24日に石川・金沢市内で行われた棋王戦第2局は、藤井聡太八冠が勝って、初防衛に向け一歩前に進んだ。この対局を彩ったのは、能登半島地震で被災した住宅から見つかった駒だった。
棋王戦第2局への棋士たちの思い
棋王の初防衛がかかる藤井聡太八冠に、初タイトルを目指す伊藤匠七段が挑戦する同学年棋士による戦い。引き分けで迎えた第2局は、被災地・石川県が舞台だった。

藤井聡太八冠:
大変な状況で生活を余儀なくされている方がまだ多くいらっしゃると思います。多くの方に楽しんでいただけるような将棋ができるように、私自身も全力を尽くしたい

伊藤匠七段:
正月以降、地震のニュースを聞いて、金沢での対局が実現するかどうか不安もあったけど、多くの方の協力があって開催していただけて、心よりうれしく思っています
将棋盤と駒は震災で倒壊した家屋から発見
この対局に使われる将棋盤と2組の駒は、珠洲市で被災した将棋愛好家・塩井一仁さんのものでいずれも震災の倒壊した家屋の下から探し出された。

塩井さんは15年ほど前から、金沢で行われる棋王戦に将棋盤と駒を提供してきた。1月の能登半島地震で自宅は全壊。妻の紀美子さんは亡くなった。

しかし、全壊した住宅の中から将棋盤と駒は無傷で見つかったのだ。
将棋盤と駒を提供・塩井一仁さん:
火葬が終わって落ち着いたので、妻のことを考えて、私の趣味に対して。応援してくれていたのかなと思い直して、今回提供させていただくことに決めた。若い戦いの中からパワーをいただいて私も元気になるし、被災した奥能登を中心とした皆さんも本当にパワーをいただけると思います
被災地で棋王戦を見守るファンの思い
塩井さんが見守る中、棋王戦が始まった。伊藤七段の先手で角換わりのスタート。大盤解説会には多くの将棋ファンが詰めかけた。

将棋ファンの男性:
今のところ藤井さんの分が悪いけど、なんとか勝つんじゃないかと思っているんですけどね

将棋ファンの女性:
埼玉から来ました。来てもらって経済を回すことで支援できると聞いたので行こうかなと思って。塩井さんも被災地の方にも元気になってもらえたら
形勢の針は藤井八冠へ
対局は徐々に後手の藤井八冠に形勢の針が傾き、午後6時28分、伊藤七段が投了し、藤井八冠が先勝した。

藤井聡太八冠:
倒壊された家の中から見つかったということで、そういう点でも特別な駒だと思うので。触らせてもらってというか指していて良い将棋にしたいという気持ちは強くありました
熱戦を彩った塩井さんの将棋盤と駒。対局終了後、大盤解説会の会場に2人が訪れ、今後の抱負を語った。

藤井聡太八冠:
第3局もすぐ来週にあって、しっかり準備をしていい状態で対局に臨めるようにしたいと思います
地震発生から約2カ月後のタイミングで行われた棋王戦。将棋ファンをはじめ、多くの人に勇気を与えたのは間違いない。
(石川テレビ)