2024年3月12日に判決を迎える特定危険指定暴力団「工藤会」のトップの野村悟被告(77)とナンバー2の田上不美夫被告(67)の控訴審。テレビ西日本は、田上被告が大きく主張を変えた控訴審の弁護人に単独インタビューした。
死刑・無期懲役判決に疑問の声
工藤会最高幹部2人の控訴審で弁護人を務める岩井信弁護士。2023年9月に控訴審が始まってから初めてメディアの取材に応えた。
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岩井信弁護士:
野村さんについては死刑判決、田上さんについては無期懲役という非常に重たい刑罰なんです。これについて事実関係を争えるのは事実上、控訴審までなんです。
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一審で4つの市民襲撃事件の犯行を指示したとして死刑判決を受けた工藤会総裁の野村悟被告、そして無期懲役の判決を受けた会長の田上不美夫被告。2023年9月から始まった控訴審はすでに結審し、3月12日に判決を迎えるが、岩井弁護士は「審理が尽くされたとは言い難い」と主張する。その根拠を尋ねた。
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岩井信弁護士:
死刑事件、もしくは殺人事件のような非常に重大な事件については、「慎重に審理を尽くさなくてはいけない」というのがある。にも関わらず、今回はそれをしていない。
4つの市民襲撃事件について「推認」という言葉を39回用いた上で、野村被告を首謀者と認定した一審判決。その中で死刑、無期懲役の決め手になったのが、唯一の殺人事件である「元漁協組合長射殺事件」だ。
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一審判決によるとこの事件は、1998年2月、当時、工藤会田中組の組長を務めていた野村被告、若頭だった田上被告が配下の藤井進一氏、中村数年受刑者、古口信一元受刑者らに指示をして元漁協組合長の梶原國弘さんを射殺したもの。
裁判所が取り上げなかった「予備事件」
しかし岩井弁護士は、この殺人事件の4カ月前に起きた「ある事件」が、弁護側の再三の審理請求にも関わらず、今回の控訴審で一切、取り上げられることがなかったことに疑問を呈している。
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岩井信弁護士:
1997年10月23日ごろ「湯布院殺人予備事件」があった。同じ被害者の方ですから「殺人予備」と「殺害」というのは密接不可分な事件。これが全く違う流れで行われるということは、通常考えられない。
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「湯布院殺人予備事件」とは、2007年に既に確定している「元漁協組合長射殺事件」の実行犯の裁判で明らかになった事件。判決によると射殺事件で見届け人を務めた古口元受刑者が、射殺事件の約4カ月前、大分・湯布院の梶原さんの別荘で、1人で待ち伏せし、殺害しようとしたものの梶原さんが現れず、犯行を諦めたという事件だ。
岩井信弁護士:
この「湯布院殺人予備事件」が、今回の野村さん田上さんの(裁判で)殺人事件について背景として出てこない。
事件を指示したとされる野村・田上両被告の控訴審の法廷で、この殺人予備事件は無視されたのだ。
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岩井弁護士が「湯布院殺人予備事件」を重要と捉えている理由は何なのか。それは実行犯の判決では、湯布院での事件と梶原さん射殺事件を一連の犯行と認定しているからだ。また「元漁協組合長射殺事件」では、凶器や逃走手段の確保、見届け人がいて組織的な犯行であったのに対し、それに先立つ殺人予備事件は、古口元受刑者1人で湯布院に向かっている。
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この「湯布院殺人予備事件」があることで、梶原さん殺害の組織性、つまり野村・田上両被告の指示があったとするには疑問が生じると主張しているのだ。
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検察側としては、実行犯の裁判で、殺人予備を重要な事件として審理した一方で、今回は審理していない理由についてー。
岩井信弁護士:
「湯布院殺人予備事件」が、野村さん、田上さんの指示や共謀がなかったこと。野村さん田上さんたちではない人が仕組んだことを示す事実だと検察官も分かった、もしくは十分説明できないということで避けてきたのではないか。
「弁護側が証拠や証人を申請するも“証人尋問たった1人” 重要証拠の軽視か…公正な判断は? 工藤会控訴審の弁護人に単独インタビュー【後編】」に続く
(テレビ西日本)