ハイチで武装ギャングが刑務所を襲撃し約4000人が脱獄、非常事態宣言が発令された。アフリカ訪問中のアンリ首相は、ギャングから退陣を求められており、アメリカ領プエルトリコに滞在して帰国できない状況が続いている。

ギャングによる暴動が続く

4000人近い囚人が脱獄し、非常事態宣言が出されているカリブ海の国・ハイチで、退陣を求められている首相が帰国できない事態が続いている。

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ハイチでは、武装したギャングが4日、刑務所を襲撃して4000人近くが脱獄し、治安が悪化したため、非常事態宣言が出されている。

襲撃当時、アフリカを訪問していたアンリ首相は5日、アメリカ領プエルトリコに入った。アンリ首相は武装集団から退陣を求められていて、帰国できない状態とみられている。

こうした中、アメリカ国務省のミラー報道官は、アンリ首相の辞任を求めていないとしながらも、政治体制を速やかに変革し、事態の沈静化を図るよう求めた。

ここからは立石報道センター室長がお伝えする。一連の流れを見ると、ただのギャングの大暴れを超えているという印象を受ける。

まずハイチの場所だが、アメリカの南東に位置し、一つの島をドミニカ共和国と分け合っている。面積は、北海道の約3分の1。人口は約1100万人。カリブ海に面するビーチが広がる美しい国だ。
しかし、19世紀の独立以後、経済は混迷し、世界でも最貧国の一つとなっている。

2021年に大統領暗殺事件が起きて以後、政情はさらに不安定になり、町ではギャングによる暴動が続いている。

2月7日に撮影された首都ポルトープランスの映像だが、ギャングと警察の衝突により、町中では銃声が響き渡っている。さらに、ギャング達が火を付けたタイヤが路上の真ん中で真っ赤な火を上げ燃えている。

そして武装集団は3日にはハイチ最大の刑務所を襲撃し、凶悪犯など4000人が脱獄する事態になっている。

首都近郊では暴動に乗じた略奪も頻繁に起きていて、子供などもスーパーマーケットに入り次々と商品を持ち出していく。ガソリンスタンドでも燃料を勝手に入れている。首都の経済機能も麻痺した状態だ。

これらの衝突により、約1万5000人の住民が避難を余儀なくされている。

アメリカへの麻薬密輸にも関与

この一連の暴動を主導しているギャングのリーダーが、ジミー・シェリジィエ氏(46)だ。

2020年にハイチの主な9つのギャング団を統一。G9ファミリーと呼ばれる巨大ギャング団を結成した。

実はシェリジィエ氏は元警察官で、400件以上の放火を繰り返し、別名「バーベキュー」とも呼ばれている。国連は複数の虐殺にも関与したと見ている。シェリジィエ氏は、暴動の目的は現在のアリエル・アンリ首相の退陣と話している。

ギャング団のリーダーだが、記者会見も頻繁に行い、ジャーナリストがスマホやカメラを持って集まっていた。もはやギャングという存在を超えて、クーデターを企てる反乱軍のリーダーのような存在になっている。

シェリジィエ氏は「首相が残留すれば、内戦が起き大量虐殺が起きる」と警告している。

そうした中、ギャング団に追われるアンリ首相は、治安部隊の応援を要請するためアフリカのケニアを訪問していたのだが、その後行方がわからなくなっていた。
しかし、5日にアメリカ領であるプエルトリコに滞在していることが判明した。

ギャング団による暴力行為は肯定できないものの、政権の腐敗や汚職が指摘されるなか、アンリ首相も市民からの選挙を求める声を無視してきたことが暴動の背景にある。アンリ首相は、もはやハイチに帰国することが出来ないと判断している可能性もある。

そんな中で、国際社会も警戒している。ハイチと国境を接するドミニカ共和国は軍用車両を国境周辺に配備し、飛び火を警戒している。そして、アメリカ国務省のミラー報道官も6日の会見で、アンリ首相に対して辞任は求めないものの政権移行を促す発言を行っている。

ハイチは小さい国だが、地理的にはアメリカの喉元にあるような国だ。このギャング団はアメリカへの麻薬密輸にも深く関与している。
この地域のさらなる混乱はアメリカにとっては容認できない。そこで大きな問題になっている。
(「イット!」 3月7日放送より)

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