北海道の演劇をけん引してきた、斎藤歩さん(59)。
今、がんと闘いながら舞台に立ち続けている。
余命半年の宣告を受けた演劇人の生きざまだ。
“余命半年” それでも舞台に
2月13日、斎藤さんの札幌芸術賞受賞を祝うパーティーが開かれた。

北海道大学の学生時代に舞台演劇に出会い、その後は映画やテレビドラマなどに数多く出演してきた。
北海道の演劇界を引っ張って来た存在だ。
末期がん見つかり9度目の入院
「ご存じのように末期がんと言われていて、余命半年。医者からは半年ごとに言われている」(斎藤 歩 さん)
2021年秋、尿管にガンが見つかり、その後リンパ節への転移がわかった。
「今の抗がん剤は5回目なんですよ。足がご覧の通りフラフラしちゃう、しびれて」(斎藤さん)
2月5日、齋藤さんは抗がん剤治療のため入院していた。
これで9回目の入院だ。

「10日に僕、1日だけ舞台出演するんですよ。退院したばかりってけっこうフラフラなんですけど、そのまま舞台にあがらなければいけない」(斎藤さん)
病と闘いながらも舞台へ
退院の翌日、劇場へと向かう斎藤さんの姿があった。
2月10日、初日を迎えた『大きな子どもと小さな大人』。
斎藤さんの出演を聞きつけた演劇ファンでチケットは完売。

「余命半年という宣告を受けながらも、どこまでやっていけるのかをファンとして見ていきたい」(演劇を見に来た人)
楽屋で出番を待つ斎藤さん。
握りしめていたのは痛み止めの薬だった。
「痛くなったら止まらなくなるから。きょうは飲まずに済みそう。ひどい時には1日6回くらい飲んでいた」(斎藤さん)
いよいよ斎藤さんの出番。
登場の時、少しふらついたように見えるが、声の張りは以前と変わらないようだ。
斎藤さんの演技に観客は盛り上がった。

しかし、舞台袖に引き上げてきた斎藤さんが放った一言は。
「ひどいな」(斎藤さん)
どの部分を「ひどい」と思ったのかは明かさなかった。
演劇に向き合う厳しく、真摯な姿勢は変わっていなかった。
周囲の人たちも応援
病と闘いながら演劇とも格闘する斎藤さんに周囲の人たちは。
「(斉藤さんの作品を)たくさん見たいので、たくさんの芝居を作ってもらいたい」(劇団員 菊地颯平さん)
「ちょっと休んだらいいのかなと思いますけど、言っても聞かないでしょうから好きにしてください」(演劇ディレクター 菅野公さん)
「彼はね、芝居の楽しさ・難しさ・奥の深さを教えてくれる人。そういう意味では息子であり師匠」(チェリスト 土田英順さん)
「活躍というよりはおいしいものを食べておいしいお酒を飲んでいてほしい。歩さんと飲むの楽しいです」(作家 桜木紫乃さん)

受賞パーティーの最後に斎藤さんは今後に向けての決意を語った。
「札幌の人だけでは作れないような芝居を皆さんに見ていただくという仕事をしていかなければいけない。まだまだやりたいと思っている」(斎藤さん)
すでに2025年11月まで演出や出演の仕事が決まっている。
北海道の新しい演劇を切り開いてきた斎藤さん。その歩みが止まることはない。