鳥取・米子市、中国地方最高峰・大山のふもとで、豊かな湧き水と温泉を活用して、高級魚「トラフグ」を養殖する事業がスタートしている。鳥取県の新しい特産品を目指して始まった、フグの「陸上養殖」の取り組みをJALふるさと応援隊の久本裕子さんが取材した。

“シャンデリアがある”養殖施設

米子市淀江町にある「トラフグ」の養殖施設。
閉鎖されている「白鳳の里」の物産館の中で、もともとレストランがあった一室が利用されていて、一見、魚の養殖場には見えない。

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養殖用の水槽が置かれた部屋に入ったJALふるさと応援隊の久本裕子さんも、「シャンデリアのある部屋で養殖をしているのですね」と、そのしつらえに驚いた。

ここで「トラフグ」の陸上養殖を手掛けるのは、増田紳哉さん。施設は、物産館として使われていた建物を利用し、3つの水槽が置かれていた。

増田さんに促され、久本さんがのぞきこんだ水槽の中には、食用のフグでは最も高級といわれる「トラフグ」の姿が見えた。
2023年から約200匹を育てているという。

重さ約1kgに育った「トラフグ」をすくい上げ
重さ約1kgに育った「トラフグ」をすくい上げ

体長は30cm近く、重さは1kgくらいに育ったフグを特別に1匹、タモ網ですくい上げてみた。「結構、重量感ありますね」と、久本さんはずっしりした手ごたえを感じたようだ。

このユニークな養殖施設は、経営改善のため閉鎖されていた「白鳳の里」の建物を活用するため、増田さんが「トラフグ」の養殖を提案し、実現した。

湧き水と温泉水でトラフグを陸上養殖

増田さんは、かつて鳥取県水産試験場長を務めた水産の専門家で、ここに「陸上養殖」に必要な資源が豊富にあることに気づいたそうだ。

水槽に供給されている水を勧める増田さん
水槽に供給されている水を勧める増田さん

増田紳哉さん:
透明感あふれる水です。飲んでみますか?

増田さんが、水槽に供給されている水をコップに取り、久本さんに勧めた。一口飲んで、久本さんは「まろやかで、おいしい水ですね」と話した。

増田紳哉さん:
湧き水の「白鳳の名水」を直接、飼育水として使っている。隣の温泉施設では、毎日300トン以上の温泉水がただただ何も利用されず捨てられている。これらをうまく使って、新しい養殖スタイルを確立できると思い、「陸上養殖」を始めた。

豊富な資源とは、大山山ろくから湧き出る名水「白鳳の名水」。
水温は年間を通して約15度で、ミネラル豊富な湧き水だ。

加えて、目を付けたのが、隣の温泉施設で捨てられている温泉水。
「源泉かけ流し」で、比較的きれいなまま捨てられている温泉水を水温調節に利用することで、光熱費のコストを抑えることができる。

こうして誕生したのが、「陸上養殖」のトラフグ「大山名水とらふぐ」だ。

天然ものや海上養殖でみられる「夏バテ」がなく、年間を通じて品質が安定しているのが強みだという。

大山名水とらふぐを新たな特産品に

現在の出荷先は、隣にある温泉施設内のレストラン。生きのいい状態で、「ふぐ刺し」に仕立てられる。
ほかにも、刺し身とは異なる味わいの天ぷらや、冬場にぴったりの鍋までついた豪華なメニューを提供している。

試食した久本さんは、「とても歯ごたえがあって臭みもなく、ほんのり甘く、とてもおいしい」と気に入った様子だ。

1日15食限定だが、1月に提供を始めてから、連日予約でほぼ埋まる盛況ぶりだそうだ。

施設を管理する「淀江ゆめ温泉 白鳳の里」の錦織宏明総支配人は、「『大山名水とらふぐ』は、唯一、淀江ゆめ温泉で提供している。トラフグと一緒に全国に名前が広まり、淀江の地にたくさんの方に来ていただきたい」と期待を寄せる。

今後は、稚魚から育てるノウハウを確立し、2026年以降、年間3トンの出荷を目指すということだ。

自然豊かな大山のふもとで育つ「トラフグ」。
将来は、現在の温泉施設以外で提供することも目指していて、増田さんらは、鳥取の新たな特産品にと意気込んでいる。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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