能登半島地震からまもなく2カ月。多くの人が避難生活を送る中、家族同然のペットをどう守るかも課題になっている。阪神淡路大震災を機に保護活動に取り組む女性は、飼い主も万が一への「備え」が必要だと指摘している。
多頭飼育崩壊で保護された犬などを
かわいらしい3匹の子犬の鳴き声。
松本ドッグレスキューの代表・池田良子さん(動物愛護会松塩支部・理事)の自宅。
子犬たちの親「カール」は多頭飼育崩壊の現場から救出された。
池田さんは保健所の要請を受け、12匹を預り、妊娠していた「カール」以外は新たな家族を探して譲渡した。

「カール」は4匹を産んだが、2匹は重い心臓病を患っていた。今、手術の費用集めもしている。
他に飼育放棄や徘徊(はいかい)で保護された犬も。今、池田さんの家には7匹いる。
保護に係る費用は塾講師と動物病院での仕事を掛け持ちするなどして工面している。

池田さんは、「普通なんです、私にとっては。できるかぎりのこと、やれるならやりたい。嫌だと思ったことはないですね。それ以上に素敵な出会い、人との出会い、犬との出会いありましたから、それがエネルギーになった、頑張れた」と、笑顔で話す。

保護活動の原点は阪神淡路大震災
池田さんの活動の原点、それは1995年の阪神淡路大震災。被災地の報道が続く中、ある映像が目に留まった。
池田さんは、「動物病院の映像が映りました。犬がいっぱい入ってるんですよ。命が存続できないっていうことを聞いた時に、単純発想で何とかしたいと、無謀なことを考えちゃった」と当時を振り返る。

仲間を募って、トラックで神戸の隣・三田市の牛舎へ。そこには行き場を失った犬が100匹ほど集められていた。
「行ってびっくりしたのはみんな弱っている成犬。人の方が大変だったものですから、食事も十分だったとは言えないと思います。連れてくる途中で危なくなるかもしれないねって、すごく悲しかった」と、池田さんは当時の状況を説明してくれた。

27匹を連れて帰り、引き取り手を募ると、幸い多くの家庭が名乗り出てくれたと言う。
その後、「松本ドッグレスキュー」を立ち上げ、以来29年、保護犬活動に力を入れてきた。
被災地のペットと飼い主は今
今、気がかりなのは能登半島地震のペットたち。支援や預かりの要請があれば、池田さんもすぐに駆け付けたいと考えている。
七尾市の家族は、車の中で愛犬の世話していた。

飼い主の男性は、「寒いので、倒壊寸前の家に置きっぱなしにできんし、避難所にも連れていくことができないということで、車の中、我慢してもらうのが続いています」と話し、取材中にも、「ストレス、ストレス…。もうちょっと我慢してね」と愛犬に優しく声をかけていた。
支援のペット用品は届いていたが、避難生活がいつまで続くか見通せない状況に不安を抱えていた。

金沢市の1.5次避難所。生活しているのは輪島市の住民。ここは屋内の一部でペットが過ごせるようにしている。
飼い主は、「やっぱりうれしかった。家族の一員ですから、一緒にいられるだけで」「ペットスペースの確保の話が無かったら家にいたか、輪島市内の避難所の車の中にいたかな」と話す。
金沢市の担当者は、「今はワンちゃんねこちゃんと一緒に生活できるということで、一生懸命支援していきたいと思います。こういった形の動物を同行しての在り方も研究しなければいけないかなと思います」と、全力でサポートしたいとしている。

災害の度に課題となるペットの扱い
ペットをどう守るかはこれまでも被災地の課題となってきた。
2019年の台風19号災害の際、長野市の避難所内での受け入れはやはり原則禁止。
避難所横にペット用のコンテナハウスが設けられたのは1カ月後だった。
このため、ボランティアによる「一時預かり」の需要も高まった。

一方、2016年の熊本地震では保護された犬で県の施設がパンク状態になり、県外に送られた。
長野県に送られた6匹は県と長野市が募集した新たな家族に引き取られた。
県によると、能登の被災地から要請などは現時点ではないが、できる限り対応したいとしている。

万が一の備え 飼い主も必要
震災を切っ掛けに保護活動を始めた池田さん。
「個人の持ち物じゃないですか、犬も猫も。だからしっかりした管理のもとに、万が一、何かあった時にどうするかというところまで思いをはせてやっていく」と、飼い主も万が一に備えておくべきだと呼びかけている。

備え①避難所情報のチェック
まずは避難先の情報をチェック。松本市は2023年、長野県内で初めてペットを連れて入れる避難所を1カ所指定した。
屋内にペットのスペースが設けられる。避難をためらう人が減るようにという狙いだ。
ただこうした避難所はまだ限定的。ペットは受け入れるが「屋内は原則禁止」とするところが多く、対応は自治体によって異なるため、確認が必要だ。
池田さんは、「何かあった時に近辺に避難所、避難できるところがあるか、ご自身で調べる。まずは場所が確保できるかってこと」と、アドバイスする。

備え②持ち出しグッズ
人間と同様、備蓄や持ち出しグッズも重要。
環境省や自治体のガイドラインが参考になるという。
ドッグフードや食器、ストレスを癒やすおやつ、それに用を足すシートなどの衛生用品も。

備え➂マイクロチップの装着
事前の備えとしては「マイクロチップ」の装着も重要。
飼い主などの情報が確認できれば保護された時に連絡を受けることができる。
備え④ケージに慣れさせておく
日頃からケージに慣れさせておくことも。
避難先ではケージ内で過ごす時間が長くなるため、普段から嫌がらないようしておく必要があるという。

家族同然のペット。
「ペットはかわいい、癒やされる、それはもちろんですけど、地震もそうですし、そういう時にじゃあっていう心構え。そういうことが、災害によっては大きなことになるのかな」
行政の対応も求められる一方で、池田さんは一定の備えは飼育する人の責任だと指摘している。

(長野放送)