日経平均株価は、バブル期の1989年12月末につけた史上最高値3万8915円の水準が目前に迫っているが、市場では、アメリカ時間21日に発表される半導体大手「エヌビディア」の決算内容に関心が集まっている。
足踏みする日経平均株価
日経平均株価は、史上最高値を目前に、足踏みが続いている。
20日の東京株式市場は、国内企業の決算発表が一巡し、前日のアメリカ市場が休場で取引材料が少ない中、上値の重い展開が続いた。
午前は、中国の中央銀行が、住宅ローンなどの長期貸し出しの目安となる金利を引き下げると発表したことを受けて、一時200円以上値上がりしたが、その後は利益を確定させようとする売り注文が広がり、結局、100円以上値を下げて取引を終えた。
市場では、アメリカ時間21日に発表される半導体大手「エヌビディア」の決算内容に関心が集まっている。
株価は10年で160倍に
エヌビディアは、アメリカのカリフォルニア州にある大手半導体企業だ。
生成AI(人工知能)を動かす半導体チップで、卓越した技術を有すると評され、生成AIのサービス化や開発に欠かせないGPUと呼ばれる高性能半導体の供給を行ってきた。

急成長を遂げた結果、最近、時価総額は、世界4位の座に躍り出て、2月15日時点で、アマゾンや、グーグルの親会社であるアルファベットを上回り、1兆7947億ドル、日本円で約270兆円となっている。

2022年10月の時価総額は、3000億ドル程度だったので、AIブームの勢いが強まるにつれ、この1年余りで、実に6倍に成長したことになる。
株価は10年前の約160倍になっている。

仮に10年前に100万円分の株を買っていた場合、為替の相場変動は考慮せず機械的に試算すると、現在は約1億6000万円の価値になっている計算だ。
「AI・半導体相場」のけん引役
日経平均株価は、バブル期の1989年12月末につけた史上最高値3万8915円の水準が目前に迫っているが、今の上昇基調は、AIなどへの活用が見込まれる半導体関連の大型株の値上がりが支える「AI・半導体相場」ともいわれる。
アメリカ市場で、半導体関連銘柄に買い注文が集まって全体の株価を押し上げ、その波が、日本にも波及して市場を底上げしている構図だ。
今回、エヌビディアの決算が高い関心の的となっているのは、アメリカ半導体企業の中でも、成長株の筆頭ともいえる存在だからだ。
生成AIに欠かせない存在に
例えば、生成AIが、これまで人間が行っていた 「考える」という作業を実行するにあたって、音声、画像、テキストなど、膨大なデータを高速で学習していく課程をたどるが、エヌビディアのGPUは、画像認識や自然言語処理などの分野で、卓越した高い能力を有しているとされ、AIが学習作業を効率的に行うのに最適だと評価されている。

こうした結果、エヌビディアは、高性能半導体で世界の8割を超えるシェアを誇るまでになった。
アメリカのみならず、世界の相場をけん引する原動力となってきたエヌビディアが発表する直近四半期の決算は、内容次第で株式市場全体を左右することになり、日経平均株価の史上最高値超えの支えとなる可能性がある。
一方で、市場は好調な内容を織り込み済みだとして、日本株の一段の押し上げには必ずしもつながらないのではとの声もある。
アメリカ時間21日の公表内容に市場の視線が集まっている。
(執筆:フジテレビ解説副委員長 智田裕一)