2024年1月14日に営業を終了した島根・松江市の「一畑百貨店」。
懸案の「跡地」活用について、所有する一畑電鉄がTSKの取材に初めて応じ、売却に向け、県外の大手デベロッパーなどと協議を進めていることを明らかにした。

65年の歴史に幕「一畑百貨店」

2月14日、松江市・上定市長は、定例記者会見で「一畑百貨店」の閉店についてあらためて触れ、「市民にとって非常に大きな存在だったということを、閉店した今になっても改めて実感する」と、“駅前の顔”を失ったこの1カ月を振り返った。

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1月14日、65年の歴史に幕をおろした「一畑百貨店」。
閉店に伴って、従業員約120人が失職、再就職の問題や取引企業への影響など地域経済に影を落としている。

閉店をめぐり、行方が気になるのが、跡地の活用だ。上定市長は、市や商工団体などでつくる「松江駅前デザイン会議」を3月にも開催し、議論を急ぐ方針だ。

跡地活用について「他の商業施設とも連携していく必要がある」と話す上定市長
跡地活用について「他の商業施設とも連携していく必要がある」と話す上定市長

この日の会見で、上定市長は「松江駅前全体のデザインを考えていくにあたっては、駅前の他の商業施設とも連携していく必要がある」として、駅ナカの商業施設「シャミネ松江」を運営するJR西日本の関連会社などとも協議を進めていく考えを示した。

「一畑」から“駅ナカ”に移籍する店舗も

その「シャミネ松江」では、新しいテナントのオープンが相次いでいる。
いずれも「一畑」閉店からの“移籍組”だ。

そのひとつが、メンズアパレルショップ「タケオキクチ」。2月9日、「一畑」から移転オープンした。

店を運営する「プルシアンブルー」の古山史生社長は、「お世話になっていた顧客が一番通いやすい所で移転先を探していた」と、「シャミネ」出店の理由を説明した。
常連客が訪れやすいように、一畑百貨店から近い「シャミネ」を選んだという。

ただ、一方で、古山社長は「百貨店では高価格帯でも買っていただける方がいたので、移転に伴って、その部分は少し心配」と話す。

高級品を求める客が多いデパートとは客層が異なる“駅ナカ”は未知の世界。
今後は、集客力のある立地を生かし、顧客の新規開拓にも注力するということだ。

「シャミネ」では、この店のとなりにも、「一畑」のテナントだったストレッチパンツ専門店が1月に移転オープン。さらに、女性向けのアパレル店も移転オープンする予定で、「一畑」から3店舗が“移籍”することになる。

「シャミネ松江」を運営する、JR西日本山陰開発の石川洋一郎取締役は「地域の顔、街の顔として長い間愛されてきた『一畑百貨店』の果たしてきた役割をしっかりと引き継いで、街のにぎわいを消さないようしっかり頑張っていく」と話した。

解体費用は“10億円以上”

一方、閉店後の最大の課題と言えるのが、「跡地」の活用だ。
行政、経済界だけでなく、多くの市民も関心を寄せるなか、土地・建物を所有する一畑電鉄が、TSKの取材に初めて応じた。

跡地の活用について、一畑電鉄は、これまで「賃貸でテナントを誘致」、または「土地・建物を含め売却」のいずれかで検討しているとしていた。

しかし、取材に応じた一畑電鉄の松下敦史取締役は「賃貸であれば、建物の老朽化の問題がある。売却の方が早く決まれば、そちらが現実味がある」と話し、県外の大手デベロッパーなど数社と「売却」に向け、協議を進めていることを明らかにした。

売却額など具体的な数字は出ていないということだが、協議を進めるうえでネックになるのが10億円以上と試算される解体にかかる費用だ。

相当な額にのぼる解体費と建設費をまかなう体力のある事業者と合意に至ることができるかどうかが、今後の焦点となりそうだ。

一畑電鉄・松下敦史取締役:
うちの方が灯を消してしまったところもある。松江市や商工会議所も対策を進めているので、相談しながら進めていく。

デパート閉店で大きな転換期を迎えている「松江市の玄関口」。
新たな街の顔をどのように作るのか、官民一体となったスピード感のある対応が求められている。

TSKさんいん中央テレビ
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