生した燃料デブリの研究も行う
スリーマイル島原発事故で発生した燃料デブリの研究も行う

日本原子力研究開発機構の高野公秀さんは「デブリの中の微細な組織が条件によってどう違うかというのは、福島第一原発の模擬デブリでも、スリーマイル島のデブリでも同じような傾向が出るということは確認できた」と話す。

JAEA燃料・材料工学ディビジョン 高野公秀さん
JAEA燃料・材料工学ディビジョン 高野公秀さん

前例のない事故

福島第一とスリーマイルの共通点が見いだせている一方・・・「炉心の溶融物が格納容器の下に流れていき、コンクリートと高温で反応したというのは、福島第一原発事故以前には前例のない事故」と高野さんは話す。スリーマイルでは、溶け落ちた燃料が圧力容器のなかに留まった一方、福島第一原発では燃料が圧力容器を突き破り、格納容器の底にあるコンクリートと混ざり合っている。

スリーマイル島原発事故との違い
スリーマイル島原発事故との違い

取り出し手法決定の判断材料に

模擬デブリに削る・切るなどの加工を加え、「取り出しの手法」を決める時の判断材料を提示することが研究の目的だ。日本原子力研究開発機構の高野公秀さんは「取り出された福島第一原発の現物と、模擬デブリのデータを照らし合わせることで、福島第一原発のデブリがどういう条件でできたのかを調べるというのが、直近の一番の課題となっています」と話した。

「取り出しの手法」を決める時の判断材料を提示することが研究の目的
「取り出しの手法」を決める時の判断材料を提示することが研究の目的

廃炉作業の中で極めて重要で難しい燃料デブリの取り出し。対処法を決めるためにも敵を知る研究はこれからも続く。

対処法を決めるために重要な”敵を知る”研究
対処法を決めるために重要な”敵を知る”研究

取り出しへ今後のスケジュール

3月8日公表された戦略をもとに、1年から2年をかけて東京電力が細かい計画を立てる。その検討の結果によっては、「冠水工法を採用する可能性も否定できない」ため、冠水工法に備えて地盤調査も行われる。880トンあるとされる燃料デブリは、1グラムも取り出せていないし、2号機で計画しているデブリの試験的な取り出しは延期された。

3月8日に公表された1F 3号機の燃料デブリの取り出し工法
3月8日に公表された1F 3号機の燃料デブリの取り出し工法

事故から40年後の2051年までに廃炉を完了させるため、技術を結集して着実に進める必要がある。

(福島テレビ)

福島テレビ
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