現役で走っている国産の蒸気機関車では最も古い「SL人吉」が、車体の老朽化や整備を担う技術者の減少などから2024年3月で引退する。ファンのために企画された乗車ツアーでは多くの人が別れを惜しんだ。

現役では国内最古の蒸気機関車

JR鳥栖駅に入る「SL人吉」 2024年2月16日
JR鳥栖駅に入る「SL人吉」 2024年2月16日
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灰色の煙と石炭の匂い。そして蒸気が漏れだす独特な音。

この日、熊本を出発した蒸気機関車「SL人吉」がJR鳥栖駅に入ってきた。

 
 

「SL人吉」は1922年に製造され現在101歳。「SL」と呼ばれる国産蒸気機関車の中で、運行を続ける最も古い蒸気機関車だ。

老朽化や技術者減少で“引退”へ

しかし、「SL人吉」をけん引する「58654号機」の老朽化や部品の調達、整備を担う技術者の減少などから、2024年3月に引退することになった。

別れを惜しむファンのために

多くの鉄道ファンから引退を惜しむ声が上がったため、JR九州は予約制の乗車ツアーを企画。引退まで残すところ1か月あまりとなった2月16日、その最終日を迎えた。

「ずっと走ってほしかった」

熊本から鳥栖までの乗車ツアーは2時間を超える長旅。
蒸気機関車の走りをたっぷりと楽しみ、終点の鳥栖駅に降り立った約90人の乗客は、10分間の短い停車時間で記念撮影をして別れを惜しんでいた。

ツアーの乗客:
とても素敵でしたよ、音もいいし熱気がすごかったです。もったいないですよね、もっと走ってほしいです

ホームには到着の30分以上前からカメラやスマホを手に「SL人吉」を待ち構えていた人も。九州だけではなく関東から足を運んだ鉄道ファンも多い。

東京から:
そんなに古い感じはないなとは第一に思いました。古きものがだんだんなくなってしまうのはちょっと寂しいというのはありますね

大分から:
今後もずっと走ってほしかったですけど、いろいろ人件費とか整備とかで引退せざるをえないと聞いたので、ほんとうに残念です。ちょっと悲しいですね

災害後もルート変え走り続けた

以前は熊本県内の豊肥本線の宮地から熊本間を走っていたこの蒸気機関車は、2009年から「SL人吉」として熊本県の球摩川沿いなどを走り抜ける肥薩線として運行。しかし、2020年の豪雨災害で肥薩線が被害を受けたため、現在は熊本-鳥栖間で運行を続けている。

本来のルートに戻る前に引退することについて熊本県の鉄道ファンからはこんな声も…。

熊本県から:
もう一度やっぱり肥薩線を通る(熊本~人吉)ルートで走ってほしいですね

博多までの特別便で現役に終止符

予約制のツアーは終了したが、「SL人吉」は週に数回運行し鳥栖駅に姿を見せる予定だ。

最終便は3月23日。この日は特別に「熊本-博多」間を走り、“現役”に終りを告げる。

(サガテレビ)

サガテレビ
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