2025年春卒業予定の大学生を対象にした会社説明会が、3月1日に解禁された。山陰でも企業説明会が開催されるなど、就職・採用活動が本格化している。
人手不足を背景に就職戦線は「売り手市場」だ。山陰の企業も賃上げや初任給アップで待遇を改善、都会地の企業との人材獲得競争に挑んでいる。
仕事内容・働く環境を重視
“就活”解禁翌日の3月2日、島根・松江市で県内の企業約200社が参加する企業説明会「しまね企業ガイダンス」が開かれた。

建設業や金融業、宿泊業など様々な業種の企業担当者が、訪れた学生に仕事の内容や求める社員像などについて説明していた。

企業選びのポイントを参加した学生に聞いてみると、「やりがいを持ってできる仕事を探したい」「会社の雰囲気を大事にして決めていきたいと思っているので、社員の人柄などを一緒に見られたら」といった声が返ってきた。
説明会を主催した「ふるさと島根定住財団」の岸学思課長は、「人材確保が難しくなる中、企業側も学生のニーズを確認しながら、人材を確保できるよう対策を取っている」と説明。

「売り手市場」といわれる就職戦線、仕事の内容や働く環境を見極めようという学生が多いようだ。
初任給アップの波は山陰にも
大手就職情報サイト「マイナビ」が、全国約1800社を対象に行った調査によると、2025年度の採用活動が「難航する」と回答した企業は76.6%。
少子化の影響で学生数が減少するのに加え、人手不足が続き求人数が増加。
今後も「売り手市場」が続くと見込んでいる。

こうした状況を背景に、半数近い47.2%の企業が2025年以降に入社する新卒社員の初任給引き上げを予定していると答えている。
3月4日に開かれた別の会社説明会で、参加した島根県内に事業所がある40社に聞いてみると、このうちの約3割、少なくとも11社が、2025年入社の新卒社員の初任給引き上げを決めたと話した。

山陰合同銀行(松江市)人事グループ・木村伸幸担当部長:
Uターン就職を検討してみようというきっかけになることを、初任給引き上げの効果として期待している。
大卒の総合職で“初任給28万円”
島根・鳥取を中心に営業する地銀・山陰合同銀行は、2025年入社の大卒社員の初任給を1万円増額して26万円に。
「売り手市場」の中、人材確保のため、賃金面でも都銀など大手に対抗する。

一方、「ずばり大卒の総合職で初任給28万円です」と話すのは、出雲市のアミューズメント企業「丸三」の担当者。
この会社では、初任給を3年連続引き上げ、一部の職種で28万円に。説明会に参加した企業の中で、最も高い水準だ。
丸三・福島賢人事課長代理:
社員の生活を守るんだ、豊かにするんだという思いから、初任給もしっかり提示している。

説明会に参加した学生たちも「光熱費など生活費の一部は自分で払っているので、就活では給料という基準はある。給料面はすごく見るところ」「やりがいも大事だけど、モチベーションを保つためにも給料というのは見るところ」と話し、物価高が続くなか、賃金をより重視する姿勢も見えた。

少子化と人手不足を背景に「売り手市場」が続く中、企業の“姿勢”を強くアピールできる「初任給アップ」の波は、山陰にも及び始めているようだ。
(TSKさんいん中央テレビ)