2024年3月12日に判決を迎える特定危険指定暴力団「工藤会」のトップの野村悟被告(77)とナンバー2の田上不美夫被告(67)の控訴審。被告の弁護人を務める岩井信弁護士は「湯布院殺人予備事件」という事件が控訴審で取り上げられず、「審理が尽くされたとは言い難い」と主張している。

公正な判決が下せているのか?

「湯布院殺人予備事件」実行犯の判決では、湯布院での事件と梶原さん射殺事件を一連の犯行と認定しているにも関わらず、今回の控訴審でこの事件が無視されてしまった。

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この「湯布院殺人予備事件」があることで、梶原さん殺害の組織性、つまり野村・田上両被告の指示があったとするには疑問が生じると主張しているのだ。

死刑判決が出ている裁判である以上、疑問点が残る場合は「徹底的に審理を尽くすべき」という考えのもと弁護側は、この「湯布院殺人予備事件」以外にも真実を明らかにするためとして数々の証拠や証人の申請を行ったが、裁判所が許可したのは証人尋問たった1人だけだった。

岩井信弁護士:
刑事裁判では、事実が審理されなきゃいけない。その時に取捨選択されてはいけないと思う。請求が全部、基本的には却下されてしまっているという意味で、先に「却下ありき」というかたちで審理が進んできてしまっていることは、非常に残念です。

さらに、「平成14年の最初の裁判の担当検察官が、現在の控訴審の法廷の中にいる立ち会いの検事のひとりなんです。その検察官が、一番よく知っているわけです。なぜ当時それを出したのか、なぜ今それを一切言及しないのか、そういうところもこの裁判の非常に不思議な問題がある点だと思う」と話した。

専門家「事実認定はよっぽど厳格に」

テレビ西日本は、実行犯の裁判を担当し、さらに今回の控訴審にも立ち合いを務めている検察官に対して「湯布院殺人予備事件」を取り上げなかった理由について質問状を送ったが、回答は「公判中の事案については回答を差し控える」というもの。書面での返答を依頼したにも関わらず「返答できない」として口頭での回答となった。

「湯布院殺人予備事件」をなぜ控訴審で取り上げなかったのか。その真意は判然としない。

数多くの証人や証拠を準備して臨んだものの、顧みられることがほとんどなかったと弁護団が話す今回の控訴審。専門家も重い刑であればあるほど審理が尽くされなければならないと指摘する。

九州大学法学研究院・田淵浩二教授:
第一審で死刑判決を言い渡している。死刑判決ということは誤ってはならないわけですから、事実認定はよっぽど厳格にやらなければいけない。野村被告を「元漁協組合長射殺事件」の首謀者だと認定するなら、証拠が足りていない。その証拠を補充する積極な訴訟指揮をしない限り認定できないはず。それをやっているわけではないので、そういう意味では証拠が足りないまま有罪判決を維持するのであれば、広い意味では審理不尽だという言い方ができるかもしれない。

控訴審判決は3月12日に言い渡される

「湯布院殺人予備事件」は、死刑判決が出された一審判決でも触れられていない。一審判決がこのまま支持されるのか、それとも新たな判断が下されるのか。

インタビューで岩井弁護士は工藤会の弁護について以下のように話していた。

川崎キャスター「野村被告からは弁護を始めるにあたって、どういう言葉の投げかけがあった?」
岩井弁護士「言葉の投げかけというよりは、野村さんとすると『自分はしていないということをきちんと裁判で伝えてくれ』と」

川崎キャスター「最初の印象は?」
岩井弁護士「接見の具体的な内容になるのでこの場では控えたいと思います」

注目の控訴審は、3月12日に判決が言い渡される。

(テレビ西日本)

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